イナイレ長編

□5 秘伝書はどこだ!下
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「紺野カヤだ!失礼する!」


あたしは声を張り上げて理事長室に踏み込んだ。

中には雷門夏未がいて、驚いたようにあたしを見たけれどすぐにいつもの得意げな表情を浮かべて「何か用かしら?」といった。

ううん、なんだかこの人のこの空気は苦手だ。

あたしは、雷雷軒でラーメンを食べたあのあと、おっちゃんからその秘伝ノートの居場所を聞いていて、いまはチームの代表としてそれを取りに来ている。

つまり…あたしがしくじると希望がまっくらになっちゃうと、そういうわけである。

しかも理事長室なんてなかなか入ることがないからさすがのあたしでもちょっと緊張気味だ。


「そ、そのここに!あるものがあると聞いて来た!それを譲っていただきたい…です」

「…もしかしてこれのことかしら?」

「!!」


まさに、彼女が手に持っていたノートが例のノートに違いなかった。

しかしなんでまぁ、今そのノートを手に持っているのか…


「…もしかして読もうと思った…?」

「そ、そんなわけないでしょう!あなたこそ読めないでしょうこんな文字!」


やっぱり中身見たんだ。

意外とかわいいのだな夏未お嬢様。


「それがよめちゃうんですよね〜。守とは幼なじみだからよく一緒にノートを解読したんですよ」

「読める人がこの世界に…しかも二人もいただなんて…」

「まぁ慣れですよ、慣れ」


夏未お嬢様はこめかみに手を当ててため息をついた。それからあたしにノートを差し出した。


「どちらにしろ読める人が持たなくては意味がないわ。これはあなたにあずけることにしましょう」

「ありがとうございます夏未お嬢様!」

「お、お嬢様とか…そういうのはいいわ。同級生でしょう?夏未って呼んでほしいわ」

「わ、わかった。ありがとう夏未」

まさか、あのツンとしてる夏未お嬢様にそういってもらえるとは思っていなくて、ちょっとどもっちゃったけれど彼女は満足そうに笑っていた。

もしかしてこの人…あたしたちのこと応援してくれてるのかもしれないな。


***


「イナズマ落とし!

一人がびょーんって飛ぶ。もう一人がその上でばーんとなってくるっとなってずばーん。これぞイナズマ落としの極意。…え?」

ずこっ


浮き足だった気持ちで部室に直行し、さっそくノートを読み上げればまぁ、思った通りの内容に、思った通りの反応がみんなからかえってきた。


「な、だんだよそれ…」

「円堂、お前のじいさん国語の成績よかったのか?」

「いやぁ〜、サッカー一筋の人だったらしいから…」


まぁ、守の部屋にあるあの秘伝ノート見てればだいたい想像はついたけどさぁ…


「あんだけ騒いで、びょーんにずばーん、か。もうちょっと書いてくれよ…」

「とりあえず無事にゲットしてきたあたしに感謝なさい」

「おいカヤ雷門夏未が乗り移ったようになってるぞ…」

「ふふん」

「でも、じいちゃんは嘘はつかないよ。ここには、本当にイナズマ落としの極意がかかれているんだ。あとは特訓さえすれば良いんだよ」

「どっからくんだぁ?その自信…」


竜吾がため息混じりに言った。

でもあたしも、特訓すれば大丈夫かなって何となく思っていたりする。

それに守のじいちゃんの秘伝書を見つけて、この男が静かにしていられるはずがないのだ。


――しかし。


「いいねぇ、特訓だねぇ」

「あたしあれ絶対やらないから。竜吾が殺人鬼にみえる」


内容が分からないのでとりあえず守が提案した練習メニューをこなすことになったのは良いけれどその内容が地獄だ。

少し高い岡から竜吾が木にロープで繋いだタイヤを投げつけてそれを止めるという…毎度の事ながら無理がある練習メニューだ。

みんながどんどん吹っ飛ばされていく。

こりゃ早いところあのノートを解読しないと行けないな。

じゃないと選手がいなくなりそうだもの。


「円堂、カヤもちょっといいか?さっきの秘伝書のことだが…」

「うん」

「なんかわかったの?」


と、さっそく天才豪炎寺があたし達に声をかけてきた。


「あれって、まず一人が飛ぶ。もう一人がそいつを踏み台にしてさらに高さを稼ぐ。

十分な高さに達したところで、オーバーヘッドキック。そういうことじゃないのか?」

「うん?」

「――そういうことか!あれだよ守!つまり一人がびょーんって飛んで、もう一人がその上でまたバーンと飛んで、くるっとなってずどーん、はオーバーヘッドキックってことじゃない?」

そうだよね?って意味を込めて豪炎寺を見たら頷いてくれた。

「どうだ?」

「豪炎寺…そうだよ…多分その通りだよ…!すごいなお前!」


守はの目きらきらさせて食い入るように豪炎寺を見た。

その興奮具合にじゃっかん引き気味の豪炎寺である。

豪炎寺でもこんな顔するんだな。

おもしろっ。


「なら、その不安定な足場からオーバーヘッドキックなんか出来るのは豪炎寺、お前しかいない!」

「で、その踏み台は壁山が良いと思うな」

「壁山…?」

「だって踏みやすそうじゃない」

「…」


ま、これで何をすればいいか明確になってきたって事ね!


「とりあえず壁山にはタイヤを体に巻き付けて飛ぶ練習を。

そんで豪炎寺には不安定なところから飛ぶ練習をして貰わないとね。

竜吾と風丸の身長がちょうど良いからあの二人に手を組んで貰ってその上でとんでもらおっか」


具体的な練習内容が決まったのであたしも壁山と守とともに体にタイヤを巻き付けて飛ぶ練習を始めることにした。

あのおそろしい練習(竜吾のタイヤ投げタイムと名付けよう)をしなくて済んだと思うとほっとする。

しかしこれが思いの外辛くて、だけどなかなか良い練習になっているように感じた。


「リズムに乗っていくと辛いって事わすれられそう!行くわよ壁山ー!スタンドアップ、スタンドアップたちあがリーヨ!イナズマチャレンジャ〜っへーい!」

「まっ、まってくださいッスー!」

「よぉ〜ぅし!燃えてきた!」

「とーんちーときっかせってすらいでぃーんぐー!」


あたしの音痴にあわせて3人でジャンプしていくその横で、夕日が沈んでいった。



 そんな練習を数日間続けているとさすがに体がボロボロになってきた。

壁山の跳躍力は伸びるどころか疲れで落ちる一方である。

それとともにあたしにはちょっと心配なことがあった。


「ねぇ竜吾」

「あん?――いってぇ!なにすんだテメェ!」

「やっぱなー。あと豪炎寺、足さわっても良い?」

「…かまわないが」

「あの、ドン引きしないでもらえる?ちょっとすねを押すだけだから」

「――っ!」


あーあ、やっぱな。

おそらく風丸もだが、竜吾の腕は青あざが出来てしまって軽く腫れている。

で、豪炎寺のすねも疲労がたまっていた。おそらく今までになかった姿勢からの着地が足に負担をかけていたんだろうな。

このままいくと…


「みんなこのまま今の方法で練習してると、疲労骨折しちゃうわよ」

「なに!?」

「…本当か」

「うん」


あ、二人ともげんなりしてる。

そして後ろから「よぅ!なにしてるんだ?」と話しかけてきた風丸にも同じ事を告げれば「じゃあどうしろっていうんだ!」って怒られた。あたしのせいじゃないのに。


「とりあえず竜吾と風丸は、腕に布とかを巻いて豪炎寺の足場になるように。

豪炎寺はお風呂の後アイシングと、かるく足をマッサージすると良いよ。

まだそんなに酷くないから毎日ちゃんとケアすればよくなる」

「本当か」

「うん。もともとサッカーは足に負担がかかりやすい競技だし、それに必殺技が加われば疲労がたまるのは当たり前だよ」


こんなところで、怪我なんかしてほしくない。あたしは疲労骨折が一番嫌い。

頑張ったことが、全部水の泡になっちゃうから。


「カヤはいろいろ知ってんだな」

「まぁねぃ〜。持ってる知識はちゃんと使わないと」


と、真面目に言ってみたら3人とも感心しきった顔であたしを見ていた。

どうだ見たかこんちくしょーめ!


「俺、お前のことバカだと思ってた」

「俺も」

「…」

「ああ、そういうことね!そういう関心の仕方ね!」


なんだよもう!





後書き
原作沿いってキャラとの絡ませ方が難しくて単調になっちゃいますね…。
しかもテレビ再生しながらなので、家に誰かがいると書けないって言う…(まさか夢書いてるなんて誰にも言えない!)
でも響監督とはうまくからんでくれましたw
既に2話分遅れてるので、なるべくがんばります(汗

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