イナイレ長編

□5 秘伝書はどこだ!上
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「相手は野生中です。昨年の地区予選決勝で帝国とたたかっていますよ」


フットボールフロンティア出場が決まった翌日の部活。

みんなはこれから出場だっていうのに、だいぶ盛り上がっちゃってる。

まぁかくゆうあたしもそんなみんなを見てなんとなく良い気分だったりするわけだけど。

なのにそんな雰囲気の部室に、たったいまあの冬海先生がさーっと入ってきてさらーっと対戦相手を口にして行きやがった。


「初戦大差で敗退なんて事は…勘弁してほしいですね」


困った眉毛で心底面倒くさそうに言う冬海先生を、いますぐ蹴り飛ばして部室から追い出したい。

切実に。

っけ。

ろくに顧問らしいこともしたことないのにそういうこと言うんじゃないわよまったく。


「ああ、それから――」


なによー、まだなんかあんの?

不機嫌が顔に出ていたらしくて半田に口パクで「顔が死んでるぞ」って言われた。

ふん、と視線を半田から冬海先生に戻すと、あたしはその後ろに誰かがいるのに気が付いた。

その人物は部室にすたっと入ってくると、明るい声でこういった。


「ちーっすぅ!」


あ…れ…?


「俺、土門飛鳥!一応DF希望ね!」

あれあれ?

「君も物好きですね。弱小クラブにわざわざ入部したいなんて」


なんか…なんかメッチャ見たことある!あの人はこの前の尾刈斗中との試合の時、あたしを助けてくれた人だ…!


「土門君」

「あれ?秋じゃない!お前雷門中だったの?」

「知り合い?」

「うん、昔ね」


土門君(で、あってるよね?)は、アキと知り合いみたい。二人は親しげに挨拶を交わして、そして土門君はあたしの方に視線を向けた。


「…どうも」

「?…あー!あんときの、な!」


向こうもすぐに思い出してくれたみたい!よかったぁ、実はどうやってお礼したらいいか考えてたんだよね。

あたしあいつのこと何も知らなかったから。


「カヤも知り合いなのか?」

「ううん、尾刈斗中の試合の時ちょっとたすけてもらってさ。この前はありがとな」

「いいってことよ。あんたカヤってのかぁ〜、よろしくな」


土門君はすごく気さくなんだな。


「じゃ、次の試合ではポジション争いがおきるわね〜がんばんなさいよ壁山」

「お、俺ちょっとトイレ…」

「みかたにビビってどうすんのよ…」


本当、こいつのトイレ癖はぬけないのね。

それに呆れていると、土門君が少し考えたそぶりを見せてから口を開いた。


「でも相手野生中だろ?大丈夫かなぁ?」

その言葉に、みんなの視線が土門君に向く。

「前の中学で戦ったことあるけど、瞬発力機動力ともに大会屈指だ。高さ勝負にはめっぽう強いのが特徴だ」

「…俺達の技が破られるわけねぇだろうが」

「竜吾自信過剰」

「なんだとカヤ!」

「――土門の言うとおりだ」


豪炎寺…?


「俺もあいつらと戦ったことがある。空中戦では帝国をもしのぐ。」

「そ、そんなぁ…」

「だったら新必殺技だぁ!」



 ――そんなわけで、高さを鍛えようとあたしたちは特訓を開始した。

このさいあたしも新しい超次元技がほしかったし、その手助けになればと思っているけれど…なかなかうまくはいかないのが現実だ。高さにばかり気を取られて着地に失敗して地面に転がった竜吾を横目で見ながら、あたしはため息をついた。


「よぅ、精が出るな」

すると、物陰から中年の男性が現れた。その人は明るい声で守に声をかけた。

「古川さん!」

「この前の試合、よかったよぉ!あれはイナズマイレブンの再来だなぁ!」

「イナズマ…イレブン…?」


なんだっけそれ。

どこかで聞いたことあるような…。

あたしはその古川さんとは初めて話すけれど(てかあの人学校の公務員だっけ?用務技師だっけ?)この際だから聞いてみることにした。


「ねぇー、イナズマイレブンってなに?」

「おいおい、サッカー部なのに知らないのか?イナズマイレブンの事を…」

「さぁ?よければ話聞かせてほしいなぁ」


そう提案してみたら古川さんは優しく笑って「いいとも、いいとも」と言った。

練習も疲れてきたのでいったん休憩である。あたしたちは木陰に集まって古川さんを取り囲んだ。


「いいか?イナズマイレブンってのは40年前に雷門中学にあった伝説のサッカーチームだ!フットボールフロンティア優勝目前だったのに…あんなことがあって…」

「うん?」

「いや、ああ、なんでもない。とにかくすごい連中だった!あいつらだったら、世界を相手にしたって戦えたはずだ!」


なんだろう、古川さん何かを隠しているような…だけどふと隣の守を見れば案の定目をきらきら輝かせていて、あたしは特にそのことは気にならなくなってしまった。


「くぅ〜!かっこいい!超ぜってぇかっこいい!イナズマイレブンかぁ…」

「そうさ!そして円堂、お前は円堂大介の血を受け継いでいる」

「じいちゃん?」

「そう!イナズマイレブンの監督だ!まさに、サッカーそのもののような男だった」

「よぅし!」

「守、あんたどうせ――」

「俺絶対、イナズマイレブンみたいになってやる!」

「…言うと思った。でもあんただけじゃやらせないわよ〜。ねぇ?みんな!」

「ああ、本当だ。一人でなるきかよ」

「――もちろん!みんなでだ!俺たちは、イナズマイレブンみたいになってみせる!」
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