イナイレ長編

□4 ドラゴンが出た!上
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まったく、竜吾には毎度の事ながら呆れてしまう。

昨日の「ストライカーは俺一人で十分だ」事件といい、竜吾はなにかと豪炎寺につっかかってばかりだ。

まぁ竜吾のイライラする気持ちも、部員達が喜ぶ気持ちも分かるので、黙っておくけれど。


 そしてそんなこんなでチームがやっぱりいまいちまとまらないままに尾刈斗中との試合当日になってしまった。

いろいろと不安要素が多いので心配だ。


「カヤ、せめてベンチには入らないのか?」

「入らないよ。みんなが自分の力でボールをちゃんとさばけるようになるまではね。

安心して、練習はちゃんとやってるから」

今のままコートに入ったら守とあたしと豪炎寺&染岡だけでの試合になっちゃいそうで嫌だもの。


「ほら、さっさとアップしときな。あたしはちょっとおもしろい物のところに行ってくるから。」

「おもしろいもの…?」

「まぁ気にしないで」

「ああ!とりあえず、しっかり俺たちのこと見ててくれよな!」

「あったりまえ〜」


まぁ、守にかんしてはパンチングの技もほぼ完成したから(部員のみんなはまだ知らないけれど)あんまり心配はしていない。

それよりもあたしの興味は校門によりかかる人影に向いていた。


「へぇ、豪炎寺は正式に入部したようだな」

「ッフ…」

「さて、君たちは豪炎寺の視察に来たのかな?」

「「っ!?」」

「しかし鬼道。君のレンズには守が映っているようにあたしには見えるけれど…どうかな?」


校門の人影とは、帝国学園の鬼道と佐久間のことだ。

あたし目はからっきしに良いから。

遠くからでもすぐに分かった。


「…紺野カヤ」

「あたしの名前覚えてくれたんだね。どうもどうも」

「次に会うのが楽しみだとは言ったが、まさかこんなに早く会うことになるとはな」

「何いってんの。あれは「次にフィールドで会うのが楽しみだ」っていみじゃないの?」

「なるほど。それもまぁ、いいだろう」

「いやね〜相変わらずの上から目線で」

「それは悪かったな」

「おい、何うち解けているんだ二人とも…」


し、しまった!

敵とうち解け合うなど言語道断!


「そ、それではあたしはこれで失礼!」

「おい紺野。俺たちを追い払いに来たんじゃないのか?」

「ちがうよー?ただ偵察来て貰ったからあいさつきただけだよー。

じゃあまたね鬼道、佐久間。今度みんなでどっかでかけようね〜。」

「あ、おい待て!…なんだったんだあいつは…」



ピピーーー!

<それでは、試合開始です!>


ベンチに戻ってアキの隣に座ると試合が始まった。

一度はシュートを打たれてしまったが、守がセーブして竜吾のドラゴンクラッシュ(メガネが名付けたのは気にくわないが)で決めれば一点目が入った。

本番でも竜吾の技が通じて、あたしはうれしかった。

守とハイタッチをかわしながらこっちを向いた竜吾に「竜吾ナイス!」といってやった。

だけど…なんだかこの一点目は簡単に入りすぎた。

そう思った。


「たいしたことなさそうでヤンス」

「ビビリ過ぎていたんですね僕ら」

ほれみろあいつら…相手のことをなめてかかるのは一番危険なことなのに。

そう思っていると二点目も決まった。

考えすぎ…かな?


「やったぁ!やったぜ!」

「円堂!勝てるんじゃないのか!?」

「あぁ!」


みんなもおおはしゃぎで、これで波に乗ってどんどん追加点が入ればいいけれど…けれど豪炎寺だけがなんだか浮かない顔をしている。

豪炎寺は何か深く考えるようにゴールを見据えていた。


「てめぇら!そいつらに地獄を見せてやれ!」


不意に、尾刈斗中の顧問が叫んだ。

あたしはびっくりしてそちらをみやった。

その顔は悔しくて腹いせに叫んだのとは違って、何かをおもしろがっているように見えた。

まずい。

尾刈斗はまだ本気じゃなかったんだ…!


「お前ら油断するなよ!相手はお前らが思っているより強敵だ!」

「なにいってるでヤンスか。もう2点もはいったでヤンスよ?」

「あれ…なんだあの呪文?」

「おい来るぞ!」


風丸がのんきなみんなに声をかけ、マークの指示を与える。でも…


「なにやってんのよあんたら!」


なんと少林と半田がお互いをマークし合ったのだ!

マークされた二人は互いに困惑している。


「みんな!相手の動きをよく見るんだ!」

「無駄だ。ゴーストロック!続いてファントムシュート!」

シュートに来られるまで、時間はあったはずだ。

なのに影野、壁山、守は一歩も動けずにシュートを決められてしまった。

試合前にマネージャーから見せて貰ったあの現象に違いない。

そしてとうとう竜吾のドラゴンクラッシュも止められて、足も動かせずに三点を返されて前半が終わってしまった。


***


 ハーフタイム、部室に戻ると部員達は沈んだ顔をしていた。

呪いにおびえる者に呪いなんて無いといっても先刻の現象がなぜおこったのか説明が出来ない。


「ぜったい何か秘密があるはずだ」

「守の言うとおり…あたしも外から何か分からないかみてるから、とりあえず後半も戦うしかないよ」

「そ、そんなこというならカヤさんと交代してほしいッス」

「なっ…」

「確かに…カヤさん自ら入った方がいいんじゃ…」

「っでもそれじゃ…」


それじゃあこのチームの成長には繋がらないじゃないかっ!


「いつもコートの外からそんなこと言って、自分は何もしない気なんじゃないですかぁ?」

「あたしは――」

「おいやめろお前ら!」


あたしは誰かに肩をつかまれて、部室の後ろに押しやられた。


「竜吾…守…」

「カヤはこのチームのことを思って試合には出ないんだ!」

「人に助けを求めるのはもっと体はってからにしやがれ!」

「っ…」


や、やばい部室内の空気が…


「とにかく!まだまだ一点差!必ず逆転しようぜ!」





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