イナイレ長編

□3 あみだせ必殺技!4
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染岡は、今までそういう機会に恵まれなかったというだけで、実はすごく熱血で負けず嫌いな奴だった。

尾刈斗中との試合まで時間がない中、彼は最大限努力した。


そしてみんなもそれを手伝うことをきっかけにチームとしてまとまりつつあった。


「くそっ!」

「焦るな染岡!お前の持ち味はパワーだ。そのパワーを一点に集中させるんだよ」

「口で言うのは簡単だけどよ…」


少々お疲れ気味の染岡にドリンクを持って行ってやる。

染岡は無言でそれを受け取った。


「まぁね、口で言うのは簡単だけどさ…そうとしか言えないじゃないの」

「…なんつぅかよ、感じはつかめてきたんだが、いまいちイメージがわかねぇんだ」

「イメージねぇ…」


うーんと、二人で思い悩んでいると練習終了のホイッスルが聞こえてきた。

もう終わりか、今日の練習。

試合まであと三日だ。

それまでに…仕上がると良いけれど。


「紺野。わりぃけど今日はもう少し付き合ってくれねぇか」

「ああ、かまわないよ。でもこのシュートは思い切り力を入れて足先から蹴る技だから、あまり無理してやりすぎないようにね。足先を痛めるのは厄介だから」

「…お前って、選手っていうよりはコーチみたいだよな」

「そう?そう見えるなら嬉しいけれど…」


 結局、みんなが帰った後もあたしと染岡は残っていって、練習を終わりにしたのは空が暗くなり始めてからだった。


「今日はもうおわりにしますかねぇ〜」

「ふぅ、わりぃな付き合わせて」

「いいよ、あたしも良い練習になったから。染岡は帰り道どっちだっけ」

「あっちの道だ」

「じゃあ、同じ方向だね」


道具をバッグにしまい込んで、あたし達は並んで家路についた。

そういえばこいつと二人で帰るのは初めてだなぁ。


「なんかお前見てたら、あたしもシュート技ほしくなったよ」

「お前は…いつもいろんな練習してるだろ?ポジションはどこなんだよ」

「んー…どこでも?」

「なんだそりゃ」

「しいて言えばサイドバックだけど…どこでも入れるかな」


染岡は、絶対にFWってイメージだけどね。


「今のフォーメーションは染岡が一番前の1トップだよね」

「ああ」

「実は、一番得点しやすいのはそのひとつ後ろのトップ下のポジションなんだよね。しってた?」

「まぁな。けど俺にはやっぱ一番トップがいいと思うんだ。

ガンガンつっこんで、自分のゴールも、後ろのヤツのゴールの機転にもなりてぇと思ってる」

「おお、おもったよりわかってんだなお前」
「俺のことなんだとおもってんだテメェは」


ガンガンつっこんで得点…か。

チームには絶対に必要なタイプの選手だよ、お前は。


「さっき、イメージの話になったけど…あたしドラゴンが噛みつくイメージでいいと思うんだ!」

「…ドラゴン?」

「そう!地面からぐわぁーって竜が出てきて、ゴールに噛みつくんだよ。なんかかっこよくない?」

「なるほど…いいかもな、それ!」

「だろぅ?竜吾って名前にピッタリだよ」


そういったところで分かれ道が現れて、あたしと染岡がそれぞれ違う道の方に体を向けたことに気が付いた。

ここでお別れか。


「じゃ、また明日ね竜吾!」

「えっ、お、おい!」


慌ててる染岡がおもしろくて笑いながら自分の道に逃げ込むと、「ありがとな…カヤ!」って後ろから聞こえてきた。



***


 翌日…。

昨日でイメージがつかめたみたいで、竜吾のシュートはぐっと完成系に近づいていた。

あたしは今日こそ、と思って何度も竜吾にパスを出した。


「くっそー!あと少しなのに!」

「ドンマイ染岡!良い感じじゃないか!」

「そうだよ竜吾、もうちょいだよー!」

「っカヤ、もう一回だ!」

「おぅよ!」


疲れているのに、竜吾ももう少しというところがもどかしいらしくて何度もパスを要求してくる。

あたしはそれに全力で答えた。


「行け竜吾!」

「てやああぁあああ!!」


――そのとき、あたしには見えた。

突如現れた青い竜がゴールネットにつっこんでいくのを。


「すげぇ…」

「今までのシュートと、全然違う…!」

あたしはびっくりして、その場で立ち止まって力を失ったように地面に落ちたボールを見つめた。


…でき…た…?


「あ…」

「染岡!すげぇシュートじゃないか!」

「これが…これが俺のシュートだぁ!」


円堂と竜吾の大声で我に返って、あたしは振り向いた竜吾と目を合わせた。


「――っやったじゃない竜吾!」

「やったぜカヤ!見たかよ今のシュート!」

「ばっりち見たよ!最高!」

「よぅし、このシュートになまえつけようぜ!」

「あ!それ良いな!」


ドラゴンシュートだ、染岡スペシャルだと興奮したようにみんなが言う。

その輪の中に、あたしは自然と引き込まれていた。

なんだか、この感覚は久々で自分の事みたいに心からうれしくなって、あたしは笑った。

そのとき、ふと輪の外に目を向けると円堂が声を上げて、あたしもその人を見た。


「あ…豪炎寺…」

「なに?!」


歩いてきたのはなんと豪炎寺だった。

隣の竜吾が敵対心むき出しで勢いよく振り向いた。


「お、おちつきなよ竜吾」

「いろんな意味でおちついてられねぇ!」

「いやでも…円堂も。見てよ豪炎寺のあの顔。なにか決めてきたみたいな…そんな感じ」


歩いてきた豪炎寺は、静かな決心を胸に秘めているようにあたしには見えた。

他のみんなにも、それが伝わったらしくて竜吾も騒ぐのを止めた。


「紺野。お前に言われて、俺はようやく気が付いた」


豪炎寺は、そういってあの帝国戦の時みたいな優しい笑みをうかべた。

そっか。

お前も…


「円堂…俺、やるよ」

「…っ豪炎寺!」

「っやったぁああ!!」



すがすがしい顔で言い切った豪炎寺に、みんなが駆け寄った。


やっとできあがったね。12人の輪が。




後書き
や、やっと書き終わった
なががった…
染岡って変換すると「染め岡」って出てきてめんどいのでせっかくなので竜吾君と呼んで貰うことに。
まずは竜吾君と仲良くなりましたよ!
でも早く円堂も守ってよんでもらわないと(汗

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