イナイレ長編
□3 あみだせ必殺技!1
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「冬海先生、入部したいので許可をお願いします」
翌日の学校の放課後、あたしは早速入部届を出して冬海先生のデスクの前に来ていた。
先生はあまり嬉しくなさそうな顔でそれを受け取ると「選手と言うことでいいのかね?」と尋ねてきた。
「はい。選手登録の方もお願いします」
「分かりました。では書類の方はこれで結構ですよ」
「ありがとうございます。では失礼しました」
***
「帝国戦で、俺たちの問題点が分かった!」
ちょっと遅れて部室を向かうと、中からは円堂の元気な声が聞こえてきた。
「問題点も何も、まず体力なさすぎ」
続いてあの帝国戦であたしと交代をした松野の声が聞こえてきた。
確かにその通りだと思いながらあたしは部室の前に立ち止まった。
今入ってしまってはみんなが問題点を自分たちで指摘しあっている良い雰囲気が無くなってしまう。
話し合いがまとまるまでちょっとここで聞いてみようかな。
しかしメガネの野郎、やはり気にくわないな。
「あの〜キャプテン、この間の豪炎寺さん。呼べないんすかね?」
ちょっとイライラしつつ聞き耳を立てていると、宍戸がそういったのであたしはため息をついた。
まぁ、こうなるとはおもっていたけれど。
「そ、そうッスよ!」
「確かに、この前のゴールは紺野さんのテクニックと豪炎寺君のシュートがうんだ物だからね」
「そうでヤンスよ!紺野さんは入部してくれるんでヤンスよね?少なくとも紺野さんがいてくれて助かるでヤンス!」
こいつら…
「――っこのクソ野郎どもが…あたしはピッチに立たん!」
「…っあんなのは邪道だ、俺が本当のサッカーを見せてやる!」
もう我慢できん!
あたしは大声でいいながら扉を開けていた。
染岡の大声とあたしの大声が被って、部室はしーんと沈黙に包まれた。
「カヤ…?」
「円堂!あたしは前からやる気のないこいつらが気にくわなかった!
突如現れたヒーローに頼ろうなんざむしが良すぎるんだよ!
こいつらがしっかり出来るようになるまで、あたしも試合に出る気はないからな!」
「紺野の言うとおりだ!みんなして、あいつを頼りすぎだ」
「はぁん!?いっとくけど染岡!あたしはあんたのことも認めてないから!
あの円堂にため息なんてつかせやがってこの!」
「あんだと!今日入部したばっかのヤツがよく言うぜ!」
「なにを〜〜〜!」
「ふ、二人ともおちつこうよ!」
不意に肩をつかまれて、あたしは口をつぐんだ。後ろからアキが部室に入ってきたのだ。
「もう、何かあったの?」
「い、いやぁ、ちょっとな」
「…まぁいいけど。お客さんよ」
ため息混じりのアキにちょっと申し訳なくなって入り口の方を見ると、入ってきた客はあの理事長の娘だった。
彼女は「くさいわ」を不機嫌そうにつぶやいた。
何しに来たんだコイツ。
彼女は軽く皮肉を言ってから、「次の対戦校をきめてあげたわ」とずいぶん上からで、だけどありがたいことを言い出した。
まさかこんなに早く試合が決まるだなんて…。
いや、それもそうか。
雷門は帝国から一点を取り、その帝国が試合を途中放棄したという噂を聞けば雷門に興味を持つ学校も少なくないはずだし。
話を聞いていると、相手はどうやら尾刈斗中学校らしい。
「勝利すれば、フットボールフロンティアへの参加を認めましょう」
なるほどなぁ。
って、まだ参加してないのかこの部活は。先生に選手登録しておいてとかいっちゃったけど、選手登録も何も無いじゃないか!
ああ、恥ずかしい…
「せいぜい頑張る事ね」
夏未お嬢様は優雅に言って去っていった。
それにしても、フットボールフロンティアか…
「フットボール…フロンティア…」
「中学サッカー日本一を決める大会ですよ!」
「うぉ〜!俺、もり上がってきたでヤンス!」
さっきまでの険悪なムードはどこへやら、みんな期待に満ちた目で話し合う。
でも…
「よろこ――」
「喜ぶのはまだ早い!俺たちは今度の試合で勝たなきゃ、出場できないんだぜ」
染岡め…あたしの台詞をとりやがった。
「わかってるよ!
じゃあみんな!次の試合で勝つために、練習やろうぜ!」
まぁ、いっか。
円堂あんなに嬉しそうだから。
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