ハイキュー短編

□人は見かけによらず
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「なぁ、俺たちと遊ばない?」


なんだ、これは。

誰だ、こいつは。

目の前に並んだ数人の男は友達でも、まして知り合いでもないのに遊ぼうと誘ってくる。

頭おかしいのかな。


「ねぇ」

「あん?」

「頭打ったの?」

「はぁ!?」

「だって私は貴方のことしらないもの。

なのに遊ぼうだなんておかしなことを言うのね。

友達が居ないの?」

「ってめぇ!」


あれ、友達がいないって言うのはあたっちゃったのかな。

カンに触ってしまったようで男が急に怒り出す。

よくわかんないけど、なんか危ない。

今にも襲いかかってきそうだ。

ちらっと辺りを見回すけど、みんな見て見ぬふりだ。

あ、でもあそこ。

なんかすっごいおっきくて強そうな人が歩いてくる。

なんかあの人も危なそうだけど…ここはそうも言っていられない。

お願いだこっちに気が付いてくれ…!


「おいどっち見てんだよ」

「なんで視線まで指図されなくちゃなんですか(はやく来てくださいお願いしますお願いします)」

「てめぇ、あんまおちょくってっと――」

「や、やめなよ!」


きた!奇跡の救世主だ!

それはさっき目にとまったおっきい人で、近くで見るともっと迫力があった。

この人も怖いけれど、助けてくれるくらいだから多分大丈夫な人だ!


「…っち、行くぞ」

お、引き返していった!

そうだよね、さすがにこんな人を目の前にしたら帰るよね!

私は安堵のため息を漏らしながら助けてくれたおっきい人を見上げた。


「あの、ありがとうございました。おかげで助かりました」

「あ、ああ。うん…あの、その、だだだだ大丈夫ですか?」

「え、なんでビビってるんですか」

「いやだってああいう人は苦手というか…」


助けてくれたその人は、厳つい見た目と反してすっごいビビりまくった顔であわてふためいていた。

でも、怖いのに助けてくれたんだ。

なんか、うれしいな。


「怖いのに助けてくれたんですね。ありがとうございます」

「うん、ていうか君ナンパされながらあの態度
はないよ。危ないじゃないか」

「え、さっきのナンパだったんですか?

てっきり友達の居ない寂しい人かと…」

「えぇえ!?そんなわけないでしょ!」

「はぁ…すみません?」

「なんで疑問!?」


それに、あったばかりの私のこと、心配してくれる。

きっとこの人は、すごく優しい人なんだ。

よかった。そんな優しい人がこの街にいて。

ちょっと大げさかな?


「お名前教えてもらえますか?同じ学校みたいですし、今度お礼がしたいです」

「そ、そんな気にしなくて良いよ。じゃあ、俺は用事があるから気をつけてね」

「あ…」


いっちゃった。

走り去っていく背中に、なんだか胸が高鳴る。その背中の「烏野高校排球部」の文字を、私は脳内に刻み込んだ。



人は見かけによらず






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