ハイキュー短編

□俺だけ
1ページ/1ページ

 私が誰かというと、私はカヤ。

扇南高校二年生で、バレー部マネージャー。

一応中学でもバレーをやっていたので、一年生にとってはコーチにもあたる。

「おいブス」

こんなキュートでマネージャーだけでなくコーチまで出来る先輩が居るなんて、なかなか無いと思う。

「おいブス!」

もっと感謝してほしい、切実に。


「おい聞いてんすかブス!」

「聞いてるよ聞こえてるよクソヤロー!」


ところがどっこいなのである。

今年の春入部してきた一年たちは、それはまぁ不良だしケンカするし練習真面目にやらないし。

とても、大変なのである。


「入部してやったんだから感謝してくださいよ」

「あのね、敬語使えば何言っていいとおもってんのかコノヤロー」

「え、ちがうんすか」

こいつ…。

「カヤちゃん顔こわいよおちついて!」

「アッキー君!あんたからもなんとか言ってよ」

「い、いやぁ…」

「さてはあんた十和田が怖いのね」

「今はカヤちゃんのほうが怖いかなー!」


最近では同じく二年のアッキー君主将も十和田達にあれこれ言うのは諦めたみたい。


「ま、なんだかんだ言ってカヤ先輩俺たちのことだーいすきっすからね。

分かってますから」

「なにその自信満々!」

「先輩ツンデレっすか」

「おい馬鹿こんなブスでツンデレはねぇだろうが」

「それもそうか」

「てめぇらー!」


くそぅ!

あんまりじゃないか一年生共よ!

いよいよ飛びかかろうとしたけれどアッキー君に後から羽交い締めにされて止められた。


「はなせアッキー君っ」

「おおおおちつこうよ!あ、ほら誰か来たけど!」


誰がきたんじゃコラ、と入り口に目を向けると男子生徒が数人立っていた。

見覚えがないし、風格からして一年生だろうか。


「ちょっと、今部活中なんですけどなにか用ですか」


アッキー君を振り払い一年生に向き合うと、一年生はじろじろと私を見てくる。

なんだ失礼なヤツらめ。


「おお、大崎か」

「あ?十和田の友達?」

「ああ、はい、まぁ…」

「まさかこのまま部活抜けてゲーセンにでもいくんじゃないでしょうね。

お母さん許しませんよ!」

「いつあんたが母ちゃんになったんだ!」


だって。

入部当時の十和田達は結構な頻度で部活休んでいたから。

せっかく来てくれたのに行っちゃったら、なんか寂しいし…。

と、そこで私たちの会話を興味深げに見ていた大崎が声を上げた。


「あ、もしかしてこの先輩お前がこの前いってたブス?」

「はぁ!?ちょっと十和田あんたどんな説明してんの!?」

「いやぁ、噂通りの不細工っぷりで」


ぶちっ。

なんか、今切れたんですけど。

え、なにそれ。

初対面でそりゃなくない?

私はかわいい後輩だから軽口許していただけなのに、こんなかわいげのない男子生徒にそんな風に言われる筋合い無いんですけど!


「おい黙って言わせておけば一年ふぜいが――」

「おいテメェ!」


文句たれてやろうと一歩前に出たのに、それは十和田の腕と声で遮られた。

びっくりして十和田をみたら、なんかスゲェぶち切れた顔してた。


「十和田…?」

「カヤ先輩のことブスっていっていいのは俺だけだ!

二度と俺の先輩にそんな口聞くんじゃねぇぞ!」

「わ、わるかたって…じゃ、じゃあな」


結局なにしにきたんだろアイツ。

それにしても何それ。

ブスっていっていいのは俺だけとか。

てか俺の先輩とか。

いや、間違いじゃない。私は十和田の先輩だ。

だけど…


「じゃあカヤ先輩、部活やりますよ!」

「うへぇ!?」

「あ?なに変な声だしてんすか」


ぷい、とそっぽを向いた十和田が、みょうにかわいく感じてしまって。


「十和田…お前は私のかわいい後輩だ!

帰りにガリガリ君おごってやっからな!」

「う…うすっ」


もしかしたら、後輩として思う以上の思いが芽生えちゃうかもしれないなぁ、なんて。

 

俺だけ




後書き
十和田ちゃんの中編を考えました。まだすぐにはかけないのでとりあえず十和田ちゃん置いてるよアピールでかきました(笑

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ