ハイキュー短編

□ちょっとだけナイスな日
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「繋心!」

「あ?」

朝、ジョギングをしていたら近所の坂ノ下商店の烏養繋心が野菜収穫に励んでいた。名前を呼ぶとすごく眠そうな返事が返ってくる。
アイツろくに見もせず収穫してるな。

「よーカヤ」
「おっす。仕事か、朝っぱらから」
「おぅ」
「ご苦労なこって」
「嫌味言いにわざわざ来たのかお前は」
「違うよー、朝のジョギング」
「あーあー、ダイエットね」
「口に出さないでほしい」

もう、誰のためにダイエットしてるのか、こっちの気も知らずにこの男は…!

私の思いに微塵も気が付かない懸心は大きくあくびをしてまた手を動かす。

金髪で、ピアスもしてるのに農作業しているコイツはなんだか変な感じだ。

まぁ普段からあんまり服装に気を遣ったりしてる感じはないし、おっさんくさいけどね。

「繋心って、おしゃれなのかそうじゃないのか分かんないね」
「うるせー、用がないなら出てけ」

繋心は心底嫌そうな顔で猫を払うようにシッシと手を振ってくる。

ちょっと!むかつくんですけど!


「いいよ手伝ったげる」
「お、今日は雨が降りそうだな」
「こいつ…!」

 野菜はどれも良い感じだった。
繋心が前も見ずに適当に収穫しても問題がないわけだ。
私は繋心の向かい側から収穫を手伝う。

「そういえばバレーのコーチやってんのって本当なの?」
「あ?ああ…」
「ふぅ〜ん。なーんか、あのころを思い出しますな!さんざん付きあったよね。
繋心にボール投げするの」
「マネージャーなんだから当然だろ」
「うっさい。あんたのせいだからね私の成績良くなかったの!」
「お、じゃあちょうど良いし今度お前も烏野まできてボールあげてくれよ。
俺腰がいてぇから」
「話を聞け!そしてあんま腰関係なくない?ジジイだねぇ繋心」
「っせぇ」

全部収穫が終わる頃には辺りはすっかり明るくなっていた。

お腹すいた。
結局ジョギング途中でやめちゃったし。

「っはぁー、終わりっと」
「サンキューなカヤ。うちでメシ食ってくか?」
「え、マジ!?繋心ちのごはんなんて超久しぶりだよ!」
「野菜たっぷりヘルシー朝飯だ。お前にはうってつけだな」
「ちょっと最後の一言いらない!」

繋心とは高校でバレー部のマネージャーをやってた頃からのつきあいで、馬が合うので当時から仲も良く時々家で夕飯をいただいたりした。

卒業して何年もたつ今でも時々こうしてごちそうになれるのは嬉しいことだ。

しかもこの時間帯はお客さんも居ないし、繋心のお母さんも市場の方で野菜の売りつけしてるから二人っきりだ。

なかなかラッキーな日である。

商店の格好と金髪ピアスははいつまでたってもミスマッチに見えるけど、そういうところが好きだったりする。

卒業したとき繋心には金髪が似合うよって言ったら本当に染めてきたので、あのときは驚いたなぁ。

「おいカヤ手伝え」
「えー、さっき手伝ったから休憩!」

だって料理してる繋心のこと後から眺めるの好きだし。

「お前なぁ…」
「ご飯食べたら腰マッサージしてあげようか」
「まじか!」

繋心のお母さんは私の気持ちを知っているから、まだ若いのに繋心に結婚をせかすんだと私は分かっている。

それでも私に目が向かないなんて、はっきり言って見込みは薄いのかも。

私は私で今の関係を壊したくないから本当のこと言えないし。

でも、いいや。

もうしばらくこの平和でアホらしくて最高に楽しいひとときを、大事にさせてほしい。




君と過ごす時間






後書き
アニメで眠そうに野菜を収穫する繋心みたら書きたくなりました(笑
続きます

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