キッド連載

□8 集いしクルーたち
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私は、一人興奮したまましばらく頭に抱きついていた。
あんまりに長い間くっついていたらいい加減うっとうしく感じたらしい頭に引きはがされたけど。

「頭ー!お久しぶりです、ホントに嬉しいです!」
「お前も相変わらずみてぇだな。
腹が減った。
ここの女将にシチューを注文しておいたんだが、あるか?」
「ええ、ええ、ありますとも!
すぐ持ってきますね!」

厨房に駆け込んだら、私が朝から煮込んでいたシチューが既に盛られていて、女将さんがその皿を載せたお盆を私に突きつけた。

「昨日の晩、先に上陸してきた金髪の男から頼まれたのさ。もってきな」

私は大きく頷いてそのシチューを頭の元に届けた。

「おまちどおさま」
「おう」
「あ、頭たべててください、すぐ戻ります!」

私は言うやいなや二階の自室に駆け込んで、二年間この日のためにとっておいた服装に着替えた。
おへそがちらつくくらいの黒いシャツと短パン。
その上からあの日に買ったブーツとコートを着込んで、ゴーグルを首に掛けた。
鏡で見てみるとなかなか様になってるように思う。
ちょっと目立つけど、頭の後ろだったら問題ない。
クシで髪を整えて、また下の階に下りていった。

「頭見て!今日までとっておいたんですよー!」

頭は私に目をやってから、おもしろそうに笑って手招きをした。
私はそれに従った。
頭はガシガシと私の頭をなでたから、ととのった髪がグッシャグシャになってしまった。

「なにするんですか!
あ、そうだ頭、これ返さないと!」
「あ?」

私は慌ててピアスを外して、頭に差し出した。あの日、頭が置いていったピアスだ。
実はこの二年間勝手に毎日つけていた。

「すみません、勝手につけてました」
「いや、それはお前にやったんだ」
「え、マジすか!?いいんですか!?」
「ピアス一個くらいなんでもねぇよ」
「だってこれ頭がしてた奴だから大事じゃないかと思って…」
「その割に勝手につけてたんだなお前」
「だっ…だってこれ頭の目にそっくりだったからつい…」
「なんだよそんなに俺が恋しかったかぁ?」
「当たり前じゃないですか!」

即答すると、頭はぼんやりと私を見てから、頭をガシガシかいた。

「お前みてるとなんか平和な気分になるな。拍子抜けるわ」
「それ海賊的にやばくないですか!?」
「いや、かまわねーよ。
それよりもそろそろキラーがここに来るはずだ。
今日はこの店をかしきってもらったからな、宴だ」
「だから午後になったら急にお客さんいなくなっちゃったのかー」
「まぁな。お、噂をすれば来たぜ」

頭が言ったので入り口を見ると、二年前よりも髪は伸びたけれどスタイル自体ほとんど変わらないキラーさんが入ってきた。
そしてその後ろには……

「キラーさんお久しぶり!…後ろの人たちは…」
「久しぶりだな。後ろの奴らはこれからクルーになるやつらだ」
「これから…?」
「んなこたぁどうでもいーだろ」
「うーん…でもみなさんちらっちら見たことある顔なんですよー…」

あ、もしかして最近島をうろついていた怪しい格好の人たちじゃ…
その中でもドレッドヘアーと網タイツの人に見覚えがあった。

「手前のお二人はこの前お店にきてくださいましたよね…?」
「おお。おれがヒートでこっちがワイヤーだ」
「あんたがキッド海賊団のクルーだと知っていたんで、確認にきていたんだ」
「なんだー、それならそうといってくれればよかったのに」
「秘密事項だったからな、すまない」
「秘密事項…?」
「それがなんでも……いや、なんでもない…」

ヒートさんが話をしようとして途中でやめてしまった。
なにやら酷い冷や汗である。

「ヒート、余計なこと話すんじゃねぇぞ」
「う、うっす船長…」
「頭ったら自分のクルーは大事にしなくちゃだめですよー」
「っせぇ」

うーん、こんな横暴な船長なのによくもこんなにクルー集まったなぁ…こんな物好きは私とキラーさんしか居ないと思ってたけど。

「おいレティ、テメェいま失礼なことかんがえたろ」
「え”、そんな滅相もない!」
「顔みりゃわかんだよ歯ぁ食いしばれ」
「ぎゃあああ!キラーさんおたすけぇぇえ!」
「二人とも、久々に会えて嬉しいのは分かるがあまり騒ぎ立てるな」
「あ〜もう本当に嬉しいです言葉にできないくらい」
「うれしくねぇよ」
「も〜頭のツ・ン・デ・レ!」
「……」
「…ごめん!ごめんなさい!
だからだから黙らないでえええ!」
「…ククッ、よしお前ら。宴を始めるぜ」


  夜はまだ長い




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