キッド連載

□7 再開
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三人目のクルー、レティを島において出てからすぐに、俺たちには賞金がかかった。
その知らせを知ったときに、ふとあいつの笑顔が浮かんできた。

「レティがいたら、それは喜んだろうな」

キラーの奴も、珍しくそんなことをいいやがった。
なんだかんだでキラーもあいつのことを気に入ったのだ。
俺も、今となってはあいつのことを気に入っていると言える。
そういえば、助けられたことに礼も言わずにでてきちまったなぁ…
 そんな事を思いつつも、俺たちは次々島を回り、次々クルーを増やしていった。
賞金額も増え、いつしかルーキーだとか、超新星と呼ばれるようになった。
そのころになっても、俺の船には相変わらずおれとキラーしか居なかった。
賞金が上がり、腕の立つ奴が出てくるようになった今では二人で対応することも難しくなったが俺は悪魔の実の能力を手に入れ、さらに力を増した。
クルー作ってもを乗せないのにはあるわけがある。

 そしてレティをおいてあの島を出て、二年が経った日に、俺はただの海賊ではなく「キッド海賊団」を結成すべく、あの島へ進路を向けた。



「女将さぁぁああああんんん!」
「うるさいね小娘!」
「あぎゃお!」

 私はレティ。
これから海に出るために準備中である。
準備中というか、私はいつでも準備中である。二年前、私の唯一無二の船長、ユースタス・キッドと約束を交わしたからだ。
迎えに行くから、準備してろ。そういわれたのだ。

…ただ、いったい頭はいつ私を迎えに来てくれるのだろうか…

最近頭の賞金額がどんどん上がっている。
そして二年という月日が流れた。
私はいい加減心配になってきたのだ。
頭は本当に来てくれるのかなって。
一年前までは毎朝港を見に行ったけれど、そのたびにむなしくなるだけだから私はそれをやめて、かわりに修業に励んだ。
この際、頭が来てくれないなら強くなって自分から乗り込んで行こうとすら考えつつある今日この頃だ。
まぁ、そんなことをいうと女将さんが「女は黙って待つもんなんだよ!」といってお玉で頭をたたいてくるけれど。
そういえば、今もお玉で殴られたところです、痛い…

「で、朝っぱらからなんだい?」
「え…あ、そうそう!
きいてくださいよまた頭の賞金が上がったんですよ!
今度は何をしでかしたんでしょうね?」
「そうかい、そうかい」

いつもは軽く流すくせに、今日の女将さんはなんだか楽しそうに笑っていた。
なんでだろう?

「女将さん、何か良いこと合ったの?」
「あたしというよりは、あんたにとってね」
「え?何々!?」
「今は言えないねぇ。そういう約束だからさ。まぁ今日はその「良いこと」が起きるからずっと店にいなさいな」
「言われなくても今日は一日店番の日ですよ」
「そうかい、ならとっておきのシチューを煮込んでおくんだね」
「え?お祭りの時しか作らないあのシチュー?」
「そうさ。今日は特別だよ。わかったさっさとはじめな」
「はーい」

よく分からないけど、私は店の壁にあるコルクボードに頭の5枚目の手配書を飾って、作業に集中した。
夕方になって、よくやくシチューが良い感じに煮込めた。
これはうちの店で一番人気で、特別な日にしか出さないシチューだ。
これを作れなんて滅多に言われないけれど…本当になんなんだろう?
そういえば、最近街では奇妙な格好をした人たちがよく出入りをするようになった。
不思議と私は彼らと少なくとも一度は話している。
彼らはよく店に寄っていってくれるのだ。
先月あったお祭りの時にいた彼らもこのシチューのことは大分気に入っていたなぁ〜
まぁ、そんなシチューとか奇妙な集団のことよりも…頭のあたらしい手配書、かっこいいなぁ〜…

「…あ"−−−−!頭にあいたいよぉぉおお!」

うー、頭ぁー、もう待ちくたびれちゃったんだよ頭ー!
なんかここ最近毎日叫んでいる気がしなくもないけど…

そのとき、ドアベルが音を立てた。
お客さんだ。
これから夕食の時間だから忙しくなるなぁ。
そのお客はどっしりとした足音を立てて店に入ってきた。
頭の足音も、こんな風にどっしりしていた。
一緒にいたのはたった二日だけど、頭のことは二年経った今でも鮮明に覚えている。
頭ー…

「…ッハ!店の外まで丸聞こえだぜ」

お客さんは、そういって笑った。
その声に、妙に聞き覚えはあった。
お客が来たにもかかわらず頭の手配書に見入っていた私は、ようやく振り向いて――破面した。

「――かし、ら…頭……!!」
「よぅレティ」
「……いやまてこれは夢だ。
こんなナイスなタイミングで現れるわけ無い。頭が恋しいからって幻覚を見たらあとでむなしくなるだけ――あだっ!」
「バカ言うな、夢でも幻覚でもねーよ」

頭は、私のほっぺのつねった。
私はぽかんとしたまま手を伸ばして、頭に触れた。
おお、固い腹筋…じゃなくて…

「ホントだ…本物だ…」
「二年も待たせて、わるかったな」
「――っかしらあああぁぁぁあああ!!!!」



  飛びつけば、視界は赤であふれた




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