小説

□冥界神のスイーツタイム
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ふふ〜んふんふん♪と鼻息を楽しそうに鳴らしながら執務室を出てキッチンへと向かうのは冥界の神ハデス

「ボス...ついに頭がいかれたんですか?」

横から笑顔を取り繕いながらそう発言する部下のパニックをぎろりと睨み付けるも直ぐにと表情を変換させ、冷蔵庫のドアを開けた

「...んはぁ!?」




『冥界神はスイーツがお好き』




ハデスの驚きの声にパニックが「どうしたんですか?ボス」と声をかける

「...もしかしてとは思うが、いや部下を疑う訳じゃ無いんだが...」

直ぐ様部下の方にへと振り向き、声を荒げるハデスに緊張感が走る

「オレのバケツプリンを食べたのはお前かああ!?」

青い炎を赤く染めながら迫るハデスにパニックが慌てて首をブンブン横に振って否定した

「あ、それならペルセポネ様がさっき全部食べましたよ、美味しかったって言ってました」

棚の方でドーナツをパクつきながら返答するペインにハデスの炎が青色に戻る

「はぁッ!?んー...じゃあしょうがないな、てかそれならペルちゃんも一言言ってくれよ」

部下の口から出てきた愛する妻の名前に脱力するハデスにペインがその場を離れようとしたその時、

「その前にちょっと待て、てかそれオレの作ったおやつ用のドーナツじゃねえか?ああん?」

再び赤く染まる炎にペインが青ざめ、直ぐ様その場を駆け出して逃げようとしたがその前に放ったハデスの炎がペインの身体を直撃し背後の壁を黒く焦がした



「...ハデス、何をやってるんだ?」

キッチンでエプロンを装着し、ボールの中身をホイッパーでかき混ぜるハデスにフロローが声をかける

「見りゃ分かるだろ?お菓子つくってんの」

「と言うか仕事はいいのか?」

「その仕事の合間に食べるお菓子を部下や妻に食べられちゃったからな!」

それに目を見開くフロローにハデスが彼の腕のなかにへとボールをほおりこむ

「お、おい!何をするんだ!」

思わずキャッチしてしまい戸惑う判事にハデスが笑みを浮かべる

「暇なら暫くそれ泡立てといて、じゃあよろしく!」

楽しそうにオーブンの方にへと向かうハデスに判事が眉間にしわを寄せながらボールの中身を凝視した




「んーいい匂い!今度は何作ってるの!?」

キッチンから漂ってくる甘い匂いに釣られてやって来たハデスの妻ペルセポネがキッチンのテーブルへと近寄る

「んー、あ、ちょうど良かった!はい!ペルちゃん!これで暫くこれで型抜きしといて!」

ドクロのクッキーの型抜きを渡されて目を丸くするペルセポネにハデスが粉を薄く伸ばしたクリーム色の物体へと優しく撫で付ける

「それとオレのプリン勝手に食べたろ?ハニー?ソースが付いてるぞ」

それに頬を桃色に染め、手の甲で拭ろうとしたその時、ハデスの舌がペルセポネの頬を這った

「よし、これで綺麗になったな?」

「...!///」

「本当はここじゃなくてベットの中でお仕置きな意味で美味しく頂きたいんたが夜までしばらくお預けなのが残念だぜ?」

そう言い残し離れるハデスにペルセポネは頬を赤く染め、それをがっつり聞いていたフロローが砂糖の塊でも飲みこんだかのような苦しそうな表情を浮かべた




「おや、いい匂いですね?」

Drファシリェが色んな果物がぎっしりと詰まったかごを前に出してきたのにハデスが「ああ、お菓子つくってんだ」と微笑みながら応える

「頼まれた果物持ってきましたよ」

「おー悪いね!そんな中更に注文追加するけどいい?」

何ですか?と聞き返すファシリェの手にハデスは笑顔で黙って果物ナイフを握らせた

「それ皮剥いて食べやすい大きさに切っておいてくれる?」

「えっ!?と言うか私の本業シェフじゃなくて魔術師なんですけど!?」

「私も本業が判事なんだがな」

苦々しげな表情で呟くフロローにファシリェが目を丸くする

「おや、判事殿もいらしていたんですか?」

「まあな、おいハデスこのぐらいでいいのか?」

ハデスにボールの中身を確認させるフロローにファシリェが苦笑した

「でも料理する姿も意外と似合ってますよ?判事殿」

その発言にぎろりと睨むフロローにファシリェが赤く熟れた林檎にへと手を伸ばす

「ハデスー!全部型抜き終わったけどこれどうするの?」

手を粉まみれにしながら笑顔で擦り寄る妻にハデスも笑顔で応える

「んじゃあこの鉄板に乗せてくれ」

「うん!あ、ハデスほっぺたにクリームついてる!」

次の瞬間、頬の辺りから軽く口付ける音がしたのに目を丸くするハデスにペルセポネがえへへと照れ臭そうに笑う

「さっきのお返し!」

その言葉と共に笑うペルセポネにハデスが妻の肩に手をやる

「いいですねぇ…私もティアナとああいうことをしてみたいものですよ」

「無理だろう」

「徹底に嫌われてる貴方よりは可能性があると思いますよ」

魔術師からの心に突き刺さる発言にフロローが歯をぎりっと鳴らした





「ほう...これは見事なものだな」

赤ワインの詰まった瓶を片手に現れたジャファーにフロローとファシリェが顔を向ける

「何か疲れているようだが...大丈夫か?」

「来るのが遅いですよ?大臣殿」

「菓子作りを手伝わされただけだ...ああ疲れた...」

疲労感が漂う表情にジャファーがため息をついたその時、

「よぉ!ジャファちゃーん!」

なに持ってきてくれたの―?と背後からハデスが大臣の肩を掴みながら笑いかけてきた

「ああ、年代物のいいワインが手に入ったから二人で飲みながら語り合おうかなと思っていたんだが...」

この様子じゃまたの機会にした方が良さそうだな?と苦笑する大臣にハデスが目を丸くする

「語り合いは無理かも知れないけど菓子パーティは出来るぜ!いかれ帽子の何でもない日のな!」

テーブルを埋め尽くす皿の上に乗った色んな菓子にジャファーがふむと顎に手をやる

「ならば飲み物も用意した方がいいな」

いそいそとキッチンに向かい紅茶を淹れる準備を始める大臣の姿にハデスがフロローやファシリェに声をかける

「じゃあ皿とフォークの準備とかよろしくな!」

「私はウェイターでも無いぞ!」

声を荒げる判事にそそくさと離れて妻の元にへと駆け寄るハデスにファシリェが苦笑した



「おや、これ意外といけますね」

初めて食したパフェに絶賛の言葉を投げ掛けるファシリェの横で「だろぉ?」と言葉を投げ掛ける

「んーこの果物ゼリー美味しい!」

笑顔でゼリーを食べるペルセポネの横で判事がため息をつく

「あら、食べないんですか?」

一口も食していないことに気づいたペルセポネがフロローにへと声をかけた

「ああ、基本的に甘いものは苦手なのでな」

そう発言し、ティーカップを口元に持っていくフロローにペルセポネが目を丸くした次の瞬間、

「じゃあ!はい!」

「これなんか甘さ控えめだからフロローさんでも食べれると思いますわよ!」

他のやつから見たらはい、あーんの態勢のやつでそれに少々戸惑う判事だったが笑顔で応えるペルセポネに口を開けて待機した

「砂糖は何杯入れるのかなぁ〜?フロちゃーん?」

その次の瞬間、ハデスから砂糖を盛ったティースプーンを口の中に突っ込まれてむせる判事にペルセポネが目を丸くした

「ハデス!貴様何するんだ!ごほっ!ごほっ!」

「ぺルちゃんがやっていい相手はオレだけなの!」

「もう!ハデス!毎日やってるんだからフロローさんにもたまにはいいじゃない!」

タオルを渡して背を擦る妻からの発言にジャファーがにやにやと笑う

「ほう、貴様毎日妻からはい、あーんしてもらってるのか...お熱いねぇ」

毎日が新婚だなと大臣からからかわれてハデスの青い炎が赤く染まる

「うるせぇ!夫婦でしてて何が悪い!」

「はい、あーんどころか一緒に風呂入ってますけどね!ボス」

「夜も一緒に寝てますしもうほんと見てるこっちが熱いですよ!ボス!」

「お前らは黙ってろ!!///」

部下から夫婦生活を暴露され、身体から炎を勢い良く噴き出すハデスに二匹が素早く部屋の奥にへと姿を消す

「待て!」

勢いよく飛んでくる炎を必死にかわしながら逃げ惑う部下を追いかける冥界の神の姿をその妻や他のヴィランズは優雅に茶を口にしながら見守るのだった...

End

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