小説

□さっちゃんの歌
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おいで

その調子だよ

さあ、もっとこっちにおいで...

招かれたことに恐る恐る薄暗い廊下を歩いていくとドアが開かれた一室の部屋から明かりが漏れていたことに少女はごくりとなにかを飲み込み、その部屋に近づき、中を覗き込んだ

(あれ...?)

部屋の中には誰も居なく、真ん中に置かれている丸テーブルの上に置かれてるランプの明かりが周囲を照らしていた...

これでもかと言うようにぎっしりと分厚い知識を詰め込んだような本棚、ランプの灯りに反射してきらきらと光るティーカップ、床に敷かれた極彩色の絨毯、お洒落な感じのインテリアに少女が辺りを見回したその時、

「やぁ、お嬢さん」

声が上から降ってきて思わず声のした方を見上げるとそこには1枚の絵が飾ってあった

その絵は肖像画だった、この家の主なのだろうか?黒い髪に人を見下すかのような威圧感を放すその絵に少女は目を丸くした

(え...絵が喋るわけないよね...?)

少女はその絵に少々たじろいつつも目を放せなかった

その時だった

「やぁ、お嬢さん、こんにちわ?いや、もうこんばんは、かな?」

夕刻だとその境が曖昧になるから挨拶に困るよね?と背後から話しかけられ、素早い動作で振り向いた先に部屋の主がいた

「それで用件と言うのは何かな?ん?」

驚いて再び絵に目をやるとそこには絵が無かった


『さっちゃんの歌』



「でも、まずは自己紹介ですね?後、砂糖何杯入れます?」

丸テーブルへと促され、漆黒の椅子にへとちょこんと腰掛けた少女が口を開く

「あ、あの!私は葉月美琴って言います、後、砂糖は2杯でお願いします」

小さな口から出てきた名前に部屋の主は微笑んだ

「初めまして、葉月さん私は出雲宝珠って言います」

整った顔に漆黒の髪のその主は紳士な佇まいで軽くお辞儀をしてみせた

「ささ、お近づきの印にこの紅茶でもどうぞ」

熱いから気をつけてと差し出されたティーカップの中身の琥珀色の液体からは湯気がたっている

それを数秒見つめた後、少女...葉月は顔をあげて出雲へと真っ直ぐ見つめた

「出雲さんは...さっちゃんの歌って知ってますか?」

「さっちゃんの歌...確か都市伝説の1つだね?」


さっちゃんはバナナが大好き

だけと小さいから半分しか食べられないんだよ

可哀想だね

さっちゃん


「...確かこんな感じの歌だよね?」

軽いリズムで歌い終えた出雲からの問いに葉月は頷く

「でもこれどうってことないと思うんだけと...あ、でもさっちゃんの話を聞くとその日の夜にさっちゃんがやってきて手足を取られるって言うのは昔あったなー」

いやー懐かしいなと笑う出雲とは対照的に葉月は俯き、青ざめている

「実は...そのさっちゃんの四番の歌を聞いてしまったんです」

「はい?」


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