【沖土・土沖】
□雨の日の見回り
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「休みてェ」
超が付くほどの土砂降りの中、俺は憂鬱な気分で溜め息をついた。
「万年サボってる奴が何言ってんだ、黙って仕事しろ」
隣で煙草を吹かす野郎も憂鬱さを隠せず、眉間に皺が寄っている。
まぁ、野郎の場合、大抵いつもそうだけれど。
「大体誰もいないじゃないですか、こんな雨の中出掛ける奴なんざ相当な馬鹿くらいなモンですぜ」
パトカーの窓を開け、外を見渡す。
やはり人影は見えなくて、在るのは雨のみ。
「…あ、いいこと思いつきやした」
「あ?」
野郎が不機嫌そうな声色で訊ねると同時に、パトカーを発進させる。
「おい、どこ行くんだよ、見回りのルートそっちじゃな…」
「まぁまぁ、どこでもいいじゃないですか」
「良くねぇよ!!」
「…んー、ここら辺でいっかな」
「話聞けッ!!」
怒鳴り散らす野郎を無視して車を停めた所は路地裏。
ここなら誰も通らないだろう。最適な場所だ。