Lonely Baby【EXO】
□遠距離
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「…あ … もしもし、ミンソギ? 明日、帰るんだよね。僕、何か作って待ってるよ!何が食べたい?」
『あー、ごめんベク。 明日帰れそうにない』
「…え」
『ごめんな、じゃ 』
「ちょ、ちょっと…」
通話口の向こうからは プープー という途切れ途切れの音しか聞こえて来なかった。
駅の帰宅ラッシュに包まれていた僕は、ショックと失望に囲まれ右手に持っていたケーキをつい手から離してしまった。
「ま、待って!」
人混みを振り返って人を掻き分けて行く。
頭に浮かぶのは、愛おしいあの人の笑顔。
「駄目…嫌だっ…!」
その瞬間 横から手を掴まれて引っ張られた。
抵抗もしたが、人混みに流されて引っ張る方向に流されて行く。
人混みを抜け出すと背中に何かがぶつかり、其の儘抱き締められるような感覚がした。
驚いて、僕は後ろを振り返った。
「チャニョリ…何で居るんだよ、お前が。」
此奴は僕の幼馴染の 僕よりも遥かに高い身長を誇る、 パクチャニョル。
大学卒業以来 頻繁に連絡を取っていた。
『ベク、お前が探してるの、コレ?』
チャニョリは左手をサッとあげると、少し傷や汚れの付いた真っ赤な袋が。
そう、ミンソギに買ったケーキの袋。
「…それ…僕のだ!」
目を見開いて ジャンプをして手を伸ばす。
だが、手が届くはずも無く。
すると突然、チャニョリは左手を振り下ろして 腰を軽く屈めて俺に目線を合わせた。
『泣いてんの?』
不意にチャニョリの長い指が僕の頬に触れて
その離れた指には 大粒の雫が。
「違…っ 」
首を横に振る度に大粒の雫は零れた。
チャニョリは、大きな溜息をつくと 僕の手荷物を奪って 腕を引っ張った。
『今日は俺ん家来い』
僕の前を歩きながらチャニョリは言った。
「だって…っ 明日は… ミンソギ…がっ …」
僕は反射的にチャニョリの力に抵抗した。
人通りの無い 静かな住宅街に 足音と僕の啜り泣く声が響く。
チャニョリの腕を掴む力は強く、自分のペースでズンズンと歩いて行った。