book1
□報告*紫黒
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「そうなんや」
ふと口をついて出た言葉は、自分でも驚くほどいつも通りだった。
「…引かへんの?」
ヨコもちょっとびっくりしたみたいだ。
周りを気にするこの子のことや。俺に言うかどうかもすごく悩んだんだろう。
勇気を出して言ってこんな反応だったから、拍子抜けしたんかな。
「引かへんよ」
引く訳なんかない。
だって、俺は、ずっと
ずっとあんたのこと好きやったんやで?
きっと、マルがあんたを
好きになる前から。
そして、あんたがマルを
好きになる前から。
「そっか」
そう言ってふっと息を吐いたヨコの顔は安心感に満ちていた。
そしてちょっと照れた顔で、
「他の人には言ってないんやけど、ヒナにはちゃんと言いたかってん」
なんて言うから。
わかってる、
その言葉の意味は
友として、仕事仲間として、ずっと一緒に居たという「信頼」。
最初からヨコには、俺に対する「恋愛感情」なんてちっともなくて、
でもそれは、俺たちが同性だからだと思ってたし、そう信じたかった。