book1

□溢れた宝石に口づけて*青黒
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ベットの中。


「…っ」


ん…?

ふいに意識が浮上して、
自分の腕の中に居る恋人が微かに震えていることに気付いた俺。



眠たい目を慌ててこじ開けて、その愛しい人に目を向けた。




「よこちょ…?」


「…ぁ、ヤス…」


視界に入ったよこちょは、目には涙の膜が張っていて、その声も微かに震えていた。




「起こしても、た?…ごめん」


よこちょの普段見せないそんな姿を見て実はちょっと動揺してもうとるけど

こんな時でも俺のことを気遣う、
優しいよこちょを安心させたくて優しく尋ねる。




「ええよ。それより、どしたん?」


睫毛が少し揺れて、躊躇いがちにゆっくりと唇が開かれる。


「あの、な…?ゆめ、見てん」


「夢?…怖い夢見てしもうたん?」


「う、ん。ヤスが…」


「俺?」


俺が何かよこちょにしてもうたのかな?


「女の人と、どっか行ってまう夢…。でも俺何回も呼んだのに振り向かんくて、そんで、」


「よーこーちょ」


不安気に揺れた瞳から、ぽろぽろ、まるで宝石のように零れたその涙を見ていられなくて

自分の出せる最大限の優しくて甘い声を出した。



「俺は、どこへも行かんよ?よこちょを置いて女の人と、なんてありえません」


「…ほんま?」


「ほんま!そんなん、俺のが不安やでー?よこちょモテモテやもん」


「…んなことない」


「ある!…だからな?」



いつもは隠してしまう不安を素直に向けてくれるのが嬉しくて。そんな夢を見ただけで涙が出るほど俺を想ってくれてると思うと愛しくて。



「ん、ヤス…」



指で柔らかい頬に触れて、そっと

おでこに、瞼に、鼻に…
顔中に口づける。



「ずーーっと、俺の傍に居って?一生、離さへんから」


「…うん」



恥ずかしそうに頷いたのを確認して、そこでやっと柔らかい唇に口づけた。


ただただ優しく、溢れる愛しさを込めて繰り返したそれに

よこちょは嬉しそうに微笑んだ。



「…すき」



TVやコンサートのMCであんなに上手にトークを展開するよこちょだけど
こういう時は言葉が幼くなる。声も、普段よりも糖度が高め。



こんな可愛い人を置いていくなんて、ありえない。

俺がよこちょ以外を愛するなんてこと、もう、出来ないのに。







「俺も。好き、愛してる」



何十回、何百回と伝えてきたはずなのに今だに顔を真っ赤にする恋人をキツく抱きしめなおす。





「おやすみ」


「…おやすみ」



とろとろと眠気に誘われて、
2人はまた眠りについた。



end

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