book1
□おめでとう、ありがとう*赤黒
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5月8日。
「おやすみ」
電話を切る直前の、そう言う声には、隠しきれない寂しいが滲んでいて。
可愛いなぁ、と思ってしまった。
誕生日は一緒に迎える予定だった。
なのに急に仕事の時間が変更になって、夜中まで仕事しなければならなくなった。
その後ヨコの家に行こうかと思ったが、ヨコに夜遅くなるし明日の朝は早いからと遠慮された。
そういうこと考えんでええのに。
俺は別にヨコの為やったら睡眠なんていらんし、
どれだけ仕事で会ってたとしてもプライベートの恋人としての時間は欲しい。
誕生日なんて大事な日には特に、隣に居たい。
俺だってそう思ってるのに。
「やっぱこういう時はワガママ言わないんやな」
いつも小さいワガママは言うくせに、こういう時は我慢する。
俺も大概やけど、ヨコも損な性格やな。
「渋谷さん、お願いします」
「あ、はい」
時計を確認すると、11時20分。
ヨコはもう寝るみたいやし、絶対に日付が変わる時には間に合わんけど。
「やっぱ行こ」