book1
□おめでとう、ありがとう*赤黒
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仕事を終えてヨコの家に合鍵で入ったのは5月9日2時30分。
そっと寝室を覗くと、寝ているヨコの姿。
ふふ、携帯枕元に置いたままや。
あの後すぐ寝たんやな。
起こさないよう気を付けながら、もうすでに寝癖の付いた髪を撫でる。
「一緒に日付変わる瞬間迎えられんくてごめんな。
いつもありがとう。
不器用同士で大変なこともあったけど、俺が悩んだり迷った時、いつも隣に居てくれて、助けてくれて。
俺がここまでやってこれたんも、ヨコのおかげや。ヨコが頑張ってるから、俺の隣で笑ってくれるから。俺はがむしゃらに走ってこれた。
お誕生日、おめでとうな。毎年毎年、直接言えて無いけど、こうやって寝てる時言ってるんやで。
…産まれてきてくれて、俺を選んでくれて、
ありがとう」
面と向かっては照れ臭くて言えない俺の心からの感謝の気持ち。
それと、
「愛してるで、……侯隆」
心からの愛の言葉。
朝目覚めたら、きっと驚くんやろうな。居るはずのない俺が寝てたら。
そしたら、寝起きやけど、俺のソロ曲でも歌ってやろう。
照れて赤くなるであろう頬に触れて、目を見て、
おめでとうって飽きるほど言ってやろう。
明日、…いや、もう今日か。
今日は、ヨコにとって大事な日であると同時に、俺にとっても大事な日。
その今日が、ヨコにとって、良い1日でありますように。
そして今年1年が、ヨコにとって、良い1年でありますように。
そう願いながら、撫でていたヨコの髪にそっと口付けをした。
end