book1

□茜色*赤黒
1ページ/1ページ



ベランダに緩やかな勾配で差し込むのは、夕陽のあたたかな光。


その光に包まれた茜色のヨコの横顔は、この世のものとは思えないほど儚くて、切なくて。


とても、綺麗だ。










そっと手を繋いでみる。







やはりこちらを向いてはくれないけど


先程より紅く染まった頬と、少しだけ握り返された俺よりも大きな手が、愛おしい。





「綺麗やな」


「おん」


「幸せやな」


「…おん」


「好きやで」


「……」



あぁ、こんな沈黙ですら、俺の心をこれ以上無く満たしてくれる。



分かってるよ、ヨコ。



「なぁ、ヨコ?」


「なん?」


「愛してる」


「…俺も」



欲張りなとこも、愛おしいで。






沈みゆく夕陽、輝き始める星たち。



変わらない日常の当たり前の幸せを、ただいつまでも見ていた。



手と手を、柔く繋いだままで。




end

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ