●相棒season12が終了し、亨が自主退職したと仮定して物語を始めます。

※ちょくちょく改稿しています。


『指名手配犯田村を発見との通報あり。捜査員は直ぐに現場に向かうよう』
『了解!行くぞ!』
通報を受けた彼女の数年先輩の伊丹刑事、冷静沈着な三浦刑事、若くエネルギッシュな芹沢刑事が現場へ疾走する。

ある日の捜査一課の様子である。
この課は男臭いと思われるが、紅一点女性警官の姿もあった。
『ほら!行くよ!』
芹沢が声をかける。
『ふへっ!?は、はい!』
彼女の名前は穂波咲。
今日付けで捜査一課に異動になった。

異動前は、都内の青木署に勤務する女性警官だったのだ。
そこでは、勤務態度もよくホシも上げていたので「青木署の所轄内は犯罪が少ない」と言われてきた。
そのお陰か、署長に太鼓判を押してもらい出世が出来たのであった。

咲は、これから始まる新しい生活に胸を踊らせ現場に向かっていった。



『暇か?』朝、角田が特命係の小部屋を訪れる。
『おはようございます』ここの主、杉下右京が素っ気なく答える。
彼にしては珍しく小部屋を掃除していたのだ。
『どうした?朝から掃除なんて。ガラじゃないな』
『えぇ、まぁ。暇な部署なので』
『暇な部署はいいよ・・・。珈琲もらっていくよ!』角田がポットから珈琲を注ぐ。




『指名手配犯を発見しました!』伊丹が捜査本部へ連絡を入れる。
『わかった!とりあえず待機!』
『了解!』
しかし、いくら待っても突入の合図が出ない。
周りも次第に焦りの色が見え隠れする。

『えぇい!私がいくわ!』

突如、咲が声をあげた。
そして、今にもでていきそうな咲を『おい!止めろ!早まるな!』と、伊丹が抑える。
『私がいかないで、誰がいくんですか!?』
『突入の合図を待て!』
『そうやって先延ばしにして、何時いくんです!?』
『それは・・・』伊丹が躊躇っているうちに、咲が飛び出した。
『待て!田村!』
『あん?』
『警察よ!』
とたんに顔色を変え逃げ出した。
『待ちなさい!田村!』
咲は、100bを10秒で走る俊足。しかし、相手にどんどん離される。
(マズいわ・・・。)
田村が路地から大通りに逃げ出そうとした時、急にパトカーが道を塞いだ。

ガンッ!

田村は勢いのままパトカーの横っ腹に激突し、のびた。
そして、無事犯人を逮捕できたのである。




『馬鹿者!一体何をやっているんだ!伊丹がパトカーで遮ってくれなくては犯人を逮捕出来なかったかもしれないんだぞ!』
内村が叱責した。
咲と伊丹は犯人を逮捕した後、刑事部長室に呼び出されたのである。
『それは、穂波が・・・』
『責任を擦り付ける気か!次から気をつける・・・』内村が言いかけたのを遮って咲が
『あれは必要な処置だったと思います。』
『何!?』
『ああでもしなきゃ逃げられてました。必要な処置です』
咲は強くでた。
『おい!穂波!失礼します!』伊丹が強引に部屋を出ていった。
『必要な処置だと!?馬鹿者が!!』
机を平手でバンと叩いた。




『おい!あれは言い過ぎだ!』
一課の部屋に戻った伊丹が言う。
『何故ですか!?当たり前の事を言っただけです!』
『そうかもしれないが、歯向かうと痛い目に遭うぞ!』
『何ですか!?』
『特命係に飛ばされるぞ!』
『特命係?』
『あぁ。そこは人材の墓場と言われる部屋でそこの主、杉下右京がいる。そこに入った相棒は数ヶ月したら自主退職を余儀なくされるんだ。お前も刑事を続けたいなら部長に歯向かわない事だ』
『それでも曲がった事が通されるなら私は許せません!』
咲は決然と言い放った。



翌日、咲が登庁すると部屋の前が騒がしかった。
更に昨日とは咲に対する目が変わっていた。
『お前も残念だったな。所轄から捜一に昇進してそうそう特命に飛ばされるなんて』
伊丹が一枚の紙を突き出す。
『この異動は上からの圧力ですよね。私、こういう圧力には絶対に屈しませんから』
咲は堂々と言った。





『とは言っても、特命係って何処にあるのかしら?』
仕事場とはいえ警視庁はとてつもなく広い為、どの人も未だ全てを把握しきれないのが現実だろう。

ガツンッ!

『大丈夫ですか?怪我は?』
見上げると、きちんとスーツを着、銀縁のメガネをかけた男性が手を差し伸べている。
『えぇ。ありがとうございます。
すみません。特命係の小部屋は何処に・・・?』
相手はにっこり笑いながら
『そうですか・・・。特命の小部屋をね・・・』
『えぇ』
『こちらです。』
男性は、案内しつつ
『貴女は何故特命係へ?』
『色々ありまして・・・』
『もしかして、捜査一課でしたか?』
『えっ?』
『いや。捜査一課に新人が入るという話しを小耳に挟みまして・・・』
『そうなんですか・・・』
『そうこうしている内に、特命係の小部屋に着きましたよ』
そこは、本当に小さな部屋である。しかし、どことなく懐かしさを感じさせる雰囲気であった。
『ここが・・・特命係・・・』
すると、男性が恭しく一礼した。
『そして、私が警視庁特命係の杉下 右京です』

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