※『「黒魔女さんが通る!!」キャラブック』内『メグちゃんファッション通信』の妄想 黒と赤を基調とした、コウモリ風ゴシックロリータ。 あたしが今着ているのは、そんないつも通りの黒魔女さん衣装……、ではなく。 青いリボンを2つ髪に結わえ、水色の服に白と桃色の横縞のひらひらとした服を重ね着している。 ズボンの足元に被せるようにして桃色の布を足首に巻き付けていて、足には水色の靴を履いて。 さらに首には白に水色の丸が散りばめられた柄のスカーフ。 この足につけてるピンクのやつ、何? 足が寒いなら靴下を履けばいいのに、何でわざわざ素足のまま? スカーフっていうのも、よくわからない。 寒いならこの少し腕のところが短い長そでじゃなくて、もっと厚くて長いシャツを着ればいいんじゃないのかな? という尽きない疑問をメグにしてみたところ、「チョコは本当にオシャレってものをわかってない」とのこと。 これ以上文句を言えばメグのオシャレ講座を延々と聞かされそうだったので、もう文句を言わず黙ることにしました。 「だーかーらぁー、このブラウスがね、」 ターゲットを誰かに定めたらしいメグの声を背後に聞きながらも、そそくさとその場から離れた。 うーむ、メグの言ってることがさっぱりわからん。 まるで黒魔法の呪文みたい。 メグってもしかして、黒魔女さん? そんなバカなことを考えながら、慣れない服で疲れた体を休ませるためにソファに腰かける。 流石メグの家はお金持ちなだけあって、ふっかふかのソファだ。 何でメグの家にいるかというと、メグが「もーっ、みんなオシャレってものを全然わかってない!あたしが教えてあげるから、今日あたしの家に集合ね!」と言い出したからだ。 まさかこんな全身コーディネートされるとは思っていなかった。 「疲れたねぇ」 「うわぁっ!?」 突如隣から聞こえたアニメ声に、びっくりして声を上げてしまう。 「驚かれたねぇ」 「ぼくたちの方が先に居たのにねぇ」 いつも通りぬいぐるみとお喋りする大形くんも、あたしと同様にいつもと違う格好をしている。 紫のチェックのシャツに、黒いパーカーと薄めの色の上着、そして黒ネクタイを合わせている。 ズボンはベージュで、足にはスニーカー。 オシャレに疎いあたしでもちょっとかっこいいかも、と思うのに、手にはまったリスとクマのぬいぐるみがその雰囲気を壊しているように見えた。 「モード系、って言うらしいねぇ」 「モード系?」 「詳しいことはわからないねぇ」 「だねぇ」 相変わらず1人2役で話す大形くん。 「大形くんその服似合ってるね。オシャレとかわからないあたしが言っても、褒め言葉にならないかもしれないけど」 「ありがとう、だねぇ。黒鳥さんも、似合ってるねぇ」 「そ、そうかな…?あたしは慣れなくて疲れちゃうし、早く脱ぎたいんだけど」 普段オーバーオールかゴスロリの2択しかない身としては、あまりに違和感を感じて仕方がない。 ゴスロリを初めて着たときもソワソワして落ち着かなかった気がする。 「チョコちゃん、このぬいぐるみ忘れてるよ!」 と、そこでメグ曰く『ふんわり森ガール』とやらの格好をした灯子ちゃん。 あたしにぬいぐるみを渡したら、すぐにメグに呼ばれてまた戻って行った。 渡されたのは、白い猫のぬいぐるみ。 この今着てる服と合わせるためにメグに持たされたものだったけれど、持ち歩くのも気が引けて置いてしまっていた。 顔が(>ω<)こんな感じで、ちょっと可愛いと思わないこともない。 「…あ」 ふと思って、声を洩らした。 「どうしたの?だねぇ?」 「んー、おそろいだなぁって」 「…へ?」 きょとん、という擬音がぴったりな顔をして大形くんが首を傾げる。 説明不足だったなと思って、言葉を付け足す。 「えーとね、あたしも今ぬいぐるみ持ってるから、おそろいだなぁって思っただけ」 そう言うと、大形くんは少し視線を逸らし、「そうだねぇ」と小さく呟きそれきり黙ってしまった。 あれ、もしかして、嫌だったのかな。 だったら悪いし、謝ろうと口を開いた途端、後ろからの叫び声。 「あーっ!!てめぇ大形!黒鳥と何してやがる!!」 「抜け駆けは許さないぞ!!黒鳥、大形は放っておいておれと話そう!!」 元々5-1組の人が一部集まっているせいでで騒がしかった部屋が、麻倉くんと東海寺くんの声で余計に騒がしさを増す。 ああもう、疲れる…。 って、大形くんに謝ろうとしたんだった。 「ごめんね大形くん、嫌だった?」 「えっ?」 「おそろいって言っちゃったの、嫌だったのかと思ったんだけど…違うの?」 「ち、違うねぇ!嬉しいねぇ!」 嫌がっていたわけじゃないらしく、よかったと胸を撫で下ろす。 そんなやり取りを見ていた麻倉くんと東海寺くんは「おれを差し置いて黒鳥とイチャイチャすんな」だの何だのと更に騒ぎ立てているけれど、よくわからなかったのでスルーしておくことにした。 |