黒魔女さんが通る!! 小説

□京チョコ
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「あ、これぇ?これは原宿の超有名ブランドのスカートなんだけどぉ、どこのかわかる?実はぁ、」
「ちょっと紫苑さん、そのスカートの短さはどういうこと?そんなに短いスカートだと風紀が乱れるでしょう!」
「ショウくん、今日の帰り、百合と一緒に帰らない?」
「ぼく、誘ってくれる子、みんな好きだよ。」

いつもの5年1組の朝です。
そしてあたしも、いつも通り黒魔女さんドリルを解いてます。

えぇと、なになに…。
第3問 黒魔法の基本呪文である、「ルキウゲ・ルキウゲ・ロフォカーレ」の由来となった悪魔と、その意味を答えなさい。
…わかるかっ!
あ、でも、たしか「魔界の悪魔・大全集」って本にそれっぽい名前の悪魔が載ってた気がするよ。
なんだったっけ…。
たしか、ルキフゲ・ロフォカレ?だったような。
基本呪文のルキウゲ・ルキウゲ・ロフォカーレに似てるなって思って覚えてたんだ。
よし、ルキフゲ・ロフォカレっと…。
でも、意味ってなんだろ?んー…。
書いてあった気がするけど、全然思いつかないな…。

「黒鳥!わからないことがあるなら俺に頼れ!」

「ふざけんな!頼られるのはお前みたいなインチキ霊能力者じゃなくて俺のほうなんだよ!」

わっ、東海寺くんと麻倉くん?
ぁ、もしかして、また思ってることを声に出しちゃってたかな。

「黒鳥、なにがわからないんだ?」

東海寺くん、気持ちはありがたいけれど、遠慮しておくよ。
だってこれ、黒魔女さんドリルだし…とはもちろん口には出さず。

「東海寺みたいなアホはたしかに役に立たないからな!黒鳥、わからないことなら俺に聞け!」

麻倉くんも、気持ちはありがたいけれど、遠慮しておくよ…。

「『光を避ける者』、だねぇ。」

え?あ、大形くん。
いつも通り人形を手にはめて、「だねぇ」口調で話してます。

「ルキフゲ・ロフォカレの意味だねぇ。」

「名前の中にラテン語のLux(光)とFugio(逃げる)が入ってるんだねぇ。」

へぇ、そうなんだ。
なんだかオカルトオタクの心をくすぐります。

「やっぱり大形、「漁夫の利」を狙ってるだろ!」

麻倉くんと東海寺くん、前もそんなこと言ってたね。

「大形に黒鳥は渡さない!なぜなら俺の妻になるんだから!」

いやいや、なるなんて一言もいってませんけど。

「麻倉、抜け駆けは許さん!黒鳥は俺のパートナーになるんだ!」

だから、そんなこと一言も言ってませんっ!
毎回毎回、なんでそういう話になるかなぁ。
もう止めるのも面倒だし、黒魔女さんドリルを進めてよう。
これ、今日中に10ページくらい進めておかないとギュービッドに怒られるんだよ。
さて、次の問題はっと…。

「黒鳥!俺とだよな!」

「俺に決まってんだろ!」

へ?ぁ、ごめん、聞いてなかった。
何の話?

「今日、俺の家に来ないか?黒鳥の好きなバービー人形、たくさんあるから!」

だからバービー人形を好きなのはギュービッドで…とも言えず。

「黒鳥、この前家の掃除してたとき、面白い本があったんだ!黒鳥なら絶対気に入ると思う。だから俺の家に来ないか?」

面白い本?オカルト本なら、すっごく興味があります。
けど、学校が終わったら家で黒魔女修行しなくちゃいけないし…。なんて言えるわけないし、どう説明しよう…。

「やめるんだねぇ。」

「黒鳥さんが困ってるんだねぇ。」

「それに、黒鳥さんは今日は用事があるんだねぇ。」

「だから誰かの家に遊びに行ったりはできないんだねぇ。」

おぉ、ナイスフォロー。
大形くん、ありがとう!

「大形、なんで黒鳥の予定なんて知ってるんだよ。」

麻倉くん、そこまで追及しなくても…。
ていうか、あたしは黒魔女さんドリルを進めなくちゃいけないのに、さっきから全然進んでないんですけど。

「それは僕と約束してるからなんだねぇ。」

へ?それ、なんの話??
って言おうとしたら、大形くんがさり気なく合図をしてきた。
よくわかんないけど、多分、しゃべるなってことなのかな…?

「約束って、なんのだよ。」

「黒鳥さんのお母さんが作ったお菓子を食べるんだねぇ。」

「だったら俺も…!」

「数が少ないらしいから、きっと人数が増えたら困るねぇ。」

「でも、大形と黒鳥が二人でなんて!」

「妹の桃も一緒だねぇ。」

「…、」

大形くんが、助けてくれた…。
最初の頃は何があっても我関せずで、人形とお話してるだけだったのに!
やっぱり桃花ちゃんの指導のおかげかな?
大形くんも、変わってきたのかもしれないね。
麻倉くんと東海寺くんは自分の席に戻っていきました。

「大形くんありがとう、助かったよ…。」

「いえいえ、だねぇ。」

「それに、僕のためでもあるねぇ。」

大形くんのため?

「黒鳥さんがあの二人と仲良くなると困るねぇ。」

「え?何で?」

「こっちの話だねぇ。」

「??」

まったく話が見えん…。
詳しく聞こうと思ったら、大形くんがそそくさと自分の席に戻って行った。

「ちょっと!チャイム鳴るわよ!早く座りなさいッ!」

あわわ、舞ちゃんがお怒りだよ。
メグやメグのスカートを扇いでいたエロエース達、他の女子数名も、急いで自分の席に戻っていきます。
大形くん、これを見越して席に戻って行ったのかな?

キーンコーンカーンコーン

あ、チャイム。

「おはよう、諸君!今日も元気に頑張ろう!」

よし、チャンス!
今のうちに、黒魔女さんドリルを進めなくちゃ。
そのときにはさっきの大形くんの言葉は、頭から抜け落ちていた。



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