ダンガンロンパ 小説

□奪っちゃった
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 だんがん紅鮭団とかいう、謎のラブバラエティ企画に巻き込まれて十日が過ぎた。
 「恋愛的に結ばれたふたりは卒業できる」というモノクマの言葉は引っ掛かるものの、僕は王馬くんと卒業することになった。
 最後に、学園を出る前に二人で少し話をする。
 やっぱり王馬くんは王馬くんで、そんな最後の会話でも嘘ばかりだ。
 でも、「外に出てからもよろしく」という言葉は、嘘じゃないと思う。嘘じゃなければいい。
 僕はもっと、王馬くんのことを知りたいと思っているから……。

 握った手から伝わる温度は、いくら体の七十%が嘘でできているなんて言い出すような王馬くんでも、嘘ではない。
 確かな温もりを手放すのが惜しいけれど、いつまでも男同士で手を握っているわけにもいかないので、込めた力を緩めて放そうとした。した、けれど。

「えっ!?」

 ぐい、と手を引かれて、それは叶わなかった。小柄な体のどこにそんな力があるのか、思いのほか強く引かれる。
 バランスが崩れて、これは転ぶかと目を閉じた瞬間、何か柔らかいものが唇に触れた。

「は……?」

「あはは、最原ちゃんのファーストキス、奪っちゃった」

 呆然と固まる僕の手を握ったまま、王馬くんは言った。

「じゃ、次に会うのを楽しみにしてるね。あ、これは嘘じゃないよ!」

 ばいばい、最原ちゃん。
 何も言えずにいる僕を残して、満面の笑みで王馬くんは去って行った。
 残ったのは、唇の感触と、手の温もり。
 ……と、その手の中にいつの間にやら押し込まれた、くしゃくしゃの紙。
 開いてみれば、王馬くんの連絡先が書いてあった。

 本当に、最後の最後まで、僕は王馬くんの手の平の上だったようだ。
 完全に、翻弄されている。
 でも、それを嫌だと感じない自分がいるのも確かで……。

 こうして、僕達の才囚学園での日々は、終わりを告げた――


2017.02.04



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