だんがん紅鮭団とかいう、謎のラブバラエティ企画に巻き込まれて十日が過ぎた。 「恋愛的に結ばれたふたりは卒業できる」というモノクマの言葉は引っ掛かるものの、僕は王馬くんと卒業することになった。 最後に、学園を出る前に二人で少し話をする。 やっぱり王馬くんは王馬くんで、そんな最後の会話でも嘘ばかりだ。 でも、「外に出てからもよろしく」という言葉は、嘘じゃないと思う。嘘じゃなければいい。 僕はもっと、王馬くんのことを知りたいと思っているから……。 握った手から伝わる温度は、いくら体の七十%が嘘でできているなんて言い出すような王馬くんでも、嘘ではない。 確かな温もりを手放すのが惜しいけれど、いつまでも男同士で手を握っているわけにもいかないので、込めた力を緩めて放そうとした。した、けれど。 「えっ!?」 ぐい、と手を引かれて、それは叶わなかった。小柄な体のどこにそんな力があるのか、思いのほか強く引かれる。 バランスが崩れて、これは転ぶかと目を閉じた瞬間、何か柔らかいものが唇に触れた。 「は……?」 「あはは、最原ちゃんのファーストキス、奪っちゃった」 呆然と固まる僕の手を握ったまま、王馬くんは言った。 「じゃ、次に会うのを楽しみにしてるね。あ、これは嘘じゃないよ!」 ばいばい、最原ちゃん。 何も言えずにいる僕を残して、満面の笑みで王馬くんは去って行った。 残ったのは、唇の感触と、手の温もり。 ……と、その手の中にいつの間にやら押し込まれた、くしゃくしゃの紙。 開いてみれば、王馬くんの連絡先が書いてあった。 本当に、最後の最後まで、僕は王馬くんの手の平の上だったようだ。 完全に、翻弄されている。 でも、それを嫌だと感じない自分がいるのも確かで……。 こうして、僕達の才囚学園での日々は、終わりを告げた―― 2017.02.04 |