人外クラスの人間ちゃん

□*1話*
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どうも皆さん、初めまして。私の名前は 宮之上 巳稜 、一応現役バリバリの女子高生だ。
突然だが、私は今とある学園の前に立っている。
その名は“波佐間学園”
別名“世界の狭間”と呼ばれているここは、街ではちょっと有名な私立高校だ。
何故私がそんな所にいるのかというと、今日の朝方、父さんに言われた一言が原因だった───。



「巳稜!今日から波佐間学園に通うことになったぞ!」
「………は?」

清々しい程の青い空、穏やかに流れて浮かぶ白い雲。小鳥達が美しい鳴き声で甲高く囀っている。そんな嫌になりそうな素晴らしい朝日を受けて、朝に弱い私は重々しくリビングへと足を運んだ。
リビングに入ってきた私を見て、父さんは満面の笑みを顔に張り付けたまま、嬉しそうに冒頭の言葉を言った。それは朝起きたばかりの私の脳に刺激を与えるには十分な言葉で。

「……いやいやいやいや、何だって?」
「だから、今日から波佐間学園に通うことに……」
「いや、うん、聞き取れなかった訳じゃなくて。いきなり何言ってんのってこと」

父さんが何を言ってるのか理解できない。と言うか、頭が追いつかない。なんか頭痛くなってきた。

「いきなりじゃないぞ?僕達でずっと考えてたからな。ねーママ!」
「そうねーパパ!」
「いや、私に相談しなきゃ意味ないだろ!?」

何で私が通う学校なのに、私に言わないんだよ。しかも今日からとか、どう考えてもいきなりだろこのバカ夫婦。朝からイチャつきやがってコノヤロウ。

「……まあ、百歩譲って相談しなかったのは許すとして…私が今まで通ってた学校は?辞めるってこと?」

私は街の公立高校に通っている、言わばちゃんとした女子高生だ。もう一度言う。こんな話し方だが、ちゃんとした女子高生だ。それに波佐間学園は私立高校。公立高校から私立高校にわざわざ行くなんて、私は聞いたことがない。

「ああ、だから波佐間学園に転校してもらおうかなって」
「何でそんなこと……」
「良いじゃないか!絶対楽しいぞ!」
「そうよそうよ!だってあそこは……」

そう言って顔を見合わせ笑う二人を見て、嫌な予感が脳内を走る。と言うか、この二人が何で転校先に波佐間学園を選んだかなんて、そんなの分かりきっているのだが。

「人外達と仲良くなれるんだから!!」
「……ですよねー」

そう、波佐間学園は人間と同じように人外達が通える唯一の学校で、世界に一つしかない“人間と人外の共同高校”だ。私の両親はそんな所に、実の娘を送り出そうというのだ。
人外というのは、その字の通り“人から外れたもの”のことを言う。眼が複数あったり、はたまた一つしかなかったり、人外の種類は様々だ。私が住んでいる場所は、そんな人外が蔓延っている。と言うか、人外が人間と同じように色々な所で暮らしている。全く危害も加えない、言わば人外もただの一般人だ。

「人外達と会話したり遊んだりできるだなんて、最高じゃないか!」
「もーパパったら!勉強もちゃんとしなきゃ駄目でしょ?」
「あ、そうだったねママ!うっかりしてたよ!」

そして、私の両親は大の人外好きだ。人外好きと言うか、人外のファンと言うか。私がまだ幼い頃、人外に関しての絵本やビデオを見させられた記憶がある。そのせいで私は人外に多少体勢がついたのだが……まあそんなことはどうでもいい。

「……あのさ、一つ聞きたいんだけど」
「ん?」
「何でわざわざ波佐間学園を選んだの?他の学校でもいいじゃん」
「ああ…それは……」

そう言って少し暗い顔をする父さん。母さんも、申し訳無さそうに眉を寄せている。何だ?私何か変なこと聞いた?

「……巳稜、お前が今までどんな扱いを受けてきたか知ってるからさ」
「…………」
「私達のせいなのよね、そんな風に産んじゃったから……」
「今までツラかっただろう?だから…あの場所なら大丈夫なんじゃないかって……」
「…………」

両親の言う通り、私はイジメを受けていた。まあイジメって言っても、避けられたり無視されたりする程度なんだが。
その理由は自分でもよく分かっている。この“髪”だ。黒髪なのに、毛先にいくにつれて青く変色している私の髪。私達“人間”には有り得ない髪の色。そう、“人外”には有り得る髪の色。それが理由で、私はイジメを受けていた。
人間という生き物は、自分と違う“何か”を見つけるとすぐに壁を作り、差別をするものだ。気に入らなければ陰口を叩くし、嫌いになれば関わらない。それがエスカレートするとイジメに発展する。私の場合、そうなってしまったのだけど。

「……あまりそういうこと言わないでよ」
「え……」
「私の髪がこうなったのは、母さん達が悪いわけじゃないし。それに私、別に気にしてないから」
「巳稜……」

気にしていないのは本当のことだ。別に避けたい奴らは避けさせとけばいい。関わりたくないなら関わらないでいい。私は数人で群れてワイワイやるのが、どうにも好きになれない。だから独りの方が、ぶっちゃけ気楽だったりする。別に負け惜しみなんかじゃない。
……と言うか、何で学校でイジメを受けてたって知ってるんだ?私話した覚えないんだが。

「そんなことより、何時までに行けばいいの?私何も知らないんだけど」
「そ、そうね!もうそろそろ行かないとかしら!」
「え、もう?」
「今日から波佐間学園に通うんだから、一応早く行った方がいいんじゃない?」
「そ、そうだな、手続きとかはもう済ませてあるが、向こうで色々あるだろうし」
「色々……?」

手続きがもう済んでいるのなら──この際私に一言も言わなかったのは大目に見て──そんなに焦る必要は無いのでは?今まで転校したことないからよく分からん。

「ほらほら早く制服に着替えて!ご飯食べて!」
「急がないと間に合わないぞ!」
「え、ちょ、分かったから押さないでよ!」


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