小説内容2

□第四話
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 扉を叩く音が聞こえ、スカルが扉を開ける。そこには、ライの従者であるイアルが頭を下げて立っていた。

「スカル様、ライ様が共有スペースに集まるように…と」
「ライが…?そうか、シズカには俺が知らせる。お前1人で、全員に伝えて回るにも時間を必要とするだろうしな」
「お手を煩わせてしまい、申し訳ございません。お願いします」

 イアルが扉を閉めると、スカルは前髪をかき上げた。そんなスカルのそばに1人の男が寄ってきた。それをみてスカルは、小さく息をついた。

「出てくるなんて、珍しいじゃないか。ヘリオス」

 ヘリオスとは、スカルのパートナーである獣で人間体となって現れていた。ヘリオスは神妙な顔つきでスカルを見据える。

「スカルは、この世界と獣の世界が繋がったときのことを知っているか?」

 低い澄んだ声が響く。スカルは、そんなヘリオスの言葉に眉をひそめた。
そんなスカルを見てヘリオスは「知らないならいい」と言い口を閉ざした。しかし、姿を消そうとして思いとどまったように顔をあげ再び口を開いた。

「始祖が、目覚めたんだよな?」
「あぁ、サワンがな」
「ならば、いつかは聞くことになるだろう。ヴァンパイアと獣が繋がったわけを」

 ヘリオスは、そういい切なげに目を伏せる。そして一言。

「たとえ真実を聞いたとしても、お前は変わらないでいてくれ」

 そう言い残し消えていくヘリオスをスカルは引き留めることなく見ていた。

 
 そのころ、リークは自分の腕を見ていた。リークの視線の先には黒い紋章が浮かんでいる。それから目をそらすようにまくっていた服を元に戻した。
フィンスと同調したときは何もなかったが、数日してから腕に浮かび上がってきた。一応、何かあっては困ると検査してみたものの、血液も細胞も異常は見られなかった。

「フィンス、出てきてくれ」
「リークが呼ぶなんて珍しいじゃないか!」

 フィンスが人間体として出てきた時だった。ノックとともに、はるが部屋に入ってきた。ちょうどそのタイミングでフィンスがリークに抱き着き、はるは口をポッカリと開けて固まった。

「リークー!嬉しいな!リークから呼んでくれるなんて」
「は・な・れ・ろー!は、はる!違うんだ!こいつは!」
「あ〜、はるちゃん!ヤッホー!」

 はるがものすごい勢いで後ずさりする。周りから見たら変人でしかない2人をみて、引いてしまったようだ。

「なんで、そんな離れるのさ〜」

 それからリークは、はるに切実に訴えかけ誤解は解けた。

「…それで、フィンスさんは、獣なんだね?」
「そうだよ!さんなんてつけなくて良いから、気軽に呼んでよ!」
「は、はい…」

 フィンスの勢いにはるが圧倒されていると声が聞こえてきた。

「私(わたくし)の主が困っていらっしゃいます。よしてください。フィンス」

 やや呆れ落ち着き払った声と共に、花の香りが漂った。はるが顔をあげると、そこにはヒメルが立っていた。薄いピンクのショートヘアがふわふわと揺れている。フィンスがヒメルを見て笑みを浮かばせた。

「あなたはヘリオスとよくいらっしゃるのに、今日は、お1人なんですね」
「リークが1人だったからさ!それに珍しく呼んでくれて…って、リークなにか用事があったんだよね?」
「え…あ、あぁ」

 はるに視線を向けてから、紋章の浮かんだ腕の部分を掴んだ。まさか、はるに見せることになるとは思わなかった。
なかなか見せられないでいると、はるがリークに声をかけた。体調がすぐれないと思ったのだろう。心配そうな顔を向けてくる。
そんな心配を拭うために、リークはいつものように笑みを浮かべ「大丈夫」と伝えた。

「うん!大丈夫大丈夫!」
「はっ?」

 いきなりフィンスが後ろから声をかけてきて、リークは呆気にとられる。フィンスは、「それ」と言って腕を指さす。

「その腕の別に有害じゃないから!そのうち消えるよ!」

 リークが安心したように息をつくと、はるは首を傾げた。リークは、見せるか悩んだものの大丈夫と言われたため、服をまくってみせた。

「これって…」
「主、これは獣と同化したときにつくものなんですよ。心配はいりません。この方の中に、フィンスと同調したときに送られた力が、まだ抜けきっていないだけで、しばらくすれば消えます。安心してくださいね。主」
「そうなんだ。ヒメルさん教えてくれて、ありがとう。あと、あの…」

 はるは、ほっとした様子を見せてから少し言いにくそうに下を向いてから顔をあげた。はるのそんな様子にヒメルは動揺した。なにか失態をおかしてしまっただろうか…。
 けれど、そんなヒメルの心配は杞憂となって終わることになる。

「私のこと…主って呼ばないで、はるちゃんって呼んでください!」
「え…?」

 驚いている様子のヒメルにリークが言う。

「いつもこうなんだよ。普通に呼んでやって、ヒメル」

 ヒメルは「はぁ」と間の抜けた返事をして、少し戸惑いつつも笑顔で頷いた。そして顔を赤らめつつ「お願いしますね、はるちゃん」と言った。

「ありがとう、ヒメルさん」
「私(わたくし)は仕える身ですので、さんはよしてください」
「うーん…これ癖で。昔からリークや緑木は呼び捨てで呼んでるんだけどね。あ!なつみんは、あだ名だから呼んでなかったんだ!」

 はるの表情がコロコロ変わるのをヒメルは見ていた。はるの言動は、とても暖かで心から、はるが主で良かったと思えていた。
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