小説内容2

□第三話
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「どうして」

 ナツミから、その言葉がもれた。
 みんなも何も言えずに、その場に佇んでいる。

 みんなの前に立っていたのは死んだはずのライだった。
 ライは、うつろな視線を自分たちに向けている。
 生きていたころのような光りが目になかった。
 
「お父様!」

 ライに向かって駆け出そうとするナツミをスイルがとめた。
 イアルたちもライを見据えているが動こうとしない。
 はるとシズカ、まひろは困惑したままその場に立っていた。

「どうして止めるの!?」
「まって…様子がおかしい」
「だって!!」

 ナツミが大きな声をあげた瞬間ライが顔をあげた。
 スカルがピクリと反応すると闇の力を増大させ剣を手にしていた。
 気付くとリークもいつの間にか戦闘モードになっている。
 緑木の周囲には葉が漂っている。
 瞳が濃く緑色に輝いた。

「くるよ」

 緑木が言い終えた瞬間ライが消えスカルに斬りかかっていた。
 スカルは持っていた剣で応戦しライの攻撃を防いだ。
 力で押しきろうとするライに後ろからリークが行くが、それを軽やかによけ緑木の追撃も簡単にかわした。

「ライに時間とられてる場合じゃないな…」

 スカルがリークと緑木に言った。
 2人もうなずく。

「あぁ…そうだな、スカル。
 おい!緑木!!」
「リーク、わかったよ」

 リークの言いたいことを理解すると緑木は了解の意を示した。
 それを確認するとリークは口元に笑みを浮かべて全員に言い放った。

「全員いても戦いにくいだけだっ!
 ここは俺と緑木でやる!
 他の奴らは先に行け!!」
「じゃあ、頼む。
 ライだからって手を抜くなよ」
「死なないようにね、リーク」

 スカルとスイルがそう言い残し他のみんなと共に走り出す中はるは、その場に1人立っていた。
 緑木がそれに気づき、はるに行くように叫ぶがはるは動かない。

(ここで…また逃げてしまったら…)

 はるは人間界に行く前のことを思い出していた。
 リークと緑木が命を懸けて自分を守ろうとしてくれたことを…今は、また状況が違うけれど、はるにはあの頃と今が重なってしょうがなかった。
 あの頃みたいに非力ではない。
 2人の援護ならプロテクションをはるなり出来るはずだ。
 もう後悔しないためにと、はるはここに残ることを決めた。

「なつみん…」
「はいね、はるちゃん。
 分かってるよ。
 ムチャしないようにね」
「張り切りすぎてバカやるなよ!」
「もー…シズカさんったら。
 わかってるもん」

 シズカの茶化しに、はるはむくれてみせるがそれもすぐに笑みとなり行くように促した。
 ナツミとシズカはうなずきあって先への扉をあけた。

 みんなが先に行ったのを確認すると、はるは向き直りリークと緑木の前にプロテクションをはった。
 そのおかげでライの闇の力を2人がうけることはなかった。
 2人が驚いて、はるのほうをみた。

「はる、何で行かなかったんだ!」
「そうだよ!
 みんなといた方が安全なのに…」

 ライに力をあびせながら2人は声を上げていた。
 はるは強い決意を目に秘め自分の周囲に葉を漂わせた。
 はるの後ろにパートナーであるヒメルが現れる。
 ヒメルの周囲にはムチが蠢きライへとムチを打ち始めた。

「私は、もうあの頃みたいに後悔したくないっ!
 あまり戦えないけれど…でも、出来ることをするの!」

 はるは、そう言うと幾つもの葉をライに向けてとばしていた。
 緑木が困りながらも苦笑する。

「なんだか頼もしくなっちゃったね。
 僕たちも負けてらんない。
 神聖樹が僕にくれた力を使おうかな」
「神聖樹?」
「そう。僕が目覚めて、みんなと光の世界に行くとき神聖樹が僕に力をくれたんだ」

 緑木はそう言って神聖樹によって得た力を手にためこんだ。
 最初は、いきなり光の球が自分に吸い込まれていって驚いたが、だんだんとそれがなんだったのかを理解した。
 けれど、緑木はまだ神聖樹から得た力を全て知っているわけではなかった。

「精霊たち、はるちゃんを守って…はるちゃんが僕たちをプロテクションで守ってくれているように僕たちも、はるちゃんを命をかけて守ろうか」
「そうだなっ!」
 
 3人は、襲いかかってくるライの力を防ぐとライへの攻撃を開始した。
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