小説内容2

□第三話
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 チハヤは水晶越しにミナミをみていた。
 ずいぶんとミナミは大きくなったと思う。
 でも、少しやつれていてミナミに多くの迷惑をかけてしまったんだと思った。

「チハヤッ!必ずたすけるからね…」
「ミナミ…」

 ミナミに声をかけようとしたところで神の1人であるロイトが口を開いた。
 冷たい眼差しを僕にむけながら…。

「そろそろ、また眠らせる…。
 これで少しは、お前も奴らと戦う心構えができたというものだろう」
「奴らって…」

 奴らが誰をさしているのかわからない。
 ミナミの顔はよく見えなかったがミナミの声はどこまでも静かで怖いぐらいに感情のない声音で僕に言ってきた。

「チハヤには関係ないから気にしなくてもいいよ。
 もうすぐでここから出してあげられるから、もう少しだけ待っててね…」

 ミナミが顔をあげて驚いた。
 ミナミの顔にはなんの表情もなかった。
 こんな表情、今までみたことがない。
 ミナミをここまで追い込んでしまったのは、紛れもなくこの僕だろう。
 ミナミの顔には何の感情もないけれど瞳をじっと見つめるとミナミの目は悲しげに揺れていた。
 酷い苦しみと辛さにたえているような…そんな目をしていた。
 僕のせいで…そう思い、もうやめてくれと言おうとしたところで抗えない深い眠りに襲われた。

「く…そ…、ロイト…」

 薄れゆく視界の中でとらえたのはミナミの切なげな顔とその後ろで人形のようなロイトが立っている姿だった。
 そしてまた深い眠りにおちていった。

 チハヤが眠りにつくとミナミは覚悟を決めた顔でロイトをみていた。
 もうその様子に迷いはなかった。
 確実にチハヤを助ける道を選んだようだった。
 どんなに胸が痛もうが信頼されなくなってしまおうが、もはやそんなことは関係ない。

「覚悟が決まったようだな。
 奴らは今、この世界に向かってきている。
 リバル様の元にたどり着くのはアノ女だけでいい。
 ほかの奴らを足止めしろ」
「了解」

 ミナミの表情が冷たくなる。
 チハヤを助けるために…やっと、ここまで来たのだと思いながらミナミは移動した。


 その頃、ナツミたちは神天世界についていた。
 始めてみるその場所に、みんなは警戒しながら辺りを見回した。
 澄んだ空気が漂っている。

「ここが…神天世界」
「なんか居づらいとこだな」

 シズカの言葉にはるはうなずく。
 変に空気の澄んだこの世界がシズカにとっては気分が悪いようで眉間にシワをよせた。
 広い空間の中に1つの扉が待ちかまえるようにそびえ立っている。
 とても大きく圧倒されそうだ。
 スイルが苦笑する。

「へぇ…随分と優しいつくりになってるね」

 スイルは周りに他の扉がないことから、リバルの仕業だろうと予測した。
 出迎えの準備は整っているということだろう。
 この扉の先がどうであれ取りあえず、みんなは扉のほうに向かって歩き出した。
 スカルやリークたちは警戒を解かず周囲を警戒している。

「まっひー、大丈夫?」

 ナツミの問いにまひろは硬い表情で笑う。
 まひろもひどく緊張しているようだった。
 早く済ませなければと思いつつ扉の前で立ち止まる。

「さて、だれがあける?」

 リークがニッと笑って言うと、みんなは沈黙した。
 緑木がスッと前にでると扉に手をやる。

「僕が開ける。
 だから、みんなは何があってもいいように準備して。
 僕は、みんなの力を信じる」

 開けたら何が起こるかわからない…もしかしたら、すぐに攻撃される可能性がある。
 そんな中、緑木はみんなを信じ自分が開けることを選んだ。
 リークは肩をすくめつつも任せろと真剣な表情でいった。
 はるが緑木がケガしないようにと周りにプロテクションをはる。

「じゃあ、いくよ!」

 みんなの力が一斉に放出される。
 ナツミも黒妖剣を手に開けられていくはずの扉を見据えた。
 しかし、扉はピクリとも動かない。
 緑木が困惑した顔をみんなに向ける。

「開かない…」
「緑木に力がないのかもね。
 貸してみなよ」

 スイルが力を消して緑木にかわり扉の取っ手に手をかける。
 そして、開けようとして力をかけるがおしても引いてもビクともしない。
 ナツミは、そんな様子をみてリバルの言葉を思い出す。
 リバルは私がくることを待っているというような感じで言ってきた。
 おそらくリバルの狙いは自分だ。
 ナツミは、スイルのそばによって離れるように言った。

「なつみん?」

 はるが不思議そうな声をあげるがナツミは答えず扉に手をやった。
 扉に手をふれると神の紋章が浮かび上がり音を立てて開き始めた。
 みんなは呆気にとられながらも、攻撃態勢をとった。
 扉が開くと同時にまばゆい光が辺りを包む。
 みんなは目をくらませ見えにくくなった前方に目をこらした。
 ぼんやりとしていた視界が少しずつ元に戻っていく。

 そして、ナツミは戻った視界で驚きの光景を目にした。
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