小説内容2

□第二話
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 そのころ、ライはロイトを睨み据えていた。
 ロイトの顔には昔のような表情というものがなかった。
 目は人形のように冷たく光がなかった。
 ロイトはライをみると自分の周りに神の力を漂わせた。
 ロイトの力は恐ろしいくらいの力で、スカルたちは顔をゆがめた。
 スイルはバカにしたように口に笑みを浮かべている。

「さて…俺は命令を実行する」
「ロイト…貴様」

 ライがロイトに嫌悪感を示す。
 ロイトの言葉は戦う意思を示していた。
 ライたちも攻撃態勢に入り鞘から剣を抜き放った。
 一触即発という事態に陥っている中、誰かが走ってくる音がした。
 足音の方を向くとライの顔に焦りが浮かんだ。

「ナツミ…」
「父様!!」

 ナツミを目にとめた途端ロイトは顔に不気味な笑みを浮かべた。
 スイルがそれに気づくとナツミに走り寄り自分の後ろにかくまった。

「そんなことで守れるとでも…?スイル」

 スッとロイトの目が光の城の方に向けられる。
 みんなもつられるようにして見るとキリク、シズカ、はるが走ってきていた。
 ロイトがキリクたちに手を向ける。

「まずい!!リーク!緑木!」

 2人にはるの危険を知らせるようにスカルが叫ぶと2人は急いで、はるのもとへ走り出した。
 ライがキリクの名前を叫んで危険を知らせる。
 キリクがライの声に気が付いてシズカとはるに目を向ける。

「お2人とも、お下がりください!!」

 2人がキリクの言葉に同時に「えっ?」と声をあげる。

「遅いな…守れまい」

 ロイトの手から膨大な力が放たれ呆気にとられているはるたちにむかっていった。
 スカルたちは間に合いそうになかった。
 キリクがはるとシズカを守ろうとした瞬間、はるがいきなり前にでた。
 
「んっ?なにをするきだ…あの女」
「はるっ!!」

 シズカがはるに叫ぶがはるはシズカに視線を向けることなく言い放った。

「なんにもできないと思ったら大間違いなんだから!!
 プロテクション!!」

 はるは、すばやくプロテクションを自分たちの前にはりめぐらせ大地の力を使って厚い土壁を作った。
 ロイトが放った力は少しずつ土壁を削ったもののかき消えてしまった。
 キリクは驚いたようにはるをみる。

「はる様!?」
「私だって、なんにもできないわけじゃないんだよっ!!
 キリクさんには私たちよりも守らないといけない人がいるんだから!」
「そうそう、うちらをナメたらいかんよ」
「はい!」

 キリクが返事をしたのを目にとめるとシズカはキリクにブイサインをした。
 シズカの後ろに海原の力でつくられた水龍が姿を現した。

「どうよ?」
「シズカさん、すご〜い!!」
「だろ?んじゃ、いくよ!!」

 シズカがロイトに向かって手をあげると水龍はとびロイトに向かって激突した。
 ロイトはなんともないようだったが水にのまれた途端、水の中で風も吹き荒れ初めロイトの体を傷つけ始めた。

「お〜!シズカさんの力、パワーアップしてる」

 はるがキラキラと目を輝かせてシズカの力をみていた。

「シズカ、あれは?」

 スカルたちが、はるのもとにつきロイトを襲っている力をみてスカルはシズカに聞いた。

「海原の力と特殊能力をまぜた」
「そうか…だが」

 スカルがそういったときロイトは力を自分の周りで爆発させるようにしてシズカの力をけし力の渦から逃れた。
 ちょうどその時イアルとまひろとミナミもかけつけ全員がそろった。
 ロイトはバカにしたように笑う。

「貴様ら姫君どもがリバル様の心をかき乱す。
 俺がこの手でお前たちを殺す…」

 大気がビリビリとふるえだし地面が揺らぎ始めた。
 地面には亀裂がはしり溝があちこちにできた。
 ロイトがみんなの目の前から消えたと思うと緑木の前に移動していた。
 緑木が力を使おうとした瞬間、ロイトの回し蹴りが緑木の腹をえぐるようにして出され、緑木は後ろへとふきとんだ。
 遥か後ろの岩に叩きつけられ緑木はぐったりとしてしまった。

「緑木!!」
「人の心配をしているなんてな…」
「くそっ!!」

 リークの周囲に闇の力が漂うなりロイトの力とぶつかり合った。
 はるにはプロテクションをはる時間がなかった。
 緑木に繰り出されたロイトの回し蹴りを目でとらえることができなかった。
 ロイトはとても俊敏で目で追うのは困難なほどだ。
 スカルはシズカに少し離れているように言うと剣を持つなりリークの加勢に向かった。

「兄さん」

 スイルは戦いに行くスカルをみてナツミへと向き直った。
 ナツミの顔が不安げに揺らぐ。

「兄さんの助けをしてくるよ。
 ナツミ、危なくなったらすぐに逃げて…」
「いかないで」

 スイルがいなくなってしまうのではないかという不安にかられた。
 スイルは優しく微笑みナツミに不意にキスをして白銀の粒子を纏いロイトに向かっていった。

「そろそろ力がたまるな」

 ライはためている力が十分になりそうなのを確認すると言った。
 ナツミは止めることができなかった。
 ロイトの圧倒的な力の前でふきとばされていくスイルたちを見ていることしかできなかった。

 足がすくんでなかなか動けない。
 ミナミもまひろも援護しながら戦い始めているというのに。
 怖さで体が硬直している中、心の中に闇が話しかけてきた。

(かわれ、俺が殺す…)
「できない。私が…私がやらないといけない。
 だからっ…」
 

 指を鳴らし黒妖剣を手にとる。
 ふるえながらもロイトに向かって走り出した。
 ロイトが向かってくるナツミをみて笑う。
 ライとスイルがナツミに気をとられているとロイトは2人を薙ぎ払い地上に叩きつけた。
 ロイトも剣を取り出すと黒妖剣と自分の剣を交えた。

「貴様のようなものが、その剣を扱うことはできん」

 力で押し負けナツミは後ろの岩へと打ち付けられた。
 血が喉から口にまでのぼってきたがグッとおさえ込んだ。
 打ち付けられた背中が激しく痛む。
 ライが悲鳴に似た叫び声をあげた。

「姫君!!」

 キリクが走り寄ろうとするのをナツミは手で制した。
 顔をあげると鋭い目つきでロイトを睨んだ。
 ナツミの周りが特殊能力で凍っていく。

「だれも…殺させはしない。
 ロイト、たとえあなたが神であろうと…私はっ!!」

 黒妖剣をかまえなおし再び宙に浮くロイトに斬りかかった。
 2人の激しい剣の攻防が始まり下で見ているシズカたちに血の雨が降りかかった。

「おい!うちらもやるぞ!」
「でも、どうやって…」

 シズカの言葉にはるが泣きそうになりながら聞いた。
 シズカもグッと唇をかみしめて必死に考えている。
 そんな時だった。
 緑木が声をはりあげた。

「ねぇ!血の匂いに誘われて多くのレヴァントがきた!!」
「こんな時に…」

 まひろが苦々しくつぶやく。
 ロイトの相手もしなければならないのにレヴァントの相手までしないといけないなんて…そんな余裕はない。

「仕方ない」

 シズカがすぐにどうするかを考え指示を出した。
 自分の考えが正しいかなんてわからなかった。
 今は思いついたことをやっていくしかない。

「うちらはレヴァントを片付ける方にまわって数人はナツミの援護にまわって」
「俺は援護にまわる」

 ライがそういうとミナミは1度目を閉じてから私もそうすると告げた。
 ライの視線がミナミを1度とらえるが小さく息をついてうなずいた。
 そしてスイルもライたちと共に行くと言い他の者は約500匹と思われるレヴァントの一掃へと向かった。
 
 シズカの周囲に風の渦が多くうずまきはじめると、それはかまいたちへと変わりレヴァントを切り刻んでいった。
 まひろは術で、スカル、リークは闇の力で緑木、はるは大地の力を使ってレヴァントを殺していく。
 一体一体の力は弱くても多く集まれば厄介でしかない。
 イアルとキリクは息の合った剣技でレヴァントを斬り殺していく。

「我が主のために!!!」

 2人の瞳が赤紫色に輝き力を最大に発揮した。
 

 ライはナツミに加勢するように闇の力で作り出した槍をロイトにむけて、いくつもとばした。
 ミナミも手に力をためる。
 そしてライと同じように力をとばした。
 ただロイトに向けではなくライに向かって…。
 スイルはライにとんでいくその力に気づき声をかけたが遅かった。
 振り向きざまライの左腹部に深々とミナミが作った槍が刺さった。

「くっ…貴様!」
「あっ…ごめんね」

 ミナミは謝りつつも、わずかに微笑んで見せた。

「お父様っ!!」

 ライの異変に気付いたナツミが血だらけの顔をライに向けて叫ぶ。
 ライはナツミの声に気づいて娘に向けて穏やかな笑みを浮かべて大丈夫だと言った。
 ロイトの笑みは深くなりミナミに目を向ける。
 ライはロイトを忌々しげに見つめたのだった。
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