小説内容2
□第四話
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ナツミ、シズカ、はるの3人が強くなろうときめたことをまひろとミナミに話すと2人は自分の力をまず知るべきだと言った。
大方知っているつもりではいたが、やはりしっかりと知るべきらしい。
まひろが世界ごとの力のタイプを教えてくれた。
「この世界は5つに分かれているよね?
世界ごとに特化しているものがあるの。
力ごとのタイプとしては戦闘、防御、回復の3つに分かれていて闇は防御はないよ。
そのまま防御することなく戦闘する。
いわば、これが戦闘タイプ。
光は防御が得意、まれに戦闘タイプの人もいるんだよ」
「それで、大地の世界は防御、回復。
白銀は戦闘。
海原は戦闘、防御」
まひろとミナミの言葉にナツミたち3人は自分の世界のことを考えた。
「私は戦えないの?」
自分の世界のタイプを聞いて、はるは悲しげに目を伏せた。
みんなは、それぞれ戦うことができる。
大地の世界の人でも特殊能力は世界の力とは別だから戦う力を持った人もいる。
私もみんなと同じように戦えるようになりたい。
そう思ったとき、ふと幼馴染の顔が浮かんだ。
そして血だらけになりながら自分を守るように戦っていた姿が浮かんで歯がゆくなった。
その時の私も守られているだけしかできなかった。
2人が血を流して必死で戦っているのに…。
自分を追いつめるようにして責めているとミナミがはるを呼んだ。
「はるちゃん、はるちゃんも戦える。
これは力のタイプでしかない。
大地は大地なりに植物の力をかりて戦うことができる!!
私のように…」
「本当!?」
「うん!だから自分を責めないで」
「ありがとう」とはるは言って嬉しそうに微笑んだ。
そうしてライたちを外に呼び出し力について示すことになった。
「力…か」
ライはそういって自分の周囲に三日月のような形をした刃をいくつか出現させた。
紫色に不気味に輝いている。
そして、ライが目でうながすとスカルもリークも闇の力を出現させた。
ライがそれをみてから3人に向きなおる。
「これが闇の力だ。
力はどんな形にでも変えることができる。
スイルのように目にみえるぐらいの粒子を出現させることもできるしな」
「僕のね…」
スイルの周りにはたくさんの白銀の粒子が取り巻いた。
スイルは粒子を自在に操って見せて微笑んだ。
「スイルの力が1番私たちにとって危険なんだけどね」
「試そうか?」
ミナミの言葉をきいてスイルがミナミを挑発するように言った。
ミナミは自分の指の間に葉をはさんだ。
その葉は人間界に行ったときにライにむけてとばした側面が刃のようになっている葉だった。
そんな2人を止めることなくライはミナミの力について解説し始めた。
「ミナミの葉は大地の力を集めてできたものだ。
葉に力を流し込みそれを刃にかえている。
流し込む力によって闇と対抗できるかできないかが決まる」
「ラ、ライさん!!そんなことよりも2人を止めないと!!」
「えっ…あぁ」
はるが青ざめた顔で言うと面倒くさそうにため息をついた。
はるは慌てているのに対しライは全く慌てることなく2人がいがみ合っているのを見るとイアルとキリクを呼び寄せた。
「イアル、キリク、2人を止めろ」
「はい」
2人が頭をさげたと思うと瞬時に、その場からいなくなりスイルのミナミのもとへ行くなり2人の前に立ちはだかった。
スイルが鬱陶しそうに前に立つキリクをみる。
「どいてくれる?キリク」
「いえ、ライ様の命令ですので…」
「イアル、私のジャマしないで」
「その葉をけしてくださるのなら…」
少しの間、お互いを睨み合っていたがイアルとキリクが引かないとわかると2人は、それぞれの力をおさめた。
その様子をみていたはるはというと安心したように大げさといえるほどの胸のなでおろし方をした。
リークはクスクスと笑ってはるの前に来た。
「な、なんで笑うの!?」
「ん?だってさ、そこまで心配することでもないからさ…つい、面白くなって」
「2人が怪我したら大変だから…」
「え?その時のためにお前の力がいるんだろ?」
リークの言葉にはるは最初、意味が分かっていないようだったがそのうちに理解しうなずいた。
とても嬉しそうな顔をして…。
リークと話していると妖精たちがそばに寄ってきた。
「大地の世界の姫君!!
こんなところでお会いできるなんて!」
「あなたたちは?」
「えっと…光の世界の城のまわりにある木々の妖精です」
前にも妖精が城の庭園にいたのを思い出した。
おそらくここの周りにいる妖精たちも同じように大地の世界から光の世界におくられたのだろう。
妖精が教えてくれる。
「光の世界は大地の世界と共存することのできる世界なんです」
はるは納得しながらうなずいていた。
妖精が言うには光の世界の光をあびると木々たちは成長ができるらしい。
光の世界の光は他世界よりも光の力が強いため植物にとっては最適だということだ。
大地の世界には、その光が必要なため世界同士で助け合っているらしい。
「教えてくれて、ありがとう」
「いえ、我らも姫君の力になりますから!!」
そういって妖精たちは森へと帰っていった。
はるの中に自分も戦えるかもしれないという感情が芽生え始めた。
はるが嬉しそうにしている様子をリークは切なげに見ていた。
シズカは自分の特殊能力である風に海原の力を使っていた。
少量の水なら風にのせてとばすことができるほどになり、そばについてみていたスカルも感心したようだった。
「これ、なにかにつかえないかな?」
「…風にまきあげた水を空中で刃に変えることができればいいんだが」
スカルの言葉にシズカはスカルに向き直り、すごくキラキラした顔で、それだっ!と叫んだ。
スカルには何がそれなのかわからなかったがシズカが意気込んでいるのをみると顔がほころんだ。
「空中で水を水の刃に変える。
そうしたら風の刃と一緒に下にいる敵に向かって放つ…よし!」
頭の中のイメージが終わるとシズカは風を目の前で渦巻くようにした。
そして自分の力で発生させた風に海原の力を使って、その刃に水を送り込む。
「オーケー!いくよ!!」
その声掛けと共に水をとりまいた風の渦は空へと飛びあがった。
そうして水と風がはじけ水滴がいくつかに集まると大きな槍のようなものに変貌した。
大きな水槍の近くには風が渦巻いている。
「で、できた!!」
「すごいな…」
シズカは得意げな顔をスカルに向けてから手を下にあおった。
すると、それと同時に空中に浮いていた大きな水槍と風が下に向かって降ってきた。
いくつかの水槍は地面に突き刺さり風の渦は地面を深く掘った。
「成功だ!!」
「よくやったな、シズカ」
「もちろん!!」
嬉しそうに微笑むシズカをみてスカルから笑顔が消えた。
そしてスカルはシズカに近づくといきなり抱きしめた。
シズカは驚いてもがいたがスカルの力にはかなわない。
「シズカ…お前が強くなっていくのは嬉しい。
でも、無茶をするのは俺の役目だから…危ないことには手を出さないで」
「そんなん…イヤだよ」
「どうして?」
スカルは悲しげに言った。
シズカの頭を自分の肩に引き寄せシズカの髪にそっと自分の顔をうずめた。
「理由は…言えない」
「シズカ…」
「ていうか!!みんな見るからやめて!!」
「ごめん…」
スカルが自分を解放した。
シズカは自分の右手を左腕にやった。
スカルはとても悲しげだった。
たとえようのないほど…みているこっちが心をしめつけられるほどの表情で…。
でも、言えない。
うちはやっと自分の力を理解して少しでも扱えるようになったんだ。
…これで今度こそスカルを苦しめなくてすむ。
もうスカルが、うちのために傷つかなくてすむ。
そう思ったら、つい顔がゆるんでしまったのだ。
スカルはその時表情がくもった。
スカルの気持ち、なんとなくわかる。
うちがスカルを守りたいと思うようにスカルも同じ気持ちなのだろう。
でも、うちだって守られてばかりはイヤなんだ。
だから、スカル…ごめん…。
心の中でスカルに謝った。
直接は言えない。
言ってしまうのはいけないような気がした。
もしかしたら、今以上にスカルを傷つけてしまうかもしれないから…。
傷つけないと言っておいて精神的に傷つけているから、きっと矛盾してしまっているかもしれない。
でも命の危険に及ぶことではない…今のまま自分が弱いままでいったら、いつかスカルが自分のためにと命を落とすような気がして仕方なかった。
そんな風に思っていると強い力を感じて、そちらの方に目を向けた。
力の中心にはナツミがいた。