番外編内容

□未来へ…
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 そのころ、カルトとスノンは力の規定を管理するもののところにきていた。
 両手を縄で後ろに縛られ、両膝を床につけていた。

「カルト、スノン…これはどういうことなのだ」
「申し訳ございません…ですが、スイルは誰よりも冷酷にございます。
 誰が相手であれ、いとわず殺せるでしょう」

 カルトはスイルのもつ闇の心のことを管理者に説明した。
 スイルが助かるなら…スノンも同じように思っていた。

「しかし力は力…どれだけ冷酷であろうとも力がなければ意味がない」
「どうか、スイルだけは…。
 私の命を差し出してもかまいません」
「スノン、これは定めなのだ。例外はない」

 スノンの言葉は管理者に届くことはなかった。
 瞬きをすることなくスノンは絶望に満ちた顔でうつむく。
 カルトとスノンの訴えは虚しく王族たちは結論をだす。

「王族をだましていた罪として、スイルの命を絶つことを命じる」

 スノンがはじかれたように顔をあげる。

「おやめください!!それだけは…!
 あの子は、まだ子ども…まだ未来のある子なのです!」
「スイルを手にかけるなどスノンも俺もできない!」

 カルトの言葉に管理者が落ち着くように言う。
 カルトもスノンも嫌な予感しかしなかった。

「なにも、お前たちに殺せと申しているのではない。
 王族が直々に出向いて殺すと言っているのだ」

 カルトもスノンも落胆した。
 スイルは、どうやっても助からない。
 スノンは一か八か、その思いで闇の力を使おうとした…だが、それはカルトによって止められる。
 スノンは堪え切れず、嗚咽をもらしながら泣き始めた。

「お前たちの息子と別れる最期の時間をくれてやろう。
 そんなに猶予はない。
 有意義に使うのだな…」

 そうして、カルトとスノンは解放された。
 スノンは泣きながら家に向かって歩いた。

「どうして止めたのよ!!
 カルトはスイルが死んでもいいというの!?」
「違う!!スノン、よく聞くんだ…。
 スイルを逃がすんだ」

 カルトは、言い聞かせるようにスノンに言った。
 スイルが自分の力で逃げられるように…そう思って力を一時的にあげたのだ。
 今がその時だ。

「俺たちはできるだけ冷たくスイルに言うんだ…。
 スイルにもうここにいれないと思わせるために」
「…わかったわ。急ぎましょう」

 スノンはすぐに切り替えた。
 スイルを救うたった1つの方法…。
 彼を未来へ送り出すために。


 そして、家につくなりスイルを追い出し始めた。
 スカルが必死に自分たちに訴えてくる。

「なんで、スイルが追い出されなきゃいけないんだ!
 スイルを守ってよ!!」
「だまりなさい、スカル」
「これは、王族からの命令なんだ」

 できるだけ冷たく言い放つ。
 言っている自分たちの胸が引き裂かれるような感じがした。
 スイルの酷く傷ついた顔にスノンは何もいえなくなりそうになる…でも、ここにいたらスイルは確実に殺される。
 スノンは必死の思いでスイルを外に出した。
 荒々しい呼吸を繰り返す。

「スノン…」

 スノンは力なくその場に膝をついた。
 とめていた涙があふれて何度もスイルの名を呼ぶ。
 
 そして、カルトと共にスカルにスイルをたくした。
 スカルならスイルを逃がしてくれる…そう信じて。


 王族が、家の呼び鈴をならした。
 でようとした瞬間、王族が騒がしくなる。
 スカルとスイルを見つけてしまったらしい。
 スノンは強い眼差しをカルトに向ける。

「私は、彼らのために…力をつくすわ」
「スノン、それがお前の望みなんだな…」
「えぇ…カルト、ごめんなさいね。
 最期まであなたに迷惑をかけてしまう」
「いいんだ。俺もスノンと同じ思いだから」

 2人は手を繋ぎ強く握りあってから離した。
 子どもたちに未来を与えるために…2人は扉をあける。

「お前たち、なぜ子どもたちを!!」

 王族が気づいて声をあげる。
 カルトもスノンも答えることなく力を使った。
 瞳を赤紫色に輝かせ、王族の首をはねる。
 血をあびながら、スノンは王族をにらみつける。

「私の子どもたちを殺させはしない!!」

 カルトと共に王族をできるだけひきつける。
 少人数ならスカルでも戦えると知っていたから。
 カルトとスノンは特殊能力を使って王族を殺していく。
 あたりは血の海に成り果てていた。
 スカルたちの方に目をやると、スカルと目があった。
 しかし、それは一瞬ですぐに戦いに専念する。

(あなたたちに未来を…)

 スノンは自分の出せるだけの力をだした。
 しかし、王族も弱くはない。
 お互いがお互いに連携して、カルトとスノンに攻撃を仕掛けてきた。
 王族の力はスノンの心臓を貫いた。
 力をよけたカルトもスノンに気をとられ、後ろから心臓を一突きにされた。

「くっ…俺の最期の力でお前たちを殺すことぐらい造作もない…」
「カルト…きさま!!」
「スノン…」

 襲い掛かってくる王族に背を向け、倒れているスノンに寄っていく。
 スノンの体は輝きはじめ灰になろうとしていた。

「カ…ルト…。あの子…たちは」
「大丈夫だ…」
「そう…」

 スノンは最期に安心したように穏やかに笑った。
 カルトも、そんなスノンと共に微笑んで命を燃やす最期の力を放った。




 そこには、だれも生きて存在していなかった。
 あるのは風にふかれなくなっていく灰と服のみで…他には何もなかった。



 どうか、子どもたちが幸せな未来を得られますように…

 
 未来へ…未来へ…羽ばたいていけますように…

 そんなカルトとスノンのささやかな願いは2人の灰と共に空に舞った…
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