番外編内容
□未来へ…
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闇の世界の王族の補佐の家に双子が生まれようとしていた…。
父になるカルトは妻のスノンの手を握る。
もう、あと少しで子どもが誕生する。
そんな喜びがカルトとスノンの胸中を覆い尽くしていた。
幸せな思い出が、また1つ増えると思うと待ち遠しかった。
しかし、双子の子どもが生まれたときカルトとスノンは言葉を失っていた。
先に生まれた兄の方は闇の世界の力の規定の遥かに上をいっているが弟の方は、規定よりも低い力だった。
「カルト…これは」
スノンが不安げに声をあげる。
闇の世界には力の規定があって生まれて2日後に検査がある。
規定以下の力しか持っていないようだったら、闇の世界を即刻追放される。
「スノン、やるしかない」
双子が生まれるとわかったとき、2人の力が均等になるとは思っていなかった。
けれど、まさかこれほどまでに違いが出るとは予想だにしていなかった。
とにかく、スノンと話していた力を増幅させるというものを行うことに決めた。
力の増幅は持続は出来ない。
それでも、この双子の弟が自分で逃げられるようになるまでは…という思いでいた。
そして、カルトとスノンは双子の弟に力を一時的にしろ増幅させることが出来た。
検査も問題ないということで通り、まずは一段落した。
「兄をスカル、弟をスイルにしよう」
カルトがスノンに双子の名前をいう。
スノンは、嬉しそうに2人の幼い我が子を抱きながらうなずいた。
スイルに施した力の増幅が、いつ切れてしまうか気が気ではなかったが、それでも幸せな日々を送っていた。
ある時、カルトとスノンはスイルのあることに気付いていた。
スイルは、自分の関心あるもの以外にはとても冷たい瞳を向ける。
スカルに比べて遥かに冷酷な存在で、だれよりも闇らしかった。
そして、カルトとスノンはスイルがスカルに闇の力をとられた分、スイルはスカルの闇の心を奪ったのだと思った。
スカルは、確かに闇だったが闇らしいと思えないことが多々あった。
だから、スイルがやりすぎてしまわないか心配でスカルにスイルのことを頼んでいた。
「スカル、スイルのことちゃんとみていてあげて…。
あなたは、兄だし双子だから1番スイルのことを分かってあげられると思うの」
スノンがそういうと、スカルは力強くうなずいた。
スカルは、そういうこともあってか物静かで真面目なかんじに育っていった。
スイルはというと、あまり周りとは関わらず他人とあまり深い関係を築かなかった。
ただ、家族には心を許し信頼していた。
兄であるスカルには、周りにはみせない笑顔を向ける。
「兄さん」
「どうした?スイル」
「僕は、ずっと兄さんといれるよね?」
スイルはスカルの手をとって言う。
いきなりどうしたのだろう…スカルは、そんな風に思いながらも安心させられるようにスイルに微笑んで見せる。
「なにがあったって、僕たちは将来一緒に闇の王の補佐をするんだ。
僕たちは双子なんだから…」
「そうだよね、兄さん。
僕たちは一卵性の双子…もともと1つの存在」
スイルがニッコリと微笑む。
その笑みは、どこか怖いものだった。
「離れないもんね…約束、兄さん」
スイルの言葉は、まるで自分を縛る鎖のように感じる。
自分は、スイルから闇の力を半分奪った…スイルは僕から闇の心を半分奪った。
スイルの心には1人半分の闇の心が巣食っている。
スカルは、スイルが闇の心にのまれてしまわないか心配だった。
そして、約束をしてから数年が経った。
「スイル、お前に婚約の話が来ている」
カルサは、そういってスイルに言った。
それは王族からの話だった。
スカルは、あまり闇らしくないということで最も闇らしいスイルにその話が持ち出されていた。
「そっか…」
「どうしたの?スイル」
スノンは元気のないスイルに聞いた。
スイルは少し言いにくそうに母の顔を見てから口に出し始めた。
「母様…僕スカルと離れちゃうの?」
「スイルは、本当にスカルのことが好きなのね。
大丈夫よ」
「よかったぁ」
嬉しそうに笑うスイルをみながら、スノンはスイルの力が規定のギリギリだということを感じていた。
スイルとの話しを終えスノンはカルトを連れ出していた。
スノンの不安そうな顔を見て、カルトはその理由を悟りため息をつく。
「カルト…スイルの力は、もう限界よ」
「そうか…」
「私は、あの子に生きてほしいの…」
スノンが目に涙をためながら、カルトに訴える。
カルトはそんなスノンを抱きしめて何度もうなずく。
「俺もだよ。スノン…俺たちが2人を守ろう」
「えぇ…カルト」
そして、スイルの力は規定以下になってしまった。
つまり生まれたときのもとの力に戻ってしまったのだ。
「カルトとスノンはいるかっ!?」
王族の者がスイルの力のことを知りカルトとスノンに事情をきくために城へと連れ出した。
「父様!母様!」
スイルが連れていかれる父と母を呼ぶ。
スカルもふるえながら父と母をみつつ追いかけそうになるスイルを止めている。
「スイル、大丈夫よ…。
スカル頼むわね」
「スカル、しっかりスイルをみているんだぞ」
そういい残しカルトとスノンは縄で縛られ連れていかれた。
王族が去っていく中、1人の王族がスイルの方に目をやった。
「闇の恥め…」
「きさま!!」
スカルが怒りをあらわにすると王族は鼻で笑って扉を思い切り閉めた。
スカルは扉を睨み続けていたが、スイルのことを思い出してスイルに目をやった。
スイルは、うつむいてうなだれていた。
「スイル!あんな奴の言うこと気にするな」
「でも…兄さん」
「スイル…」
スカルは、それ以上何も言えなくなってスイルのそばにいた。