番外編内容

□親の気持ち
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 リークの母であるシュナは、ナツミたちがヴァンパイアの世界に戻ってきたことを知り3人のいる光の世界に来ていた。

「相変わらず明るい世界ね〜」

 そういってシュナは、ふぅと息を吐いた。
 こんな明るい世界にライたちが、よくいれるものだと感心してしまう。
 体がだるくて仕方ない…が、ライに話もあるためそんなことを言ってはいられない。

 ライのいる部屋に向かっている途中、1人の女の子にあった。
 その子は、どこかで見たことのある子だと考え記憶の中を探した。
 そして、それが大地の世界の姫君であるはるだと思い出す。
 思わずシュナは声をかけていた。

「はるちゃん?」

 名前をよんでみると、はるは驚いたような顔をする。
 まぁ、覚えていないのも無理ないかと思っていると後ろから息子がはるちゃんの名前を呼んで近づいてきた。
 あいかわらず、長い髪を結っている。
 切ってしまおうか…と思っていると私に気が付いてゲッと声を漏らす。
 親の顔をみて、そんな声をだすなんて失礼だと思った。

 それから、ライの話題を出したときはるちゃんの顔がくもった。
 その様子からして、記憶を取り戻したということが分かった。
 ライを許せない…そう思っているのだろうか。
 でも、ライの気持ちも汲み取ってほしいという思いがあった。
 ライの気持ちを知っているからこその気持ちだった。

 そして、私ははるちゃんと2人で話した。
 女同士の話に男であるリークには入ってきてもらっては困るから、そこらへんに待たせた。
 …というのは、半分冗談でリークははるちゃんを大切に思っているから私の話に水をさしてくると思ったからだ。
 はるちゃんには、理解してもらいたくて少し強引に理解させようとしてしまったけれど、はるちゃんはちゃんとわかってくれた。
 

 はるちゃんは、ライのもとへ向かったようだった。
 私もライに用事があったから、はるちゃんが出ていったのを見計らって部屋に入った。

「ラーイ」
「シュナ…なんのようだ」

 半ば驚きつつライは、そういった。
 驚くのも無理はない…光の世界にわざわざ闇が来るなんて、よほどのことがない限りはない。

「はるちゃん、あなたを理解してくれたみたいでよかったわね」

 
 シュナの言葉にライがピクリと反応する。 
 目をすがめて何をしたのかと顔の表情だけできいてくる。
 口があるのだから話せばいいのに…。
 ライは昔から変わっていない。

「そんな顔しないで。別になにかしたとかじゃない」
「そうか…」
「リークは、しっかりやってる?」
「あぁ。助けられてるよ」

 ライの顔がわずかに緩む。
 バカやってライに迷惑をかけていそうで心配になる。
 こうやって、心配になるのも親だからだろう。
 どんな子どもだったとしても我が子に変わりはないのだから…。

「姫君は、どう?」

 同じ親として、ライの娘のナツミが気になった。
 彼女は、混血だ。
 生まれながらに強い力を持っている。
 これから先、彼女が歩む道は決して平坦なものではないとシュナは思っていた。

「変わらない…カエデに似てきた」

 
 ライは静かに言う。
 カエデさんは、心優しいヴァンパイアだった。
 光の世界のお姫様にふさわしい方だと納得ができる。

「カエデさんに似てきたこと不満なの?」

 表情の晴れないライにきくと、ライは少し考えてから口を開いた。

「違う…。でも、心配なんだ。
 俺は、絶対にナツミを守る…。
 だけど、もし俺のいないところでナツミがカエデのようにいなくなってしまったら…」

 大切な自分の娘なんだとライは言う。
 同じ親だからライの気持ちも分からないでもないが、彼女にとっても親であるライは大切な親だろう。
 カエデさんに似ているというなら、おそらく自分よりもみんなを…と優先するだろう。
 それなのに、命をおとしてまで自分を守られたら彼女は彼女で苦しむことになるだろう。
 自分のせいで…と責める姿が浮かんでくる。

「ライ、あなたの気持ちもわかるけど…姫君の気持ちも考えてあげなければ」

 シュナの言わんとしていることがわかっているようでライは眉根をひそめる。
 ライにはライの気持ちがある。
 そんなライを見てシュナは肩をすくめて言う。

「親って大変ね…」
「ほんとだな」

 ライが苦笑する。
 シュナはわざとらしく頬を膨らませて愚痴をこぼした。

「子どもは親の気持ちなんか理解してくれないし」
「なかなか難しいだろうな」

 少しの沈黙がおりた。
 シュナは、思い出したように声をあげるとライに目を向けた。

「ライ、たまには闇の世界に帰ってきなさいよ」
「時間があればな」
「みんな、あなたが帰ってくるのを待ってる」

 シュナはクスクス笑いながら言う。
 俺が帰ってこなくて、やきもきしているのはおそらくシュナの夫のクロウだろう。
 クロウはきっちりしているから…。

「そういえば、リークは昔クロウに似ていたが今はシュナに似てる」
「えっ?どこが?」
「おっせかいなところ」
「ひどいじゃない」

 シュナは目を丸くしていった。
 ライは笑いながら冗談だという。
 リークは最初はクロウのように堅苦しさがあり闇という感じがしたが今では、人の気持ちをよく考えるシュナのようになっている。
 シュナは正直闇という感じがしないが、リークもそうだ。

「それじゃあ、そろそろ行くわね」
「あぁ…お前には迷惑をかける」
「今更でしょ」

 そういって、シュナは帰っていく。
 シュナには助けられることが多々あった。
 感謝してもしきれない。


 シュナが部屋をでると、そこにはリークがいた。

 
「どうしたの?」
「母さん、はるとライのことありがとな」

 てれくさそうにいうリークにシュナは呆気にとられたが、すぐに顔を横にふった。
 そして、真剣な顔になってシュナはリークに言う。

「ちゃんと、主を守りなさいよ。
 ライも姫君も…はるちゃんも、あなたの手で守りなさい」
「わかってる」
「だけど…」

 シュナは、そういってリークに寄るとしゃがむように言った。
 リークは、不思議な顔をしつつしゃがんだ。
 リークがしゃがむとシュナは息子の頭を撫でた。

「生き急いではだめよ…。
 命あってこそできることなのだから」
「俺は生き急いだりしない…。
 守るものがあるから」

 
 その言葉にシュナは安心したように微笑む。
 なんだかんだ言ってリークも立派に成長してくれた。

 
 それから、シュナはリークと別れ闇の世界に戻っていく。



 息子の無事と幸福を願いながら…。

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