番外編内容

□友だち
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 それから2日後、宿泊研修が行われた。

 朝からシズカは呆れていた。
 ナツミとはるは、緊張のあまりか朝から全く話していないという状況だった。

 バスの中では、シズカを真ん中にナツミとはるが両脇に座っていた。

 ナツミは、ものすごく緊張していた。
 全然話したことがなく、どんな話題をだしたらいいのかと思ってしまう。
 いきなり話しかけてしまったらビックリしてしまうし…。
 だからと言って、よろしくという言葉もないままも良くないと思っていた。
 シズカにもグループに誘ってくれたお礼を言わないといけないと思うのだが、私はなれた相手にしかフレンドリーに話しかけるができない。
 こんな自分が嫌になって、ため息をついた。

 一方、はるも酷く脈打つ心臓を持てあましていた。
 人見知りをするのはもちろん、どんな話をきり出そうかとナツミと同じようなことを悩んでいた。
 隣にいるシズカは、いつもと変わらずにしているがナツミはすごく悩んでいるような顔をしている。

 すると、いきなりシズカが自分の方を向いてきた。
 そして、声をかけてくる。

「ねぇ、はる」
「は、はい!」

 動揺がおもいっきりでてしまった。
 シズカの顔が呆気にとられている。
 やってしまった…と思いシズカから顔をそらした。

 シズカは驚いていた。
 ちょっと声をかけただけで、こんなにビビられるとは思わなかった。
 どうしたらいいのかと、シズカも悩んでしま
いもう苦笑するしかなかった。

 それから、ほどなくして宿泊場所についた。
 ついてすぐはグループごとに、それぞれの泊まる部屋に行った。

 結局ナツミもはるも考えすぎて話をきりだせていなかった。
 さすがにこのまま…というのも気が引けたのでシズカは自己紹介をしようと思った。

「なぁ、自己紹介しようか」
「自己紹介?」

 ナツミが不思議そうな顔をして自分を見てくる。
 それはあたりまえか…とも思う。
 クラスでの自己紹介は済ませているのに、なぜもう1回自己紹介をしなければならないとふつうは思う。
 けど、うちが考えたのは普通の自己紹介じゃない。

「ただ自己紹介するんじゃない。
 クラスのみんなの前では言えなかったことってあるだろ?
 そういう秘密を打ち明ける…みたいなさ」

 ナツミとはるは少し考えるしぐさをした。
 それから、ナツミとはるが同時に承諾してくれた。
 2人とも一緒に考えていたわけではないのに息がピッタリだった。
 シズカはそれに驚いてしまっていた。

「じゃあ、ナツミから」
「う、うん」

 ナツミは緊張した面持ちで2人を見て考えた。
 何を話せばいいだろう…私の秘密といえば暗い過去とかだろうか。
 それとも、7歳以前の記憶がないことでも話せばいいのだろうか…。
 でも、そんなことして雰囲気を悪くしてしまったら、どうしようかとさえ思う。
 でも、思いつくものもなく2人が待っているのをみていたら急がなければ思い記憶のことを話すことにした。

「私には…7歳以前の記憶が全くないの」

 ナツミの言葉に2人が驚いた声をあげる。
 やはり、このような話題はまずかっただろうかと思っていると、はるが驚くべきことを口にした。

「私も…」

 はるの言葉にナツミとシズカが顔を見合わせる。

「じゃあ、うちらってみんな7歳前の記憶がないってこと?」
「うちらって、シズカさんも?」

 はるが聞くとシズカはうなずいた。
 ナツミとはるは、もう驚きすぎて声も出ない。

 ナツミたちは全員、7歳前からの記憶がなかった。
 それぞれ記憶がないことには不安があった。
 だけど、その不安が3人に繋がりを与えてくれた。
 悪いことばかりではないのだと思った。

 3人の遠かった心の距離が一気に近づいた瞬間だった。
 
 それから、3日間3人はよく話し友人と呼べる仲までになった。
 シズカも最初は2人のことをウジウジした奴だと思っていたが、ナツミはなれてくると意外と行動派ではるはマイペースで天然なのだとわかった。


 これから、ヴァンパイアになるなど3人は微塵も思っていなかった。
 
 3人が、出会ったことも偶然ではないということを3人は知るよしもなく過ごしていくことになる。
 
 この時から、運命の歯車はゆっくりと動き出していた。
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