小説内容

□第四話
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 次の日、まひろは光の城へ荷物を持ってきた。
 女子からの提案で一緒に過ごそうということになっていた。

 まひろのカバンからでてきた書物の量にはるは驚き目をみはりシズカはすごいと言っていた。
 ライも、ものすごい量にただ驚きの言葉を漏らした。

「半端ないな」
「これぐらいやらないと術者って肩書があるぐらいですから」
「すごいね〜!!まひろさん、頭いいんだね!」
「お前よりは絶対いいだろ。
 てか一緒にしたら失礼だ!」

 はるはシズカの言葉に酷いと言ってむくれつつも書物の山に目をやって、ただただ感嘆の声をあげる。
 まひろは自分が住まう部屋となった場所を整理し始めていた。
 本棚にはそれぞれ術の違いで区別をつけ、それに関連するものを詰めていった。

「これ…?」

 はるが指さしたのは禁術とかかれた書物だった。
 触れてはならないと思い、手を出すことなくまひろに聞いてみた。
 まひろは、それを見てこれねと言って笑った。

「これは禁術を制御するための術だよ。
 使われてはならないと言われている禁術だけど、1冊なくなっちゃってるの。
 闇の禁術書なんだけど…1番危ない力を秘めている物だから見つけ出さないと…」

 まひろの言葉にキリクが顔をくもらせた。
 ミナミがそんなキリクに気が付き聞いてみた。
 闇の禁術書をしっているかどうか…。
 

「ねぇ、キリクだっけ?」
「はい」
「キリクは禁術書を知ってる?」

 その問いにキリクは戸惑った。
 なんとこたえるべきか…ライとイアルは言わなくていいと言った。
 そう思っているとイアルがキリクの目の前にでた。

「イアル?」
「俺たちは禁術書などしらない。
 禁術書を扱っているのは王族かその術者の一族だけだ。
 俺たちは世界と世界の“狭間にある空間に道をつくる一族”だから関係ない」

 ミナミ以外は納得したようにうなずいた。
 でもミナミだけはじっとキリクを見据えた。
 そんなキリクの前にイアルが出るとミナミを見据え返した。
 お互い引きそうにないのを感じると、まひろとはるが仲裁に入った。

「2人ともそこまでに」
「イアルさん、これ以上はっ」

 ミナミはまひろに促されるようにして目線をそらし、イアルは鞘にかけていた手を離した。
 2人から殺気が消え、また和やかな雰囲気が戻ってきた。

「イアル…」

 心配そうにキリクがイアルに声をかけるとイアルは表情を変えることなく気にすることはないと告げた。
 そんなイアルに申し訳なさをおぼえつつキリクはうつむいた。

 イアルは役目に全て捧げているような人なんだ。
 感情を表にださず自分の身の内に秘め役目をまっとうする…そんな感じだった。
 それに比べ自分は動揺を隠すこともできず感情に左右されやすい。
 そんなキリクは少しイアルが羨ましかった。

 ミナミはキリクが闇の禁術書を持っているだろうと予想していた。
 だが、証拠がないうえにイアルがかばうときた。
 そう簡単にあけわたしてはもらえないだろう。
 そうなると力を使わなければならない。
 それはなるべくならさけたいことだ。
 力を使ったところで、まひろの術におさえつけられておしまいだ。
 術者というのは弱く感じる部分もあるが実際はそうではない。
 術の使い方によっては相手を完璧に死にいたらしめることができる。

 ミナミがどうしようか悩んでいるとシズカが不思議そうにミナミの顔をのぞいた。
 驚いたミナミはつい大声をあげてしまった。

 寝坊して、その部屋に入ってきたナツミは入った瞬間、聞こえた大声につい身構えた。
 しかしそれがなんでもないとわかると大きなあくびをした。

「あっ、なつみん。おはよう」
「おはよ、はる〜。…そういえば、スカル」

 壁に寄りかかって目を閉じていたスカルは目を開けるとナツミに目をやった。

「どうした?」
「昨日は、ありがとう。
 もう大丈夫、取り乱してごめんなさい」
「落ち着いたならいい」

 キョロキョロとあたりをみまわしスイルの姿がないことに気づくとスカルに聞いた。
 スカルはわからないと首をふり目を閉じた。
 ナツミは少し残念そうにしながら待つことにした。

 しばらくすると、そこにいなかったスイル、リークが部屋に入ってきた。
 スイルは目が覚めているようだったがリークは眠そうにあくびをしつつ部屋に入ってきた。

「ふわぁ〜…おっはよ〜!!」

 挨拶してくるリークにスカルが目をあけてみると頭に手をやった。

「リーク、寝ぐせ…」
「へっ!?髪縛ってるから目立たないと思ったんだけどなぁ…」

 寝ぐせのついた髪をチョイチョイと指ではじくようにいじった。
 
 そして、ふとまひろが息を吸った。
 それに気が付いたミナミが疑問そうな顔をした。
 まひろは、そんなミナミに気づきながらも口を開いた。

「あのね、聞いてほしいことがあるの!!」
「なんだ、まひろ?」

 ライがなにかとまひろに目を向ける。
 他のみんなも気になっているようだ。

「もう少しで夜会が開催されるんです!!
 夜会は今回父が主催で…。
 ですから父もライ様や他の王・姫の方々にも参加していただきたいと言っていて…。
 参加していただきたいんです」
「夜会…」

 ライは少し考えるように周りの者に目を向けた。
 ナツミ・シズカ・はるには夜会がなんなのかわからなかった。
 パーティーのようなものだとは、なんとなく想像できるが詳しいことは分からなかった。
 スイルがナツミのそばに寄って優しげな笑みを浮かべる。

「ナツミたちは初めてだったね…。
 夜会というのは貴族以上の者が参加する定期的なパーティーで今回は光の世界でやるんだ。
 君たちは参加するべきだろうね。
 みんなに帰ってきたことを知らせるためにも」
「まぁ、そうだな。
 姫さんたちは、ただ楽しめばいい!
 堅苦しい話は俺たちで済ませとくから!」

 リークがニッと笑う。
 そんなリークを押しやってスイルがナツミの前に出た。

「なにがあっても僕がナツミを守るから安心して」

 そんなやり取りをみていたライは、やれやれと肩をすくめた。
 スカルに目を向けると小さくうなずかれライも参加することを決めた。

 そうして、私たちは夜会に参加することになった。
 初めての夜会に参加することに緊張しつつ楽しみだと思った。
 ただ私の中の闇が言ったのだ。
 気を付けろ…と。
 そんな言葉に警戒心を覚えつつも周りにみんながいると思えば不安も和らいでいく気がした。
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