小説内容

□第二話
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 スイルはナツミに優しい微笑みを絶やさずにナツミの手をとった。
 そんなスイルの手をみてからナツミは真剣な顔をする。

「私、スイルに守られているだけはイヤ!」

 その言葉にスイルは弾かれたように目を見開いた。
 そして、微笑みを消してほんの少し怒りの表情を浮かべた。
 そんなスイルの顔に動じることなくナツミはスイルに思いを告げた。

「私だって戦う!!スイルやみんなに任せっぱなしにはしない!」

 私も…と言葉を続けようとしたところでナツミの言葉をスイルはやんわりと遮った。

「僕は自分の命にかえても君を守る…これは僕の意志だから…」
「スイル、私は…」
「いいナツミ?俺のことは俺が決める」

 スイルが真剣なんだとわかった。
 だったら、私は守られているだけしかできないのかと思うとやるせなさが心に残った。
 話しが終わるとミナミが、みんなに向かって言う。

「あのさぁ、そろそろ寝てもいい?
 疲れたんだけど…」
「あっ、そうだよね!!
 なつみん、ミナミさんの部屋ってあいてるところでいいよね?」

 はるが確認するようにナツミに問いかけた。
 ナツミは、はるにうなずいて見せる。

「じゃあ、案内するよ」
「よろしくね、はるちゃん」

 2人は仲良く話しながら、部屋をでていった。
 ミナミが歩きながらはるに話しかける。

「それにしても、ずいぶんこっちの世界になれたね」
「うん。あっ、ミナミさんは記憶をなくしていないんだよね?」
「そうだよ。私は、はるちゃんたちを守るっていうことが目的で向こうの世界に行ってたから」
「ありがとう、ミナミさん」

 ミナミは、はるの言葉に照れ臭そうに笑った。
 ほんの少し悲しげな表情を浮かべるミナミのことが、はるは気になった。
 ミナミには、もしかしたら私たちには言えない何かがあるのかもしれない…そんな風に感じた。

「ミナミさん?」
「えっ?…あぁ、ごめんね。
 少し疲れているだけ、大丈夫」

 ミナミの顔から、すぐに悲しげな表情が消えた。
 言えないなら無理に言わせてはいけない、そう思って、はるはそれ以上何も言うことなく部屋に案内した。
 ふと、はるが立ち止まった。

「どうしたの?はるちゃん」
「ねぇ、大神様ってどんな人かな?」

 はるの問いにミナミは表情をくもらせた。
 けれど、すぐにもとにもどして歩みを進める。
 はるも追いかけるように歩みを進めた。
 ミナミが静かに口を開く。

「大神の名前をリバル…リバル・レーヴェンっていう。
 すごく冷酷な人…でも、たった1人には心を開いている」
「たった1人…だれ?」
「さぁね。でも、すぐそばにいるよ。
 それに私たち、とんでもない子と友だちなんだから!」

 ミナミは、そういって案内してくれたことに礼を言って部屋に入っていった。
 とんでもない子と友だちって…と、はるは考え出した。
 友だちというとミナミさんやシズカさん、それになつみん、その中にいるということなのか。
 ただ、もう1つ…。
 ライの瞳の色についても気になる。
 闇のリークやスカルは、力を使ったり血に飢えたりすると瞳は赤紫色になる。
 スカルさんの瞳の色のことはシズカさんが言っていたから間違いはない。
 同じ闇の世界の人なのに、なぜライさんだけ…。

 はるは、そんなことを考えながら自分の部屋に向かった。
 
 部屋に入ったミナミは大きくため息をついていた。
 そして、なにかの気配を感じて暗闇に目を凝らした。

「なんのよう」

 ミナミは、瞳を青紫色に輝かせる。
 
「ミナミ、俺のこと好き勝手言うな。
 あいつに、まだ俺のことを思い出させるわけにはいかない」

 暗闇からでてきた人をみてミナミは“リバル”といった。
 リバルは口元に笑みを浮かべてミナミの前に瞬時に移動した。

「ライはどうでもいい。
 でも、あいつを守れ。でないと…奴を殺す」

 ミナミは目を見開いて唇をかみしめると葉をリバルへととばした。
 そこには、もうリバルの姿はなかった。
 ミナミは辛そうに眉根をよせ、その場に座り込んだ。
 そして、床を何度も殴った。
 自分の手に痛みがはしることもおかまいなしに涙を流しながら。

「ごめんね。なっち、シズカ、はるちゃん…ごめんね」

 嗚咽を漏らしながらミナミは腕に顔をうずめた。
 自分にはしなければならないことがある。
 でも、そのために大切な人たちも傷つけることになる。

 その日は、ベッドで寝ることなくずっとそのままでいた。


 神天世界でリバルは口元に笑みを浮かべた。
 とても楽しそうに、ゲームを楽しむかのように…。
 
 ただ、水晶にうつった者をみるとその笑みは消え切なそうに目を伏せた。

「大きく…なったな」

 そんなリバルを見ていた神3人がリバルに声をかけた。
 幼い子が自分よりも遥かに大きい大ガマをもたげ面倒くさそうに話し始めた。

「ねぇ、リバル様ぁ。もう言っちゃえば?
 てか、思い出させちゃえばいいじゃん!!
 リバル様の大切な人でしょ」

 その子を長髪の女が「シオル」と呼んだ。
 幼くピンクの髪をもつ神の1人の名前をシオル・リーベという。
 シオルはむくれると長髪の女に向かって舌をだし「テナのけち!」といった。
 長髪のおとなしい雰囲気をもつ神の1人をテナ・シェロン。
 テナはため息をついた。

「はぁ…ロイトもなんか言ってください」

 無口な青年はシオルに目をむける。
 空っぽのような存在の彼の名はロイト・ラウム。
 シオルになんの感情もない言葉を投げかける。

「リバル様にそんな口きくな」

 シオルはフンと鼻をならすばかり…そんなシオルに大神であるリバルは、それはできないと悲しそうに微笑んで見せるだけだった。
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