小説内容

□第四話
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 スカルはスイルを見ると鞘から剣を抜いた。
 スイルが望むなら、自分の命を差し出してもいい…けれど、自分以外のものの命をおびやかすというなら見過ごすわけにはいかない。
 闇の力を剣にまとわせてスイルを赤紫色の瞳で見た。
 スイルはそんな様子をみてクスクス笑う。

「兄さんは気が早いよね。そんなに目をギラつかせて、僕と戦うき満々って感じだ」
「俺は守らなければならない。
 俺とお前のために多くの命を消させるわけにはいかないんだ」

 その言葉にスイルはあざ笑うかのように瞳を白銀へと変えた。
 スイルの目つきが変わり剣を抜く。

「それは兄さんの責任だ。俺は…悪くない。
 俺をこんな風にしたのはお前らだ!!!」

 スイルが駆けだすのと同時にスカルも駆け出し気づいたときには辺りに金属音が響いていた。
 火花が散り剣の重なりはスピードを増していく。

 そんな様子を見ているだけではたえられずシズカが力を使おうとした時だった。
 ナツミがシズカの前に出た。
 シズカはこうなるであろうことは予想していたため動揺することなく手に特殊能力の風の力をためこんだ。
 手の中で疾風の刃が吹き荒れている。

「どいて…スカルを助ける」
「スイルを敵だというなら、私はしずをとめる」
「あいつは、どうみたって敵なんだよ!」

 シズカは、そう言い放つと手にためこんだ疾風の刃をナツミに放った。

「なつみん!!」

 はるが叫ぶと疾風の刃は凍り砕け散った。
 はるが呆然としているとナツミが氷の刃を手に走り出した。
 ナツミとシズカの特殊能力がぶつかりあい大気がふるえた。
 気づくとはるは走り出していた。
 2人の間に入り大地の力で2人を縛り上げた。

 
「もう、やめて…」
「ふざけんな、はる!!うちはスカルを!」
「こんな力で私を縛れると思ったら大間違い!」

 ナツミを縛る木の蔓がだんだんと変色し始めた。
 闇の力が増し蔓がほどけた。
 そんなナツミをみてリークが焦ったようにナツミの前に来た。

 
「姫君!だめだ!スカルがしなければいけないことなんだ!!」
「なんで…」
「あの2人の問題だからだ…。スカルとスイルがしなければならない“けじめ”なんだよ!」

 リークがナツミに言った瞬間、激しい力と力のぶつかり合いで爆発が起きた。
 爆発した方をみるとスカルとスイルが息を荒く繰り返しながら立っていた。
 2人からは血がしたたり落ち、見る間に土を赤く染めていった。
 ナツミから血の気が引き、スイルの名前を呼んだ。

「スイル!!」
「なつみん、行っちゃだめ!」

 はるは、無理だと分かりつつも大地の力を使ってナツミをその場に縛りとどめる。
  

「私はなつみんとシズカさんに戦ってほしくない。
 2人を失いたくないの」
「はる…でも、スイルが!」

 スカルとスイルの傷は、すぐに治る。
 けれど出血している量が半端なかった。
 血にまみれたスイルがナツミの視線に気づいたように、目を向けてから怒りに顔がゆがむ。

「ナツミ、なんで縛られてるの…きさま!」

 とらえられているナツミをみたスイルの瞳は色濃く輝きだした。
 ナツミを縛っているのがはるだとわかるとはるに手を向けた。
 スカルは額から流れ出る血が右目に入り視界が悪くなっていた。
 スイルの動きに気づくのが遅れ止めることができなかった。

「くそ…リーク!」

 リークは急いで、はるを抱き上げるとその場から飛び退いた。
 白銀の粒子は1度リークを追いかけようとしたがナツミのもとに行くと木の蔓を切り消えた。

「大丈夫…ナツミ」
「スイル、もうやめよ…」
「そういうわけにもいかないんだ」

 そういうと剣をかまえなおしスカルに斬りかかった。
 再び剣の重なる音が響き始めた。
 スイルはスカルの剣を受け流しスカルに突きを繰り出すがスカルもそれをかわす。

「めんどうな…さっさと終わらせるぞ」

 今まで黙ってみていたライだが、ついに我慢の限界となり闇の刃を出現させた。
 闇の刃はいくつも浮かび上がると回転を始めた。

「さぁ…終わらせるか」

 ライの瞳が金色に輝く…。
 闇の刃は高速で回転しながらスイルに向かって飛んでいく。
 スイルは、そんなライの攻撃に一拍おくれて気が付いた。

「スイル!」

 
 スカルは咄嗟にスイルをかばうように前に出るとライの攻撃を剣で弾き片膝を地面につけた。
 スイルは呆然としつつ肩で息をするスカルに目をやった。

『兄さん』
『スイルになにかあったら僕が守るから…』

 そんな幼いころの会話が頭の中によぎってスイルは頭をおさえた。
 苛立たしげに頭を振ってからスカルを睨む。

「なんで俺をかばった?善人ぶりも甚だしい!!
 今になって兄貴面するなよ」

 スカルに剣先をむけて腹立たしくスイルは叫ぶ。
 スカルに復讐をするんだ…だから、闇の力を捨てて白銀の力を手に入れたのに…。
 何をいまさら…。
 スイルの目に迷いが生じていることにはるとシズカは気づいた。
 はるがリークに目を向けて問う。

「リーク。スイルさんの憎しみが何でできているかわかる?」
「えっ?…あぁ、見ようと思えば」
「じゃあ、教えて!」

 はるに、そういわれて不思議に思いながらもリークはスイルの憎しみがいったい何なのかをみた。
 そして、リークは驚きで言葉を失ったのだった。

 
 スカルは立ち上がるとスイルから休みなくだされる剣を防いでいた。
 なぜ、スイルをかばったのかわからない。
 でも、咄嗟の行動だった。
 スイルの目が怒りに濁っている…でも、それは戸惑いに揺れていた。

 ナツミはスイルに向かって走り出していた。
 スイルにこれ以上戦ってほしくない…だって、スイルは本当は…。

 ナツミがスイルのもとに向かったことに気づいたライは止めるようにイアルとキリクに言った。
 イアルとキリクが急いでナツミを追いかけるがスイルの力の波が2人を弾き飛ばす。
 剣を交えつつスイルはナツミに気が付いてナツミに目を向けた。

「ナツミ!?」

 
 スイルが驚いて手が緩んだ。
 その隙をついてスカルはスイルの腹部を刺し貫いた。
 スイルは多量の血を吐いたがすぐに剣をふるってスカルを自分から遠ざけた。
 スカルが剣を引き抜くと血が噴き出した。

「スイル…」
「騒がしくすると怒るから…」
「でも!」
「心配しないで。言ったでしょ?
 俺は強いと…俺は強くもないのに強いなんて言わない」

 スイルは刺された部分の傷が癒えたのを確認するとナツミに微笑んでからドラゴンに姿をかえた。
 長い尾でスカルを弾き飛ばした。

 スカルは壁にぶつかる前に素早く竜に姿を変え空へと舞いあがった。
 そして、激しい攻防が始まった。

「このままだと…」

 はるが、スカルとスイルを見上げながらつぶやいた。
 さっきリークに教えてもらったスイルの憎しみの正体をスカルに教えることなく終わってしまう。
 はるが悩んでいるとシズカが駆けだしていた。

 
「お願い!スカル!もうやめて!!」

 気づけば、シズカはスカルに叫んでいた。
 2人の血の雨が降りそそぐ。
 ナツミはスイルに聞くように声をだしていた。

「スイル…本当にたった1人の兄を殺してしまっていいの…ねぇ、スイル」

 2匹の獣はそれぞれに咆哮をあげた。
 そして、憎悪のこもった声でスイルは言う。

「貴様らになにがわかる?俺の苦しみなど…誰も理解はできない!
 たとえナツミでも…。
 見ただろう?俺の過去を…。
 たとえ、兄であっても俺を捨てた!
 父も母も…家族など俺はいらない!」

 その叫びをナツミたちはスイルの今まで心にたまった悲しみだと思わずにはいられなかった。
 だれにも言えずつもりにつもった悲しみは憎しみに姿を変えてしまったのだと…。

 スイルから白銀の粒子がとびかった。
 スイルの血が空から降ってくる。
 血がナツミの頬を流れ落ちていく。
 ナツミは悲しげにその血をぬぐった。
 白銀の粒子が全員に襲い掛かる。

「やるしかないっ!」

 はるは、プロテクションを全体に張り白銀の粒子を防いだ。
 しかし粒子の力は強くプロテクションがきえかかりだした。
 それを見かねたナツミは、はるのほうに向いた。
 自分にしかできないことをしてくると…。
 はるは、ナツミを止めることはできないとわかっていた。
 
 気づくとシズカもそばにきていた。

「手伝うよ。危ないと思うけどナツミがするっていうんだもんな」

 シズカは両手に力をためこむと粒子の渦へと力をとばした。
 風がうねり粒子の渦の中心に穴をあけた。
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