小説内容
□第二話
1ページ/2ページ
そのころ、はるたちは森の中でナツミを探していた。
粒子がとんできた方向を見ると、この近くにスイルがいるはずだとライが冷静に言った。
スカルは申し訳ないと、みんなに頭を下げ言った。
「俺が、あの時スイルを逃がしたから」
ライとリークは、それを知っているようで目を背けた。
シズカがどういうことなのかスカルに尋ねるとスカルは思い出すようにして目をつむって過去のことを話し始めた。
ちょうどそのとき、スイルもナツミに過去のことを話し始めていた。
スカルとスイルは王の補佐をする家の双子として生まれた。
王の補佐は貴族よりも位が高く純血種がとりしまっている。
今から200年前までは王族以上、王の補佐含むものは力が弱ければ闇の世界では追放するという定めがあった。
力が全てと考えていた闇ならではのことだった。
そして、王の補佐をする一族に生まれた双子は力が偏って生まれていた。
スカルは闇としての大きな力を…スイルは定めの規定よりも低い力をもって生まれた。
それを知った双子の両親である父・カルト、母・スノンは、すぐに周りに気づかれないようにスイルの力を増幅させた。
力を増幅させるのは持続できない。
しかし、自分の力で逃れられるようになるまで…とカルトとスノンは考えていた。
それから数年、スイルにとって幸せな時間が流れていた。
力を増幅させられているということを周りに悟られず許嫁もできた。
でも、幸せはずっとは続かなかった。
増幅されていた力は日に日に効力を失い規定以下の力になってしまった。
すぐに王家の一族のものが気づき双子の兄弟の両親を拘束して事情をききだすということになった。
その日は、許嫁に会うという大切な日だった。
しかし、両親が拘束されて中止となってしまった。
カルトとスノンは帰ってくるなりスイルを追い出し始めた。
幸せは一瞬にして消えた。
許嫁も結局、破棄となりなくなってしまった。
父のカルトが冷たく言い放つ。
『でていけ』
『なんで…』
信じられなかった。
優しかった父も母も闇の定めに従うように決めてしまったようだった。
スイルは苦しくて辛かった。
スカルが両親をとめていた。
でも、そんな言葉さえ届かないようだった。
『私たちは定めに背いた。次に王族の者が来たとき、あなたがいれば殺される。
さぁ、でていって!!』
おいだされるようにして、スイルは外にだされた。
スイルには絶望しかなかった。
「スイル…」
話しを聞いていたナツミはスイルの名前を呼ぶだけで他にかける言葉が見当たらなかった。
「ほんと酷い話だよね」
スイルは、悲しげにつぶやいた。
ふるえる手を、もう片方の手でおさえつけた。
そのころ、スカルはスイルの知りえないことを話そうとしていた。
「俺は本当のことを知っている。
スイルは知らないかもしれないがスイルは殺されることになっていたんだ。
王族をだましていた罪として…。
でも、俺の両親はうなずくことができなかった。
とにかく命令はくだされた。
その事実に変わりはなくて、俺の両親は王族が殺しに来る少しの間を使ってスイルを逃がすことにしたんだ。
俺に望みをたくして…」
スカルは、遠くをみつめていった。
スイルが外に出されスカルは自分の体を引き離されたようだった。
しかし、すぐに母が泣き崩れるのを見た瞬間両親の言葉は嘘だと知った。
母は泣きながら、何度もスイルの名前を呼んでいた。
『スイル…スイル…』
『母さん…』
スカルが声をかけるとスノンは泣きながら言ってきた。
『スカル…すぐに王族の人がスイルを殺しに来る。
ここにいないと知ったら探し出すでしょう』
『スカル、お前に他世界へと道をつなぐ力をこめた石をやる。
これを、スイルに渡せ。
できるだけ遠くへ行って使うように!!』
父がそういって、しっかりと俺の手に石を渡してきた。
父と母は、すぐにスカルにスイルを追うように言って外にだした。
これがスカルしか知らない両親の姿だった。
スカルは必死にスイルを探した。
スイルは、すぐに見つかった。
屋敷の横にある小屋にスイルはうずくまっていた。
『スイル!』
『兄…さん。もう僕は死ぬのかな…どうして力がないだけで追い出されちゃうのかな…』
スカルは絶望を感じているスイルを立たせると手を引いて走り出した。
大きな岩が多くある道にむかって…だけど、王族が家の玄関の前で気づいたようで追いかけてきた。
スカルが、ふと後ろを向くと父と母が何人かの王族をおさえていた。
一瞬目があった…。
でも立ち止まれない。
スカルはスイルを連れて走り続けた。
『スイル!!』
ずいぶんと王族を引き離したところでスカルはスイルに石を握らせた。
『スイル、ここにいたらお前は殺される!
王族をだましていたから。
本当なら力が弱い奴は生まれた瞬間、家から追い出されるはずなんだ…。
今、こうやって逃がすのも大罪かもしれない。
でも…でも!スイルは生きて!!』
そう言い放つと迫りくる王族の方に目を向けた。
そして、最大の力を放出する。
『ここは、僕が止める…スイル、願って!
他の世界に行くように、その石に強く願って!!』
スイルは言われるがまま、その石に願った。
石はスイルの願いにこたえるように輝きだした。
スカルの力は王族を足止めすることができていた。
しかし、スイルが消える瞬間スカルの力が弾き返されスカルは倒れこんだ。
『兄さん!兄さん!!』
涙で前が、よく見えない。
でも、スカルの右胸に深々と剣が刺されるのを見ていた。
苦しそうにあえぐ兄は無事なのか、それすら確認することができずに他世界へととばされた。
他世界にとばされる中、スイルは思った。
スカルと引き離されるくらいなら殺してほしかったと…。
一卵性として生まれたからだろうか…。
もとは1つの存在だったからなのかは、わからないが離れることなんて考えられなかった。
辛い…それは憎しみに変わっていくことになる。
大きな悲しみは両親の本当の気持ちを知らないスイルにとって激しい憎悪へと変わっていた。
スカルはスイルよりも大きな闇の力を持って生まれた。
力ではスカルよりも劣っていたがスイルはスカルよりも勝るものを持っていた。
それは、強い闇の心だった。
そのせいで憎しみや憎悪は、はかりしれないほどに成長した。
闇の心は、両親もスカルも闇のものたちをも激しく憎んだ。
許せなかった…。
スイルは闇としての冷徹で残酷な心を持っていた。
スイルは、だんだんと周りを見ることもできなくなり憎しみにのまれていった。
次にスカルがスイルに会ったときスイルからは闇の力が感じられなかった。
闇に変わり白銀の力が強く感じられた。
『やぁ、スカル兄さん』
『その力…』
『闇の世界を追放されてすぐに白銀の王に拾われてね。
子どもができなかったようで俺を引き取ってくれたんだ。
闇の力は、ほとんどなくなったけれど、それと引き換えに多大な白銀の力を手に入れたんだ』
スイルは愉快だというように笑った。
でも、目には冷徹な光がうかべられていてスカルをにらみつけていた。
『僕は、もともと兄さんと1つの存在なのに僕を引き離すなんてひどいよね』
『それはっ!!!』
『俺を生かすため?』
スイルの口調が変わった。
僕から俺へと一人称が変わっている。
『きれいごと言うなよ…自分のエゴばかりおしつけるな。
俺の気持ちは兄さんになんかわかるわけない。
楽しみにしていて…必ず殺してあげるから。
ねっ、兄さん…』
そう言い残してスイルはスカルの目の前から消えた。
残されたスカルは、スイルをあんなにまで追いつめてしまったのは自分のせいだと思いながらスイルがいたところを見つめていた。