小説内容

□第一話
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 その頃ちょうど、シズカの部屋の前にスカルは立っていた。
 ノックをしても返事が無いので、普通に扉を開けるとシズカが寝息を立てて眠っていた。

「シズカ…」

 そばに寄って顔をシズカに近づけた。
 スカルの髪がかかってシズカがくすぐったそうに目を開けた。

「おはよう、シズカ」
「ふぇっ?おはよ?」
「っ〜…寝ぼけてる?そんな可愛い顔しないで」

 スカルは顔を赤くして目を背けた。
 久しぶりに見るシズカの寝ぼけたはとても可愛く思えて胸の鼓動を静かにさせるのが大変だった。
 だんだんシズカも目が覚めて来てスカルに気がつくと頬を赤く染上げた。

「な…なんでここにいんだよ…」
「お、お前がなかなか起きてこないから、ライがなれるまで起こしてやれって言ったから。起こしに来た」

 2人してテンパってしまい言葉がしどろもどろになってしまっていた。
でも、シズカは言いにくそうにしながら、ありがとうと言った。
 スカルはそれに驚きつつうれしそうに笑った。



 シズカが起きた頃、はるの部屋にリークはノックもせずに入っていた。
 はるがスヤスヤと寝ているのを見ると自分の瞼も重くなって来て、はるの横でベッドに潜ると眠り始めた。
 眠っていたはるだが、しばらくして自分の身体に何かが絡まっている違和感に目が覚めた。

「何だろ…」

 そう言って眠い目をこすって隣を見るとリークが眠っていて思わず叫びそうになるのをなんとかこらえた。
 よく見るとリボンがほどけている。

「あっ…男の人なのに髪が綺麗…ていれしてるのかな」

 リークの髪をそっとすくい上げた。
 手触りの良いリークの髪の毛が手からこぼれ落ちていく。

「んっ…は、る?」
「あっ…おはよう、リークさん」
「はる〜…あっ、髪の毛ほどけとった?」
「うん」

 リークは起き上がると大きくのびをしてから、髪を一つにまとめ始めた。
 そんなリークを見ながら、はるはどこかぼんやりとした様子で1人でに言った。

「なんだか、ヴァンパイアってみんなかっこいいだね…。
 ライさんにもリークにもスカルさんにもみとれちゃうよっ」

 はるがニコッとしながらリークに言うと、リークは照れたように自分の頭に手をやった。
 しかし、はるはそんな事も気づかずリークの髪は綺麗だとほめた。
 すると、リークは顔を真っ赤にしてはるを止めた。

「あのな、はるは知らんかもしれんけど、闇の奴らは全員なんというか、魅惑のオーラみたいなの出しとっていろんな奴を魅了するんだよ」
「ヘぇ…それで、こんなドキドキするんだね」
「ま、まぁ…」

 すると、はるがいきなりムッとした顔になった。

「な、なに!?」
「それって綺麗な女の人も?」
「さぁ…」

 リークは少しはるが向いてくれた事がうれしかったようで、それからずっとニコニコとご機嫌だった。
 はるはというと少し複雑な心境でいた。

 

 ナツミは夢を見ていた。
 誰かが私の名前を呼んでる。
 優しげに、そして切なそうに…。
 その人は顔がボンヤリしていてはっきりとは見えない。
 だけど、どこかスカルという人に似ている…そんな気がした。

 うなされていると名前を呼ばれ目を覚ました。
 そこにはキリクが心配そうに覗き込んで私を見ていた。

「姫君、大丈夫ですか?」
「うん…夢見てたの」
「そうですか…そういえば、姫君には今から血を飲んでもらいます」

 不満そうな顔をすると、キリクがライ様からです、といってきた。 
 それなら仕方ないというようにうなずいてみせると、キリクは安心したようだった。

「姫君、牙の使い方分かりますか?」
「牙…」
「瞳の色を変えると血管が透けて見えるでしょ?
 そこにさせばいいんです」
「や、やってみるね」
「はい」
 
 長い間、人間界にいたせいかなかなかなじめない。
 瞳の色を変える為に血の事を考えてみるとうまく色を変える事が出来、キリクが言ったように血管の所へさしてみた。
 そうすると、血があふれるように出て来た。
 一瞬戸惑った。血を飲むなんて事は理性が飛んだ時にしかしなかったので不安になった。

「姫君、大丈夫です。安心してください。
 人とは違いますから僕たちは血を糧として生きているんですよ」

 その言葉に、少し安心しつつ不安になりながらも血を飲んだ。
 牙を抜くと血がドロリと垂れナツミは目を見開いた。

「止血…しないとっ…」

 不安そうに言うとキリクは傷に手をやり少し押さえると、傷口が癒えた事をナツミに伝えた。
 震えながらうなずくナツミの頭をなでてから準備をするように伝え部屋を出た。
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