小説内容

□第一話
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 この世界にだって、きりたくてもきれないものがある。
 それが血の繋がりだ。
 そう思った瞬間、また憎しみがふくれあがった。
 気持ちよく眠りについていたのに…と、イラッとしていた。
 兄であるスカルがイヤと思う間もなく思い出される。

「なんであんなクソヤローの事を…」

 双子の弟であるスイルは兄・スカルの事を嫌っていた、嫌うではなく憎しみだった。

「そう言えば、俺の愛しいナツミが帰って来たみたいだ…。
 ナツミの力を感じる…早く迎えにいかないと。
 持っている力がたまり次第すぐに迎えにいくよ」

 そう言ってスイルは水晶の中で力をつけるべく眠った。
 憎しみの中の唯一の希望、それを迎えにいく為に…

 

 ヴァンパイアの世界を、また月明かりが照らそうとしていた。
 ライたちは、いつも通りに起きたのだがナツミとはるとシズカはなかなか起きてこなかった。
 ライたち闇は、夜の方が動きやすいという事で昼派の人たちは今は夜型の生活をしていた。
 リークがのびをしながら言った。

「んー…じゃあ、起こしにいくかぁ」
「なれていないから、体がついて来てないんだろ。
 なれるまで頼む」

 ライが首をすくめて言うとスカルがあくびをしてから、うなずいた。

「了解」
「キリク、悪いがナツミを起こしてくれ。あと血もな」
「おおせのままに」

 そして、リーク、スカル、キリクはそれぞれ起こしにいった。
 イアルが横に来て跪くなりライに疑問をぶつけた。

「いいんですか?ライ様、なぜ」
「さぁ、よくわからない。ただ罪悪感からかもしれないな。
 俺のせいであいつらの生活を狂わせたんだ。
 俺はそばにいては行けない」

 イアルは下唇をかむと、気づいた時胸ぐらをつかんでいた。
 自分がライに仕えると決めた時、ライはこんなに弱くなんかなかった。
 堂々としていた…なのに、今は。

「俺は、そんな弱いライにつかえた覚えは無い」
「イアル…ごめん」
「あんたが、俺を助けてくれた!だから…だから俺は」

 イアルの手がふるえていた、
 ライは、イアルの手の力がゆるむとイアルの頭をなでた。
 イアルの顔が悲痛にゆがむ。

「ちゃんと強くなる。だから待ってくれ」
「…わかりました」

 イアルがうなずくのを、ライは微笑んでみていた。
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