小説内容

□第三話
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 そしてはるも幸せな記憶の中にいた。

 どこにでもありふれた時を生きていた。
 緑の髪の毛の元気な男の子と見た事ある短髪の男の子と一緒に幼い私はいた。
 幼い私は緑髪の子を緑木と呼び短髪の茶髪の子をリークと呼んでいた。
 3人は楽しげに城の中を歩いていた。
 第3者として見ていいるはるもとても懐かしげに見ていた。
 
 場面が変わり城の中にある庭園になった。
 はるのいた大地の世界は、城が植物でなっているが闇の使者が来てもいいように道は整備されている。
整備されているのは、植物が闇を受け付けないからだ。闇が植物に触れれば、拒むかのように植物はその身を枯らす。
 庭園は、花や草などの植物で覆われている。
 はると緑木は、庭園の中に駆けて行った。
 リークも庭園に足を踏み入れたが、足元を見て踏みとどまる。
 リークが踏んだ周辺の植物が枯れてしまっていた。

『リーク〜』

 緑木がリークを呼んだが、リークはその場に踏みとどまったまま動かない。
 そんなリークのもとに緑木が駆け寄ってきてリークの手を引こうとするが、その手はリークの手によって払いのけられてしまった。

『触るな…』

 リークのそんな風に怒る姿をみて緑木は驚いていた。しかし、リークの足元を見て緑木は言葉を失う。
 その時初めて緑木は、闇のせいで植物が枯れるのをみた。リークの顔は、辛そうで緑木は声をかけることができない。
 はるが2人の様子がおかしいことに気づき駆け寄っていった。

『リーク、どうしたの?いこっ』

 はるが手を引こうとするのを緑木が制止する前に、はるはリークの手を握った。
 リークが息をのむ。

 怖い…そんなリークの気持ちが第3者としてみているはるに流れ込んでくる。

『はる…手を離して』

 リークが静かに言うが、はるは手を離さない。リークは強い口調で、もう一度手を離すように言うが、はるはそれでも手を離さなかった。
 はるは、リークの足元を見て植物が枯れていることに気づき、リークが庭園の中に足を踏み入れない理由を理解した。

『リーク、私…絶対になんとかするよ』
『はる…?』
『闇の人たちが植物に触っても枯れないようにしてみせる。だから、そんな顔をしないで…』

 はるは、リークに懇願していた。
何とかして見せる…はるは、心の中で強くそう決めていた。
 はるの真剣な顔を見て、リークが泣きそうな表情をみせる。
 このときリークは、はるに救われたような気がしていた。
 自分のために一生懸命になってくれていると、はるをみればわかる。

 リークは、このときからはるを守ろうと決めていた。今までも、はるが大切だった…幼馴染として…。
 でも、その思いが変わった。
幼馴染として、それは変わらない…けれど、もっと違う意味での大切な人として…。

 植物が枯れたのを見て以来、リークはあまりはるに触れないようになった。
 はるには、それがなぜなのか気になってし仕方なかった。
 緑木は理由を知っているようだったけれど、教えてくれることはなかった。

 ただ、そんなことがあっても私たち幼馴染の仲の良さは変わらなかった。
 3人で、ずっと変わらずにいれると思っていた。

 しかし、そんな幸せは炎と共に掻き消えてしまった。
 目の前には父と母の亡骸が転がっていた。
 そして、獣がはるをじっと見ていた。

『お父さん!お母さん!』

 泣きながらはるは、父と母の身体をゆすった。
 いつもなら優しく名を呼んでくれていた。
 でも、今は反応がない。死んでしまったのだと感じざるおえなかった。
 『はる!』と呼ぶ声がしてそちらの方を向くとリークと緑木が走りよってきていた。
 リークが獣をみて叫ぶ。

『ライ!!我が主よ、お下がりください!!』
『ライ…?』

 ライと言う名前に聞き覚えがあり考えた中にナツミの父の名前が出た。
 しかし、今のライを見るといつものライだとは思えなかった。

『大地の姫君…殺す。大切な我が娘を守る為に』
『チッ…もう言葉も通じないか。緑木!』
 
 リークの叫びに緑木はうなずくと大地の力を使い葉を自由自在に操りライへと飛ばした。

『はる、生きてっ!』

 緑木は、そう言い放つとライとの戦いに専念し始めた。
 はるには悪い予感しかしなかった。
 緑木がまるでゴミのように吹き飛ばされていく。
 ライは緑木に容赦ない力をあびせた。
 その間にリークは、はるの元へ駆け寄った。

『今からはるを人間にして人間界に飛ばす!!
 はるは、死んだら行けない!!』

 『どうして…』と、はるは涙を流しならリークを見つめた。

『ここにいたら、ライに殺されてしまうかもしれない…。少しでも安全な場所に…』

 はるは首を何度も横に振って嫌がった。

『どうして私だけ…』

 そんなはるを見てリークは困ったように笑って『鈍感』といってはるの額を人差し指ではじいた。

『そんなん、俺と緑木がお前を好きだからだよ』

 はるは驚く暇もなかった。
 リークがすぐに術を使いはるから記憶を消していく。
 その反動で少しずつ眠りに誘われていく。
 リークは『ごめんな』と悲しげな顔をして言っていた。
 そして、ライの元へ走っていく。

『許さぬ!!』

 ライの憎しみのこもった声が遠くで聞こえた。けれど、はるにはライが悲しんでいるようにも見えていた。
 うっすらとおちていく瞼を開けて見たものは、緑木が腹をライにをくわえられているところだった。
 そして、バキバキと骨が折れる音と血が吹き出す音がした。『緑木っ!!』と、遠くでリークの声が聞こえた。

 緑木は死んでしまったのだろうか…リークは生きているだろうか。
 しかし、そんな考えも記憶が消えていくのとともに、考えられなくなっていった。

 記憶を見ていたはるは、消えていく映像の中ライに目をやる。
 ライは力にのみこまれていた…けれど、やはりどこか寂しそうで…。

 そんなライを見ながら、はるは少しずつ記憶の波から抜け出していった。

 ナツミ、シズカ、はるの3人はこうして記憶を取り戻していった。
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