小説内容

□第一話
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 そのころ、双子の片割れであるスカルはシズカの部屋の前でノックをしようかためらっていた。
 そして、意を決してノックをしようとした所で扉が開きシズカにぶつかり頭を抑えて座りこんだ。

「いっ…っ〜…」
「え?」

 痛む頭を押さえながら、自分を見下ろしているシズカに目をやった。
 シズカはなぜかフライパンを持っていてそれに思いっきり自分はあたってしまったようだ。
 涙目になりながら、なぜフライパンを持っているのかと聞くと、片手に持つ卵を見せつけてきた。

「んっ」
「卵?」

 卵をじっと見つめてフライパンと交互に見つめているとシズカは小さく息をつき首を左右に振った。
 どうやら分かってない事に不満を覚えたらしい。

「蒸しパンでも作ろうと思ってたんだよ…つっても蒸さないと行けないから間違えたんだよ。
 鍋をとろうとして扉の前に人の気配を感じたから、あけたんだ」
「なるほどな…蒸しパンってうまいのか?」

 シズカはスカルを見て口をぽっかりと開けてしまった。
 スカルの言いようによると、蒸しパンというものを食べた事が無いようだった。
 おいしいのに…。
 そう思って作ってやる事にした。
 スカルを部屋に入れて少し待っているように言った。

 それから、数十分後…。

「ふぅ…出来たぁ」

 ふっくらとおいしく出来た蒸しパンを机の上に並べると、シズカは自慢げにスカルを見た。
 スカルは湯気の立つ蒸しパンをじっと見つめていた。

「ケーキみたいだな」
「食べてごらんよ」

 シズカに言われるがまま1つの蒸しパンを手に取り息を吹きかけて口に運んだ。
 最初は不思議そうな顔をしていたが食べているうちに幸せそうな顔をした。
 どうやら気に入ったらしい。
 
「シズカ料理うまいな」
「まあね!」

 シズカは椅子に座ると蒸しパンを1つ手にとり、ほおばった。
 すると不意にスカルが顔をしかめた。
 
「どうしたの?」
「カラ…」
「え?」
「卵のカラ…」

 舌の上にのせた卵のカラを取り出すとシズカに見せた。
 シズカはあわてて謝った。
 いつもは、こんなミスをしないのだが今日は急いでいたから入ってしまったのかもしれない。
 そんなやり取りをしながら、シズカとスカルは幸せなこの心温まる日々が続けばいいと思う。

 そしてスカルもシズカも思う、今目の前にいるこいつを守ろうと…。
 その為に強くなったのだから。

「にしてもシズカ意外と料理うまいな…」
「それさっきも言ったわ!…ってか意外って何だよ!!」

 ムキになって言うシズカを見てスカルは笑った。
 シズカがむくれて残りの蒸しパンを手にいっぱい持つ。
 スカルには、やらんと言って舌を出した。
 シズカが真剣になって料理をしているのを今でも鮮明に覚えている。
 今までに見たことのないシズカの姿。
 そんなシズカの姿を見れた事がうれしかった。
 1人で蒸しパンを食べるシズカの手から1つ蒸しパンを奪うと口にほおり込んだ。
 シズカは一瞬しまったという顔をしたがすぐに笑みにかわる。
 なぜかと思っていると口の中が異様に熱くなってきた。

「か、辛ッ!!」
「バーカ!ハズレ!!1つ食べさせようと思って作ったんだよ!」

 シズカが楽しそうに笑う。
 ずっと笑っていて…そう思いつつも辛くて涙が出てきたスカルだった。
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