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□中二病から始まる恋
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「ねぇ、財前君。“ちゅーにびょー”って何?」



エチレンは、同じクラスの財前光にいきなりこんな質問をした。


別に彼女がふざけてるとかじゃない。


本気で何なのか知らないのだ。



だが、質問された財前は、ブログ更新で大忙し。話半分にしか聞いていない。



だから答えが適当になるのも道理である。




「あー、白石部長みたいな奴のことや。」



普通だったらそこで、「あ、よくわかんないけど残念な人のことかな?」ってなるだろう。



しかし、エチレンはよく言ったら天然、悪く言ったら頭がぶっ飛んでる人間だった。




「え⁉︎白石先輩病気なの??」



こんな風に言葉を字面通りに受け止めるのは日常茶飯事であったりする。




「おん。それもかなり末期やな。回復の見込みはないんちゃうん?」






彼女は明らかに聞く相手を間違えた。



こんなテキトーな答えを言う奴に聞いたって無駄だったのだ。



六角の佐伯の男前さ並みに無駄である。





「えっ……!死んじゃうの⁉︎私ちょっと白石先輩に聞いてくる!!!」




そう言ってリレーのスターターよろしく、エチレンは教室を駆け出した。



彼女の行動力は称賛に値する……が、残念な頭のせいで問題を起こすこともしばしば。



そのことを思い出した財前は、面倒そうに、だけど少しだけ何か面白いことを期待して、エチレンを追いかけた。






「白石先輩…!!!」



一方エチレンは既に白石をとっ捕まえていた。




「おー、エチレンちゃんやん。どないしたん?」



「あの……先輩ご病気なんですか⁉︎財前君がもう末期で死んでしまいそうだって……」




そこまでは言ってない。




まあ、エチレンだから仕方が無いのかもしれないが。





「え、財前が言うたんか?アイツまた適当言いよって。」




白石がブツクサと言ってると、当の財前がやってきた。




「適当ちゃいまっせ。ソイツに中二病ってなんやと聞かれたさかい、白石部長みたいな人や、言うただけっスわ。」



「それがアカンねん!お前、エチレンちゃんがそないな冗談通じる奴ちゃうって知っとるやろ!」


白石がそう怒っても、財前は知らんぷり。


代わりにエチレンが口を開いた。



「……?ってことは白石先輩は病気じゃ無いんですか?」



「せや。財前、責任持って正しい中二病の意味教えたりぃ。」



「えっ、面倒臭さ。」





「誰のせいやと思っとるん?」




「ちっ、しゃーないっスわ。ポリ、説明するさかいこっち来ぃや。」



「財前、何先輩に舌打ちしとんねん!お前、俺の事は先輩と思っとらんやろ?」




「気のせいっスわ。」






それから、財前の中二病講座が始まった。



「せやから、中二病言うんは自分には特別な力があると勘違いする痛い奴の事やねん。」



「え、白石先輩には特別な能力があるの?しかもそれには痛みを伴うってこと?」



「ちゃうわ。見てて恥ずくなるっちゅう意味の痛いや。」



エチレンの理解力はそれはそれは乏しいモノだった。




無理もない。



彼女の国語のテストの解答はそれで小説作れるんじゃないかというくらい酷いのだから。



なんせ【セリヌンティウスを置いて行ったメロスの心情を書きなさい】という問題では、



【セリー、ごめんよ。俺、本当は戻る気無いんだ。借りてた20円は墓に埋めとくよ。アデュー☆】



なんて文の何処にも書いていないようなことを答えたのだ。



そんな彼女に中二病が何たるかを説明するのは非常に骨の折れる作業である。




彼女が理解したのは始めてから30分後のことであった。





「白石先輩。中二病が何かわかりました!」




嬉々として白石に報告くるエチレン。


それに対し、白石は可愛い妹を見るかのように目を細めた。




「おん、それは良かったわ。」


「でも大変ですね。先輩三年生なのに中二病だなんて…。」





やはり彼女は何処かズレていた。



「財前!!!何で俺が中二病の体で
話進めとんねん。」



白石が財前を責め立てると、財前はやれやれといった風に



「毒手言うとる人が中二病とちゃう筈が無いっスわ。」



と言った。



本当に生意気な後輩である。



それが彼のアイデンティティだから仕方が無いのだけど。



そんな2人の会話をクスクスと笑いな
がら聞いていたエチレンはでも、っと言葉を発した。





「どんなに中二病でも白石先輩はかっこいいですよ。」



彼女は恥じることなくサラッとそんなことを言うのだから、相当タチが悪い。



この不意打ちにはいつも女子たち褒められ慣れている白石もドキッとしてしまった。




「じ、自分、それは狡いで。いや、中二病ちゃうけど!」



顔を赤く染めて照れる白石。


しかし、その理由に気づかないエチレンは


「何が狡いんですか?」


と可愛く首を傾げた。








とても天然で周りの人を振り回すエチレン




そんな彼女に白石が恋に落ちてしまうのはもう少し先のお話である。









まとまらないからって適当に終わらせてすみません。


結局あんまラブラブしてませんでしたね。

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