MOTHER短編集

□今さら
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ガタンガタンと揺れる電車には俺達3人だけが乗っていた。
俺達は今までのことを懐かしむように話した
不思議な場所
綺麗な場所
楽しかったこと
つらかったこと
戦った敵
など、ありとあらゆる話し、笑いあった。
そうしているうちに、電車はスノーマンに着いた。
アナは名残惜しそうにホームに出る
「さよ…ううん…またね、ニンテン、ロイド、」
アナがホームで少し涙を浮かべて言う
「うん、またね」
俺もロイドも手を振りながらそう言う。
すると、アナからテレパシーが来た。
<ねえ、ニンテンきこえる?>
<うん。聞こえてるよ。>
<私、ニンテンに言いたかったことがあったの…>
<何?>
<…ううん、やっぱりいいの。だって…あなたは…>
すると、プシューとドアが閉まり、電車が発車してしまった。
悲しげな表情のアナがぽつんとホームに立っていた
一体何だったんだろうか…
「後味悪い別れ方しちまったな…」
帰ったら手紙を書こう…と思った
「ん?どうしたの??」
というロイドの問いに俺はいや、別に…と返した
アナが行ってしまうと電車はしん、と静かになった。
「静か…だね。」
ロイドの声が電車に響く
「ああ。そうだな。」
と俺。
「…もう僕達の旅も終わっちゃうね」
ロイドが言う
「ああ。」
そこで会話が終わり、また電車は静かになった。
本当は、もっとたくさん話したいのに…もっと笑い合いたいのに…
どうしても、言葉が出ない。
どこを探しても、言葉が出ないのだ。
「ねえ、ニンテン…僕さ……ニンテンに会えてよかったってそう思ってるんだ」
ロイドはうつむき、そう言う。
声が少し震えている。
「ニンテンが僕のこと友達だって言ってくれて…本当に嬉しかったんだ。
ニンテン達と会えて、少しだけ、ほんの少しだけ強くなれた気がするんだ…。」
と言うとロイドはパッと顔を上げ、俺の方を見る
幼い、女の子みたいに整った顔は、涙で濡れていた
「ハハッ、僕だけがそう思ってるかもしれないけれどね」
にっこりと微笑むロイドはいつもよりも可愛いくて…淋しそうだった
「ロイ…」
「ねえ、僕達…もう会えないのかな…昨日まで普通に一緒に居たのに…明日からは居ないんだよね…
なんだか今思えば、地球を救う……なんて、なんだか夢みたいだよ。今でも思ってるんだ…君やアナに会って一緒に旅したこと、戦ったこと…全部本当は無かったんじゃないかなって…夢……だったんじゃないかなって…。だって、僕には君達と違って何もなかったから」
「…ロイド…」
俺の言葉は、電車の到着を知らせるアナウンスによってかき消された
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