□第五章
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「え、と…紗輝?」
「はい。」
さっきまで綺麗な女性だった紗輝が今は、最初に会った時のような白い子猫に戻っている。
居心地悪そうに体をしゅんっと縮めながら、紗輝は、返事をした。
「あ、あの!も、もう出て行くので!あ、の!忘れてください」
子猫のまま器用にドアを開けて寝室の窓を開けようとしている。
「ちょっとまって!」
匡祥が声をかけた瞬間一瞬だけ動きが止まったので、匡祥は紗輝を捕まえた。
「なんで、でていっちゃうの?」
「だって!こんな妖怪みたいなの自分の家にいたら嫌でしょ…」
「紗輝は、妖怪なんかじゃないよ」
匡祥は、いまだに混乱はしているが体が勝手に動いていた。
「……うぅぅ」
紗輝は、匡祥の腕のなかで声をなんとか押さえながら泣いた。
きっと辛い思いをしたんだろう。
匡祥は、泣いている紗輝の背中を優しく撫でた。
「よしよし、大丈夫だよ」
「うっ、ふっ、あ、ありがとう」
泣きながら紗輝は、匡祥にお礼をいった。