暁のヨナ 〜優しき緑の光〜
□第八話:現れた暁の姫君
2ページ/8ページ
「そうだ、目的を忘れるとこだった。僕たちは君に会いに来たんだよ!」
「あ?俺ァもうあーゆー店には行かねエぞ。」
「違う違う。今日は僕はね、」
ジェハはハクの片手を両手で握り締めると、全開の笑顔で言った。
「君が欲しい。」
ジェハの言葉に周りはざわっとすると、2人を見ながらひそひそと話している。
蜜香もこのシーンの事は覚えていなかったのか、ジェハの言葉に顔を引きつらせた。
「俺、そーゆーシュミないんで。ゴメンナサイネ。」
「ああ~~~~っちょっちょっまっ」
早々に立ち去ろうとするハクにジェハは後ろから縋り付くと、慌てたように言葉を続ける。
「違うんだよ、違うんだよ。僕は君の事をイイ男だと思ってっ…ここじゃ何だから、人のいない所で話を…」
「人気のねェ所に行ってどーするつもりだてめェは!!」
「僕は…」
「えーい、うぜェ!!」
引きずられても尚離さず付きまとうジェハにハクは苛立つと、バキッという音を立ててジェハに拳を食らわせる。
『ジェハ!』
蜜香の声にハクはハッとする。
「(…しまった。少し、強く殴りすぎたか…)」
ハクが心配の表情を浮かべてジェハを見ると、ジェハはゆらァ…と起き上がって鼻血を垂らしながらニタリ…と嬉しそうな笑みを浮かべた。
『…………………ひっ。』
「(…わ、笑いやがった。鼻血出てんのに何て嬉しそうな目ェしてやがる。変態だ。)」
ハクが恐ろしいものでも見たような表情をしていると、ジェハが鼻血を拭いながら妖しい笑みを浮かべて言う。
「今の拳…感じたよ…」
「(やべぇ、何か言ってる。こいつは危険だ!!)」
ハクは危機を感じ取ると、ダッと走って逃げ出した。
ジェハは、走り出したハクに微笑を向ける。
「僕から逃げられると……!!」
『きやっ!?』
ジェハは何かを感じ取ったのか、急に蜜香を抱き上げると高く跳躍した。
屋根の上に降り立つと、ジェハは蜜香を下ろして焦った表情を見せる。
「ふー…急にゴメンね、ミツカちゃん。白龍がまた僕たちの近くまで来たから飛んだんだ。」
『ん…大丈夫です。それより、ハクの事はどうしますか?』
「僕は、狙ったエモノは逃がさないからね。しつこいから。口説き直すよ。」
そう言ってジェハは蜜香を再び抱き上げると一歩足を前に出す。
「!(この気配は…)」
ジェハが四龍とは違った別の気配を感じ取った時だった。
ジェハの足元の屋根が2人分の重さに耐えられなかったからか崩れてしまい、ジェハはバランスを崩す。
「わ」
『へ?』
落下する事が分かったジェハは、蜜香が極力怪我を負わないようギュッと抱きしめる。
「わ、わ、わ、わーっ!!」
『きゃーっ!!』
ガラガラガシャーン
派手な音を立てて2人は落下し、辺りに砂煙が舞った。