暁のヨナ 〜優しき緑の光〜
□第五話:強くなりたい
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「…クムジが今夜、麻薬の売買を行うだって?」
海賊船へと戻った蜜香とジェハは、先ほど聞いてきた話をギガンへと伝えた。
2人の情報に、ギガンは目を閉じ眉間に皺を寄せる。
ジェハは言葉を続けた。
「そうなんだ、船長。場所は、戒帝国付近の海上。戒帝国を相手に売買するんだから、麻薬の量も買う人間も相当だろうね…。」
ジェハの続けられた言葉に、ギガンは目を開くと持っていたキセルをジェハに向けて言葉を放つ。
「小僧どもを呼んできな。」
ジェハは頷くと、すぐに他の団員を呼びに走り出した。
蜜香はジェハの後ろ姿を見届けながら不安そうな表情を浮かべる。
ギガンは、不安そうな表情をする蜜香の頭に優しく手を乗せた。
「…お前がこの海賊船に乗って初めてのドンパチになるね…。怖い思いをさせる気は無いんだが…必ず守ってやるから、安心しな。」
『………………っ…。』
ギガンの強い言葉は蜜香を安心させるのに十分ではあったが、自分が戦いで役立つ事が出来ないと思うと何ともやり切れない気持ちで心が埋め尽くされた。
その後すぐに団員が集結すると、ギガンは鋭い目つきで話し始める。
「クムジが今夜、戒帝国付近の海上で麻薬を売買する。あの男は哀れな犠牲者を増やすつもりだ。麻薬なんかに取り憑かれちまったらそいつの人生は終わったも同然。クムジの行為は許すわけにいかないよ。」
団員たちは “そうだ” “ゆるせねぇ” と口々に言う。
ギガンは、右手を机につくと力強く言った。
「クムジの悪行を阻止する。哀れな犠牲者どもが来る前に終わらせるよ。ついてきな、小僧ども。」
おおおぉぉぉぉっ!!
ギガンの熱い言葉に、団員たちはやる気の雄叫びを上げた。
蜜香は、ギガンの姿に見惚れ、小さく呟く。
『…これが…あのギガン船長…』
「カッコイイでしょ?うちの船長は。」
ジェハが後ろから蜜香の肩に手を回しながら言う。
蜜香は、ジェハに気持ちを昂らせたような表情を見せると大きく頷いた。
蜜香のその表情に、内心ドキッとしつつもジェハは満足そうに微笑む。
「…さぁ、今夜は大仕事だ。君は僕が必ず守るから安心して。」
ジェハはそう言って蜜香の頬にキスをする。
顔を真っ赤にして慌てる蜜香の姿を予想していたジェハだったが、蜜香の表情は曇っていた。
「…ミツカちゃん?どうしたの?」
ジェハの心配する声に蜜香は我に返ると首を何度か横に振る。
『何でも、無いです。怪我をしないで……ご武運を。』
「…………うん、ありがとう。」
蜜香の答えにジェハは釈然としなかったが、今は目の前の戦いに集中することにした。