暁のヨナ 〜優しき緑の光〜

□第四話:素直=気付き、認めること
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ジェハの足元スレスレに暗器が3本、音を立てて突き刺さった。

ジェハと蜜香は驚いて暗器が飛んで来た方を同時に見る。

そこに立っていたのは、怒りの表情を讃えた船長・ギガンの姿だった。


「この鼻タレ小僧。私の可愛い娘に何してるんだい。さっさと離れな。」


尚も暗器を両手に構えるギガンにジェハは苦笑すると、両手を上に上げて蜜香から離れた。

蜜香は、ジェハが離れると体を反転させギガンの後ろへと隠れる。

蜜香のその行動に、ジェハは更に苦笑を漏らした。

ギガンは、後ろに隠れた蜜香の肩を抱くと優しげな声音で語りかける。


「ミツカ、あのバカに変な事されそうになったら思い切り叫びな。私が直ぐに駆け付けてやるから。バカは放っといて、私と一緒に風呂へ行くよ。」


蜜香が小さく頷くのを確認すると、ギガンは “先に行ってな” と蜜香を風呂場へ促す。

蜜香の姿が見えなくなると、ギガンはジェハの方を振り返って言った。


「…強引に事を進めようなんざお前らしくないね。お前は、女性を優しく包む主義じゃ無かったかい?」


ギガンの問いに、ジェハは壁に背中を預け前髪をかき上げながら返事を返す。


「…本当、僕らしくないですよ。 あの子の事になると僕はどうしようもなく余裕が無くなる。あの子が近くに居ると抱きしめてキスしたくなるんだ。」


切なげに眉を顰めるジェハを、ギガンは物珍しげに見た後クスリと微笑を漏らしジェハに挑発的な眼差しを向けて言う。


「……ジェハ…お前、ミツカの事が好きかい?」


ジェハは暫く間を空けると、ヘラッと笑って答えた。


「もちろん、好きですよ。」


「ふざけんじゃないよ。お前のいつも通りの好きを聞いてるんじゃない。私は、1人の女としてミツカが好きかどうか聞いてるんだ。」


急に鋭みを増したギガンの眼差しに、ジェハは一瞬怖気付く。

ギガンは瞳の鋭さをそのままに言葉を続けた。


「…お前、表情や言葉や行動は素直に表現してるクセに、気持ちを認めてないのかい?気持ちを認めてないクセに迫っても、ミツカは靡かないよ。」


「………分かってますよ、ギガン船長。確かに僕は、ミツカちゃんの事を1人の女性として愛してます。だけど、ミツカちゃんは何故か僕に対してワザと壁を作って避けるんだ。」


ジェハの言葉に、ギガンは目を細める。

ジェハは溜め息を吐くと、天井を仰ぎ見た。
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