暁のヨナ 〜優しき緑の光〜
□第十一話:命懸けの闘い
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次の日
ヨナとユンは綺麗に化粧をし、町娘の服に着替えた。
「ヨナちゃんかわいい♡一発合格!」
ジェハがニコッとしながら親指を立てて言うと、ヨナは気合を入れて言う。
「がんばるわ!」
一方では、額に傷を持った団員が爆笑しながらユンを褒める。
「いいぞ、ボウズ!そのままクムジの愛人になってこい!」
「当然。正妻にだって勝つよ。」
ユンが目をキラーンとさせ、自信満々に言った。
ジェハはキョロキョロとすると、ヨナとユンに尋ねる。
「……ところで。ミツカちゃんは?」
「あ。姉上ならもうすぐ…」
『ごめんなさい!準備に手間取っちゃって!』
そう言ってパタパタと走って来たのは、セミロングの髪を上に結い上げ、簪をさし、綺麗に化粧を施した蜜香だった。
皆は蜜香のその美しい姿に、言葉も出さずに見惚れる。
誰も何も言わない事に蜜香は不安になると、オロオロしながら言った。
『あっ…あれ?やっぱり似合わないですか?ヨナちゃんやユン君みたいに綺麗な顔をしてるわけじゃないから、作戦に参加するの無理があるかな?とは思ってたけど…』
皆はハッと我に返ると、口々に蜜香を褒め称える。
「そんな事ないわ!姉上すっごく綺麗!思わず見惚れちゃったもの!」
「そうだよミツカ!よく似合ってる。俺と並んでも引けを取らないし、この作戦上手くいくよ!」
「いやぁ〜、見違えちまったなぁ、ミツカちゃん!お前ェさんは元々べっぴんさんだが、化粧するだけで格段に美人になっちまったよ。」
ヨナやユン達の言葉に蜜香はホッとすると笑みを浮かべた。
ヨナが隣でボーッと突っ立っているジェハの背中を押すと言う。
「ほら!ジェハも姉上に何か言って!」
ジェハは、ヨナに背中を押されてようやく我に返ると、顔を赤くして戸惑うように言った。
「いや…その、余りに美人過ぎて戸惑っちゃったよ…。よく似合ってる…ミツカちゃん。凄く綺麗だ。クムジや役人共に見せるのがもったいない。」
蜜香はジェハの戸惑いぶりにクスクス笑う。
『ありがとうございます、ジェハ。ここは任せますね。』
「…あぁ。気を付けて…」
ジェハは顔に心配の色を貼り付けながら蜜香をギュッと抱きしめる。
蜜香はジェハの背に腕を回すと目を伏せた。
『(必ず、成功させて終わらせるよ…ジェハ。貴方の、阿波での最後の闘い…だから。貴方と一緒にいられるのもあと少し…。)』
蜜香はジェハから離れ、儚げな笑みを見せると呟く。
『行って来ます。』
そう言って離れていく蜜香にジェハは目を見開いた。
蜜香のその儚げな笑みにあの時の不安が蘇ってきたのだ。
「……必ず、僕の元へ帰って来てよ……ミツカちゃん…」
ジェハの呟きは、波風に攫われ消えて行った。