暁のヨナ 〜優しき緑の光〜
□第八話:現れた暁の姫君
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次の日
蜜香とジェハは宿を出ると、目的の人物を探す為歩いていた。
ジェハは歩きながら唸って言う。
「うーん、彼を探すのは良いけど名前が分からないんだよねー。」
『…………ハク。』
「…えっ?」
蜜香がポツリと呟いた名前に、ジェハは目を見開く。
蜜香はジェハを見て言葉を続けた。
『…黒髪の男の子ですよね?ここに張ってある張り紙の子。』
蜜香が看板を指差す。
ジェハも看板に張ってある人相書きの張り紙を見ると、盛大に吹き出した。
「あーっはっはっはっ!美しくないっ!しかしわかるっ!!言いたい事はわかるっ!!彼の名前、ハクって言うのかい?あぁ、人物の名前は覚えてるって言ってたね。」
蜜香が頷くと、ジェハは再度看板に目を向け嬉しそうな顔をして言う。
「まぁ、これで彼がおたずね者になったんなら誘いやすい。」
『あ。』
ジェハの背後に背の高い黒髪の青年が近寄ると、ボソリと言った。
「誰を誘いやすいって?」
「んー、ハクっていう青年なんだけど…って、わお!!!」
ジェハが後ろを振り返りながら言うと目の前に探していた目的の人物がいた為、驚きの声を上げる。
ハクは眉間に皺を寄せると問うた。
「てめぇ、何で俺の名前知ってんだ?名乗った覚えは無いが。」
「えっ?それは…」
『私が町で貴方を見かけた時、お仲間の方が貴方をそう呼ぶのをたまたま聞いたの。』
ジェハの言葉を遮るように、蜜香がジェハの前に出て言った。
ハクは、蜜香の真意を見抜くかのようにジッと見つめる。
表情を少しも変えない蜜香に溜め息を吐くと、ハクは納得したのかジェハに話題を振る。
「つぅか、あんたは笑ってる場合かよ。あんたの顔も人相書きに出てんじゃねーか。」
「僕?」
ジェハはもう一度看板に振り返ると、ハクの人相書きの横に張ってあるもう一枚の紙を見る。
「はっはっは。これも愉快な顔だね。」
「あんたの顔だ。似てるぞ。」
『うん、似てる。』
一瞬の間。
「よく聞こえなかったな。」
「あんたの顔だ。似てるぞ。」
『うん、似てる。』
ジェハとハクは看板からそれぞれ人相書きを剥がすと、焚き火で燃やし尽くして言う。
「役人(ヤツ)ら、目ェ腐ってやがるねエ。」
「全くだ。」
2人のやり取りに、蜜香は必死に笑いを堪えながらジェハに声をかけた。
『…ジェハ、目的を果たしましょう。』