暁のヨナ 〜優しき緑の光〜
□第五話:強くなりたい
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蜜香が異世であるこの世界へ現れ、ギガンの海賊船に乗せてもらってひと月が経った。
ギガンにより心を取り戻せた蜜香は本来の性格である明るさを取り戻し、ジェハたちに様々な表情を見せている。
蜜香の明るさに船内は華やかになり、団員のやる気も大幅に上昇した。
ジェハも蜜香の本来の性格を見ることが出来た事に、喜びを感じている。
蜜香は、ジェハへの想いをしっかりと認め、壁を作る事は無くなったがジェハに想いを伝える事は出来ないでいた。
実際に想いを伝えようと思うと、恐怖心にかられ何も言えなくなる。
蜜香は想いを伝える事が中々出来ない事に悔さはあるが、ジェハとの今の関係を心地よく感じていた。
「ミツカちゃん、今から町に偵察に行くんだけど、一緒に行かない?」
ジェハの誘いに蜜香は笑顔を浮かべると頷いた。
『行きます!ついでに、食料の買い出しにも行きたいです。』
「仰せのままに、お姫様。」
ジェハは、財布を持った蜜香を横抱きにすると、阿波の町へと向かって飛び立った。
「落ちないように僕にしっかりつかまるんだよ、ミツカちゃん!」
あくまでも自分が好意を抱いている女性な為、落とす事など決してありはしないが、もう少し近づきたいという欲望にかられたジェハは蜜香に言った。
蜜香は頷くと、ジェハの首にしっかりと腕を回しピッタリとくっつく。
素直に身を委ねる蜜香にジェハの顔は終始、緩みっぱなしだった。
阿波の町へと到着すると、ジェハは遠くで役人が何やらコソコソと話しをしている姿を目撃する。
「………あの役人たち、コソコソと怪しいね。ちょっと上から話を盗み聞きしようか。ミツカちゃん、つかまって。」
ジェハは再び蜜香を横抱きにすると屋根の上に上がり、役人たちに気付かれないよう注意しながら話を盗み聞く。
「…おい。例のブツはクムジ様に言われた数だけ用意出来たか?」
「…あぁ、もちろんだ。今日の夜、戒帝国付近の海上で売買される。」
「フフフ…クムジ様のお喜びになる顔が楽しみだ。」
ジェハは役人たちの話に眉間に皺を寄せると小さく呟く。
「…どうやら、麻薬の売買の話みたいだね。取り引きは今夜、船内で行われる。これは良い情報を手に入れた。さっそくギガン船長に報告しに行こう、ミツカちゃん。」
ジェハは素早く蜜香を横抱きにすると海賊船へと急いだ。